[2020.6.1]
「図鑑っぽくないデザインに惹かれます」
「説明文も”鳥愛”にあふれていて、”わかる、そこ、かわいい!”と鳥好きさんと会話してるかのよう」
「わが家の庭木に飛んでくる野鳥がわかりました」
「愛読書になること確実です」
版元の亜璃西社に届いた読書カードには、どれもそのまま店頭のポップになりそうな賛辞がいっぱい!
2019年8月に刊行された『さっぽろ野鳥観察手帖』がいま、じわじわと売れ続けている。英字タイトルの「SAPPORO BIRD GUIDE」が目立つスタイリッシュな表紙や、いきいきとした野鳥たちの姿を枠で囲むことなくのびのびと見せるレイアウトは、図鑑というよりもまるで写真集のよう。
その斬新さと、野鳥を身近に感じる内容でバードウォッチング初心者たちに人気を集めている。
ネイチャー図鑑に強い亜璃西社からは『北海道野鳥図鑑』も出ているが、本書はあえて「さっぽろ」と地域を限定したにもかかわらず、その狭さがかえって広く深く読者の心をとらえたようだ。
著者と書店、購入者の皆さんにお話をうかがった。
著者の河井さんは最後にご登場いただくとして、先に地元さっぽろの購入者である南区の神田武宏さんに感想をうかがった。
書店ナビ:この本を手に取ろうと思ったきっかけは?
神田:うちは自宅の裏手が山なので庭のバードテーブルによく野鳥が飛んで来ます。そのコたちの名前を知りたくて亜璃西社さんの『北海道野鳥図鑑』を買おうかと思っていたところに『さっぽろ野鳥観察手帖』が出版されて、じゃあこっちかと。”さっぽろ”に特化していたところも購入の決め手になりました。
書店ナビ:中をご覧になっていかがでしたか?
神田:写真が見やすいうえに各鳥の特徴や雌雄の違いなどがわかりやすく解説されていて、いいですね。
見慣れない野鳥が庭に来るとすぐに『さっぽろ野鳥観察手帖』で確認する癖がつきました。
南区以外の「観察適地」からも鳥が来ないものかと楽しみにしています。
先日、初めて見る鳥が窓に激突して気を失っていたので本で名前を確認したところ、バードウォッチングが趣味の知人の話では「そう簡単には見ることができない」キクイタダキという鳥だったようです。
神田さんが撮ったキクイタダキ。「すぐに気がついてジッとしているところにヒマワリの種を置いてみたけど、お気に召さなかった様子。じきに飛び立っていきました」
こちらは『さっぽろ野鳥観察手帖』のキクイタダキのページ。「正面顔のかわいらしさは無敵」など学術的な図鑑らしくない解説に「キュンとくる」読者が続出!
続いて「札幌以外のところでも十分に役立つ本です」と、以前『さっぽろ野鳥観察手帖』を紹介してくれた浦河町の自宅本屋「森の六畳書房」の櫻井けいさんのお話。
書店ナビ:この本を仕入れようと思ったきっかけは?
櫻井:注文を受けてはじめて知りました。わが家は夫婦そろって「浦河探鳥クラブ」の会員です。好きなだけで鳥の種類はなかなか覚えられないのですが、『さっぽろ野鳥観察手帖』は開いてすぐに初心者にもわかりやすくていい本だと思いました。
書店ナビ:これまでに10冊販売されたとうかがいました。
櫻井:「浦河探鳥クラブ」の会長さんは毎年秋に浦河高校で一般の方向けに野鳥観察講座を行っています。この会長さんに本書をお見せしたところ、「いいわね」とすぐに1冊お買い上げいただき、講座でも参加者の方々に宣伝してくれてそれで10冊ほど、勢いよく出ていきました。
説明が詳しいし、写真がとてもきれい。アイヌ語名が書かれているのも北海道の本らしくて気に入っています。
人気の要因である野鳥の写真は北海道のフォトグラファー諸橋淳さん、佐藤義則さんが撮影した(諸橋さんはイラストも担当)。
『北海道野鳥図鑑』でも河井さんと一緒に仕事をするなど20年30年来のつきあいの仲間たちが選りすぐりのショットを提供してくれたという。
それでは著者の河井大輔さんにご登場いただこう。
書店ナビ:あらためて河井さん、『さっぽろ野鳥観察手帖』がすごい人気ですね。亜璃西社の編集者、井上哲さんによると「そろそろ二刷目の用意も始めたい」とのこと。
そもそもの企画はどちらから出たお話ですか?
河井:『北海道野鳥図鑑』で長いおつきあいの亜璃西社さんから「次は北海道の鳥ベスト100みたいな本が出せませんか?」というお話がありまして。
北海道の鳥と言うとみなさん、すぐに丹頂鶴やシマフクロウをイメージすると思うんですが、でも実際に見たことがある人や観察できる場所まで行ける人は限られていますよね。むしろ「縁がない」人のほうが多いはず。
それよりもっと身近なところで、もっと気軽に野鳥観察を楽しんでもらう本を作りたい。そう僕から逆提案して亜璃西社さんがOKを出してくれました。
書店ナビ:今までにない野鳥ガイドをつくる、そのコンセプトは鳥の紹介順やラインナップにも反映されていますか?
河井:ええ、従来であれば学会の目録に則った順で掲載するのが慣例ですが、本書のトップバッターはやはり私たちにとって一番身近な鳥、「スズメ」で始めています。
大きくは「緑地の鳥」「水辺の鳥」の二部構成で、おなじみのカラスやハトも登場します。
書店ナビ:表紙も本文デザインも解説文も《THE野鳥図鑑》ではない、やわらかさが斬新でした。
コムクドリが「顔はコリラックマみたいでかわいい」とか、コチドリの「頭は小坊主風」、ヒガラの「うしろあたまにハゲっぽいライン」といったフレーズが吹き出しつつも覚えやすいですね。
河井:専門用語は使わずに、僕がネイチャーガイドの現場で普段から使っているような日常的な表現を取り入れています。
ゴリゴリの専門家がご覧になると「なんだこれは!」と思われちゃうかもしれませんが、この本はひたすら初心者にやさしく、「いつも見かけるあのコの名前はなんだろう?」という素朴な疑問に答えるような本にしたかった。
その意味でも女性のセンスを取り入れたくてデザイナーの佐藤史恵さんにお願いしたところ、甘すぎず、心地よい中性的なデザインに仕上げてくれました。佐藤さんにお願いして本当によかったです。
全編を通して、ほぼ思い通りに作らせてくださった亜璃西社さんにも、ただただ感謝の一言です。
読者のみなさんにも、ご自宅や散歩の途中など身近な場所で野鳥観察を楽しんでもらえたらうれしいです!
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