札幌市南区にある札幌新陽高校。学校法人札幌慈恵学園が運営する私立で、全日制普通科。
[2017.7.24]
「本気」に取り組む荒井校長のフルコースがきっかけに
本を料理に見立てて、ワンテーマ5冊を選書する「本のフルコース」を始めて3年目の今年、わたしたち北海道書店ナビはフルコース初の[高校生を対象としたワークショップ]に取り組みました。
きっかけを作ってくれたのは、札幌新陽高校の荒井優(あらい・ゆたか)校長です。荒井校長は、リクルート、ソフトバンク社長室、そして東日本大震災後、公益財団法人東日本大震災復興支援財団の専務理事を経て「地域の元気は高校生がつくる」ことを学び、2016年2月、祖父が創立した札幌慈恵学園運営の札幌新陽高校に着任。
以降、「本気で挑戦する人の母校になる」という力強いスローガンを掲げ、次々と新たな試みに挑んでいます。
校内のIT環境の改善に始まり、保護者や地域も巻き込んだ「本気・夢ゼミ」を実施。
北海道初の女子硬式野球部も創設し、さらに今年は1年生全員がYOSAKOIソーラン祭りに出場するなど、生徒の「本気」を後押しする取り組みが進んでいます。
その荒井校長をリサイクル業を営む株式会社ルーツ・オブ・ジャパンの湊源道さんからご紹介いただき、2016年10月に荒井校長による「本気で読書したくなる本」フルコースが完成。なぜ読書が大切なのかを説く素敵な5冊を教えていただいたこのとき、書店ナビは思いました。
《荒井校長のもとで、ぐんぐん本気を伸ばしつつある生徒たちなら、フルコースづくりにも挑戦してくれるかもしれない》
そう信じて荒井校長に今年の春、お願いメールを送ったところ、まさかの「やりましょう」という一言でご快諾!
そこから1学年副主任・国語科主任の髙橋励起(たかはし・こうき)先生にバトンが渡され、フルコース初のワークショップ高校生編が実現したのです。
お願いメールから実現までわずか3カ月、このスピーディさも新陽高校の「本気」を構成する大事な要素になっていることがよくわかりました。
お手本に「レゲエLOVE」フルコース、大事なのは質問力
国語の髙橋先生との事前打ち合わせでは、通常ワンテーマ5冊のフルコースを高校生バージョンは3冊にすること、髙橋先生が受け持つ1年1組の24人に挑戦してもらうことに決定。
取材する・取材される両方の体験を通して「互いに知り合う」というフルコースの本当の企画意図を生徒たちに理解してもらえるように準備を進めていきました。
ヒマラヤ登山中の髙橋先生をモデルにしたオープンスクール告知ポスター。生徒の本気を促すにはまず教員が本気の場面を見せようという新しさを感じる。
ワークショップは全4回。6月20日の1回目は、フルコースの企画説明からスタート。
「企画はなんとなくわかったけど、取材なんてやったことがないからどうしたらいいかわからない」と顔に書いてある皆さんのために、取材スタッフの一人が作ってきたフルコースを紹介しました。それがこちらです!
レゲエLOVE歴20年!レゲエが好きになるフルコース
前菜
ジャマイカ&レゲエ A to Z 2010年増補改訂版
「レゲエが生まれた国ジャマイカやレゲエについて知る入門本。辞書形式でイラストも多く、わかりやすいですよ」
メイン
ラフガイド・トゥ・レゲエ
「レゲエガイドの決定版。レゲエが産まれる背景や進化の過程、アーチストがいつどこで誰と何をしていたか、誰と仲が悪かったかなどがわかる辞書であり、歴史書でもあります」
デザート
ライオンのうた―Message through Bob Marley
「レゲエの神様、ボブ・マリーの歌詞を25人のアーチストがビジュアル化した心の目でみる絵本です」
スタッフAさんの説明が終わったところで、1年1組の皆さんに「Aさんに質問してみませんか?」とムチャぶりしてみることに。
実は取材は「質問力」がとても大事。ただ、それがムズカシイこともよくわかります。
急に伏し目がちになった皆さんに「たとえば、メイン本の分厚い本、高そうだけど値段を知りたくないですか?」とヒントを出すと、「あ、何を聞いてもいいんだ」というように数名顔を上げ出します。
価格が約1万円だとわかれば、Aさんはそれほど高額でもどうしてもその本が欲しかったという情熱の証しになる。
取材には「聞き出す」面白さがあることを伝えます。
次回はいよいよ取材編! 生徒たちには髙橋先生から宿題が出ています。
「みんな、フルコースのテーマを考えておすすめ本を3冊持ってきてください。あと何を質問するかもよく考えておくこと」。
ワークショップの様子は髙橋先生が撮影し、新陽高校のサイトでも即日アップしてくれた。
そして初回の締めは、誰と誰が組むかのくじ引きによるペア決めタイム。
教育実習に来ていた札幌新陽高校OBの沼田優太郎先生にくじを引いてもらうと、さきほどまでの神妙な面持ちはどこへやら「出席番号1番と…13番!」「やったー!」などと番号が読まれるたびに教室中は大盛り上がり。
16歳の無邪気な姿に思わず笑ってしまいましたが、はたしてこのあと、いったいどんな取材現場になり、どんなフルコースが出来上がるのか。
誰もゴールが見えないからこそ、面白くなってきそうなフルコース札幌新陽高校ワークショップ。後編は7月31日月曜に更新。どうぞお楽しみに!
iPadを使った取材・原稿のあとの最終回は表彰式。24人全員のフルコースも掲載します!
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