北村政則料理長と女学生スタイルの制服がかわいいスタッフさん。手にしているのは 越治オリジナルの本型ボトルキープ。
[2020.6.22]
6月に入り、北海道も少しずつ経済活動が動き始めてきた。対面取材を控えていた北海道書店ナビも今後コロナ対策を踏まえた取材を少しずつ再開する方向だ。
今回は今年4月頭に取材を終えていた小樽の文学カフェ「魁陽亭 越治」をご紹介。人気を避けて静かに過ごしたいというときに格好の空間だ。
場所は小樽市花園1丁目の寿司屋通り。ローソンのあるフタミビル2階。
レトロな書体の「越治」が目印。
小樽市住吉町にある高級料亭、魁陽亭(開陽亭)といえば、明治・大正時代の面影を残す歴史的な木造建築物として知られていた。
老朽化等を理由に2015年に営業を休止したが、2017年に東京の不動産会社が文化再生事業として取得。今後はホテルが新設される予定だという。
他方、現在「魁陽亭 越治」がある場所はかつて寿司屋が入っており、その閉店後はビルオーナーが魁陽亭関係者とともに次の展開を探っていた。
すると幸運にも小樽商科大学の研究者の指摘により、同ビルには明治期に「越治」名で1階に洋品店、2階にカフェがあったことが判明!
しかもその証拠となる写真にはあのニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝氏の妻リタさんと娘のリマさんが写っているという幾重にもメモリアルな史料に後押しされ、2020年2月8日、新生「魁陽亭 越治」がオープンする運びになったという。
店入口にはリタ母娘が写っているオリジナル写真の拡大版が飾られている(竹鶴孝太郎氏より提供)。
小樽出身の文豪・伊藤整の「若い詩人の肖像」にはこんな一説もある。
『私がそういう相談(文芸誌の発行)をしに河原直一郎に越路で逢っていた頃、小林多喜二がしばしばこの越路の二階の喫茶店に来ていた。その時彼はたいてい三四人の仲間らしい男とそこで逢っていたが、それがどういう仲間であるか、私には見当つかなかった』(広報おたる平成19年10月号掲載)
「越路」は「越治」の表記違いと思われるが、これが同じ店をさしていることに誰も異論はないだろう。
こうした小樽ゆかりの作家たちが通い詰めたという文学的な背景から、令和の「魁陽亭 越治」も昼は文学カフェ、夜は文豪バーで展開。 札幌出身の料理長、北村政則さんが腕を振るう魁陽亭??Curryやパスタ、夜はシェフお任せ炭火焼コースも提供中だ。
ランチは11~17時まで。カレーやチキンカツサンドのテイクアウトもある。
寄贈本を含めた北海道ゆかりの本がずらり。読書会等を開いてみても面白そうな空間だ。
書棚の一部は扉になっており、奥の個室に出入りできる。
レトロモダンな個室スペース。お祝いごとや大事な記念日に使いたい。
棚にささっている分厚い本を開いてみると実はボトルキープという仕掛け。
そしてなんといっても注目は、店奥にある2部屋「三日月の間」「小夜の間」を7~9月の夏場のみ1日限定1組(2~4名)が利用できる「書斎ホステル」の存在だ。
文学の歴史があるまちだけに許される空間で過ごす自分だけの時間を、より特別なものにできる稀少なチャンス。ここだからこそ読みたい本を持参してみるのもいいだろう。
どちらも4・5畳の空間。1泊2食付1名様13,500円~。
明治時代に作られた「小樽実業名家案内双六」。指さしているところに「「魁陽亭」が。
地元の方々も温かいまなざしを注ぐ文学カフェ&文豪バー&書斎ホステル「魁陽亭 越治」。
誰もが大手をふって旅行を楽しめるときが来たときはぜひ、スペシャルな小樽トリップの選択肢のひとつに加えてほしい。
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