手に持っているのは山崎さんがデザインした「Sapporo・チャイルド・ライツ プロジェクト」のオリジナルブックカバー。取材は野幌駅前にある「街の灯台 喫茶ファロ」にご協力いただいた。
[2020.11.30]
書店ナビ:札幌生まれの山崎啓太郎さんが、札幌の東隣にある江別市の住民になったのは2011年のことでした。はじめは札幌の厚別区にあるご実家の近くで家を探されたそうですね。
山崎:なかなか条件にあう物件が見つからなくて、たまたまハウスメーカーさんが紹介してくれたのが江別だったんです。
厚別区は札幌の東端で、文京台は江別の西の端。ぼくんち、30メートル行くと札幌なんです(笑)。
で、実際、江別で暮らしてみると、とてもいいところなんですが近所に子どもが少ない。うちの子が学校から帰ってきても一緒に遊ぶ友達がいないんですね。
そこからまちに子どもを増やすためにも、どうしたら江別の価値が上がるのかなと気になり始めて、いろんなところで友達を作ってまちづくりに関わるようになりました。
書店ナビ:「えべつセカンドプロジェクト」(通称「セカプロ」)のサイトを見ると、いきいきとした江別の情報が載っていて、とても楽しそうですね。
なかでも毎週水曜に配信している音声配信プログラムBrickRadioはゲストが多彩。
今回のフルコースで紹介される著者3人も登場しています
えべつセカンドプロジェクト | えべつセカンドプロジェクトは大好きな江別をぼくたちになりに表現するプロジェクトです
山崎:コロナ禍の中でもなにかできることはないかなと考えて、今年の春から配信を始めました。まちづくりのファーストは市役所でしょうが、行政ではできないこともある。そこをセカンドのぼくらがやれたら、という気持ちです。
書店ナビ:今回の江別本フルコースも、江別に関心を持ってもらえるきっかけになりますね。それでは5冊の解説をお願いします!
「街の灯台 喫茶ファロ」では本に手紙を添えて交換する「一冊文庫」を展開中。奈良県から移住した大浦夫妻がゲストのBrickRadio はこちらから!
書店ナビ:Twitterから生まれたエッセイストや漫画家は多いですが、その1人が北海道にいらっしゃるというのもボーダレスなSNSの世界らしいですね。著者のものすごい愛さんは17年間江別に住み、現在は札幌在住だとか。山崎さんは彼女のアカウントをフォローしていたんですか?
山崎:江別蔦屋書店の副館長、望月起一さんから「こんなすごい人がいるんだよ」と教えてもらって初めてこの本を手に取りました。
セカプロのBrickRadio20回目のゲストで出ていただいています。配信を聞いていただければわかりますが、ご本人も日頃のツイートどおりものすごい愛にあふれていて最高です。
江別出身【ものすごい愛】ツイッターフォロワー10万人のエッセイストで薬剤師が登場!vol.20 Brick Radio配信 | EBETSU SECOND PROJECT|えべつセカンドプロジェクト
書店ナビ:夫や親友を含め、自分が愛する人は何がなんでも守る!というスタンスが共感を呼んでいますよね。
BrickRadioでもパーソナリティーの龍田昌樹さんの人生相談に「人と比べるからじゃないですか?」と答えているのが印象的でした。
山崎さんもエッセイを読んで、家族観とか変わりましたか?
山崎:家族や仲間にやさしくしなきゃなって思いました。コロナ禍になって家で過ごす時間も増えましたし、自分でできることはやるように。
山崎:個人の方が江別や野幌の情報を発信している「えべナビ!」というブログで江別を舞台にした本の紹介をされていて、そこで知りました。
書店ナビ:中学生たちが北海道に集団移住し、いわば独立国のようなものをつくるという設定が大胆ですが、教育問題やIT革命、高齢化社会など、2000年に発刊されたとは思えないほど現代日本を先取りした内容に驚かされます。
山崎:電気自動車や風力発電、独自の通貨まで出てきますから、まさに今の話ですよね。ぼくも子どもがいるんで、どうしてもこの本の主人公、中学生たちを取材する記者の視点で読んじゃいました。
作者はきっと、事前に江別に取材に来ているはず。野幌が出てくるのはわかっていたので「まだか、まだか」という思いで読み進めました。
「野幌」の文字が何度も登場する中味をチラ見せ!
