北海道書店ナビ 第55回 六番堂書店
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心を揺さぶる一冊との出会いは人生の宝物。書店独自のこだわりやオススメ本を参考に、さあ、書店巡りの旅に出かけてみませんか?
新琴似六番通りの六番堂書店は店主の秋山忠継さんが昭和49(1974)年に開業。当時30歳だった秋山さんもじきに古稀を迎える。大型書店に対抗するため選んだ道は、「本のない本屋」になること? その真意をうかがった。【2011.11.28】
[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=pzPzKBiU0hc]
- 六番堂書店 秋山忠継 店主
外観の第一印象は「本当にここが本屋さん?」。落ちついた木目調のサイディングに三角屋根のファサード、正面の入口左右を常緑樹が守る隠れ家カフェのような建物、それが六番堂書店だ。
この建物にはモデルがある。新琴似屯田兵中隊本部。明治20年に九州から入植してきた屯田兵の一団が当地の開墾を進め、新琴似の発展に努めてきた。その拠点が中隊本部であり、現在は創建時の姿に復元され、札幌市の有形文化財に指定されている。
六番堂書店の店主・秋山さんは6年前に自宅兼店舗を改装。「新琴似屯田兵中隊本部は新琴似で一番古い建物。私たちも、まちの歩みを静かに見守り続けたいという思いでモデルにさせてもらいました」と、誇らしげに明かしてくれた。
六番堂書店の「書店らしからぬ」ところは外観だけにとどまらない。
16坪の店に入るとまず目に飛び込んでくるのは、雑誌の面陳。失礼ながら小さな店にたくさん本を置きたい場合は、書棚に詰めこむほうが多く置けるというものだが…「いえ、この店はこれでいいんです。うちは<本のない本屋>だから」と秋山さんは微笑んだ。
実はこの六番堂書店、高齢者を対象に「一冊からでも届ける」本の宅配専門店。店に並ぶ本はそのままお客様の注文本であり、秋山さん本人が独自に開いた4本の宅配ルートを日替りで回っている。宅配エリアは北区を中心に東西南北どこへでも。配達先は9割が個人宅であり、週刊誌が圧倒的に多い。
「週刊誌は一冊300円程度。この300円を安いと見て一冊からの宅配を敬遠する店が多いなか、うちは一冊の予約が10年間続くお客様とのつながりを大切にしています。ですから、店頭も商品の在庫置き場を兼ねた展示場みたいなものなんです」。店頭に集客のための本を置かず、宅配一本でやっていく。それが<本のない本屋>の正体だったのだ。
店舗に足を運びづらい高齢者、しかも一人暮らしのお宅では毎週秋山さんの訪問を楽しみにしている顧客も少なくないという。「“一件一件回るなんてよくやるね”と驚かれるかもしれませんが、私はこういうやり方しかできない性分。40年間築いてきたお客様とのつながりは、かけがえのない私の財産です」
取材中、しきりに「他の書店さんはどうですか?」と聞いてきた秋山さん。個人書店受難の時代に宅配に活路を見出したとはいえ、書店経営者として同業者の動向はおおいに気になるところなのだろう。「本ではなく、私自身を売ってるようなものなのかな」。そこにいるのは、人と人。「古いけれど、新しいやり方」と語る秋山さんの言葉が、深く響く。
Store picture
- 新琴似屯田兵中隊本部を模した外観
- 三角屋根のファサードが印象的
- 16坪の店頭は在庫置き場も兼ねている
- 事務用品や文房具も販売
- 水彩画家たかたのりこさんの作品を常設展示
Basic information
【 名 称 】六番堂書店
【 住 所 】札幌市北区新琴似11条10丁目6−15
【 電 話 番 号】011-762-5533
【 営 業 時 間】朝 10:00〜夜 19:00(土曜日は13:00まで)
【 定 休 日 】日曜・祝日