書店ナビ:この本には「『希望の国のエクソダス』取材ノート」というサブテキストがあり、本書の情報源となった経済学者や為替ディーラー、インターネット専門家、現役中学生、チーマーたち13人に聞いたインタビューが読めるそうです。
書店ナビ:江別在住の作家といえば、やはり《魚料理》《肉料理》のこのお二人ですね。先にご紹介しましょう、小路幸也先生です。
BrickRadio30回目に出演されたときはすごくぶっちゃけた話が多くて、おもしろかったです。
山崎:ぼくらもあそこまでいろいろ話してくださるとは思わなくて。小路先生、すごくかっこよかったです。
この本は実は、ぼくがよく行くバーのマスターが昔働いていた喫茶店が舞台なんです。小路先生もそこで働いていて、登場人物のモデルであろうお客たちも実際に来ていたと聞きました。
マスターが当時の話をしてくれるのがすごくおもしろくて、この本も夢中になって読めました。
BrickRadioに小路先生をお呼びして、マスターが喜んでくれたのもうれしかったです。
私物の本は小路先生のサイン入り。
書店ナビ:《肉料理》の著者はやはり、この方で納得です。直木賞受賞作である『ホテルローヤル』がただいま全国の映画館で絶賛公開中!釧路出身・江別在住の作家、桜木紫乃さんです。
BrickRadioの10回目に登場されたときはご近所トークが炸裂で、気さくな先生のお人柄が伝わってきました。
それにしても、住んでいるまちのメディアだからといって皆さんがそう簡単に出演してくれるとはかぎらないはず。小路先生や桜木先生、よく出てくださいましたね。
江別在住直木賞作家 桜木紫乃さんが語る江別愛!!vol.10 Brick Radio 配信情報[北海道江別市] | EBETSU SECOND PROJECT|えべつセカンドプロジェクト
山崎:桜木先生の場合は、『砂上』がパーソナリティーの龍田くんが経営するビストロ「EDONA」が舞台のお話なので、彼のおかげで実現できました。
収録後ゲストの方と一緒に飲む時間もすごく楽しくて、そんな時には趣味のDJをしたりします。
書店ナビ:BrickRadioで桜木先生が「江別はかゆいところに手が届くまち。こんなに長く同じ家に住んだことはないです」とおっしゃっていました。
そして「(同じまちに)十年暮らしたら気候が書ける」とも。
山崎:『砂上』を読んでいても、このまちのことが詳細に描かれているので、「ああ、知ってるパチンコ屋だ」とか「ここで二人はあいびきしたんだな」と頭の中で完全に映像が流れていました。
DJをしていると曲をつまみぐいするクセがついて、本もついついページを飛ばしがちなんですが、『砂上』はしっかり読み切りました。
山崎:札幌のバーのマスターに勧められて読み、江別が候補地の一つだったと知ったときはバク上がりでした。地代や気候とかのいくつもの条件を検討して余市に決まったようですが、江別に来ていたらなあ~。
江別にはノースアイランドビールというおいしいクラフトビールがあって、ぼくはラベルのデザインもやらせてもらってます。
クラフトビールに、もしウイスキー工場もあったなら、観光地・江別という新しい魅力ができていたはず。そのとき工場はあのへんかなとか、こういうイベントもできたかなとつい妄想しちゃいます。
書店ナビ:札幌から車で15分の江別、山崎さんにとってどういうまちですか?
山崎:「札幌になくて江別にあるものは?」と聞かれると、「いや、札幌のほうがものもお楽しみもいっぱいありますよ」と思うんです。だけどそんなにいっぱいあっても、生きていくうえで必要かな、と。
身のまわりの用事が足せて、仲間がいて、近所に普段着で出かけられる。その”ちょうどよさ”が江別の魅力なのかもしれません。
個人的にはあのまま札幌に住み続けたら、きっとまちづくりとかには関わらず、ただのデザイナーだったと思います。
それがこうして「江別のことなら」と声をかけてもらえるようになったのは、ものすごくありがたいこと。
これからも江別の価値をあげていけるようなことをやっていきたいです。あ、お金をかけずに、できる範囲でなんですけど。
書店ナビ:お話をうかがって、山崎さんが江別を見つけ、江別も山崎さんを見つけてくれた感じがしました。読んだ後、絶対行きたくなる江別本フルコース、ごちそうさまでした!
1974年北海道札幌市生まれ。札幌学院大学卒業後、ホームページや広告・販促物のデザインのキャリアを積む。現在は株式会社プリオンデ代表取締役。NoMaps2020のロゴやビジュアルを手がける。2011年に江別に居を構え、2016年から始めた「江別セカンドプロジェクト」で仲間と江別を盛り上げている。
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