北海道書店ナビ 第185回 川島書店
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心を揺さぶる一冊との出会いは人生の宝物。書店独自のこだわりやオススメ本を参考に、さあ、書店巡りの旅に出かけてみませんか?
今回ご紹介する川島書店は、星の降る里・芦別市にあるまち唯一の本屋さん。今年で創業60年の老舗とはいえ、書店受難の向かい風に苦しんでいることに変わりはない。“親から受け継いだ店は絶対につぶさない”。川島香社長が固い決意でのぞんだ背水の陣は、経営不振にあえぐ他店をも励ますロールモデルになりそうだ。[2014.8.11]
[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=8EaNuCpRN0U]
25坪の小さな店内で額装してあるモノクロ写真を見つけた。「昭和29(1954)年の創業当時の写真です。親族の店、川島屋のほうが大きくてうちは隣の小さいほう(笑)。父が読書好きで、市役所を辞めて母と二人で始めたのが当店です」。そう教えてくれた女性は川島香さん。親から譲り受けた川島書店をもり立てる二代目経営者だ。
短大卒業後、一時期札幌で暮らしていたが「一人娘なので実家にはいつも後ろ髪を引かれるような思いがあった」という。事態が大きく動いたのは父・昭二さんが病身になり、店をたたむ話が持ち上がったときだった。「私がいた頃は市内に書店がもう2、3軒ありましたが、今はうちだけ。そのうちまでもが無くなったら芦別というまちの文化も途絶えてしまう…そう思うとたまらなくなり、ふるさとに骨を埋める覚悟で戻ってきました」。このとき香さん42歳。人生の転機だった。
8年ぶりに帰ってきた店では顔なじみの従業員たちが変わらず頑張っており、「お帰り」と笑顔で出迎えてくれる常連客にも励まされた。まずは店頭の陳列を見直し、自作の什器でレイアウトを一新。傾斜をつけることで表紙がより目に飛び込んでくる「商品が死なない陳列」を徹底した。
その一方で店の数字を一から検証し、抱える在庫の多さに愕然とした。トーハン、日販の二代取次会社が寡占する国内の書籍流通では「どの本を何冊どの店に配本するか」は取次主導で進められている。当初契約したどおりの「パターン配本」から川島書店の実状に応じた変更を申請しても、気がつけばまた元に戻るというやりとりが幾度となく繰り返された。「人口1万5000人のまちに何十種類もの雑誌を大量に配本されても売れるわけがありません。送り返す費用の負担にも圧迫され、徐々に店も私も疲弊していきました」。さらに追い打ちがかかったのは、2013年のことだった。スマホやタブレットの浸透で若者の本離れが加速し、9月には1ブロック隣にあるスーパーマーケットの改装工事で街中を歩く人足がぴたりと途絶えてしまった。
このままでは後がない。背水の陣を悟った香さんは賭けに出た。日販に連絡し、店に来た担当者とその上司に店の数字をすべてさらけ出したのだ。「恥ずかしいなんて言っていられない。ぶっちゃけないとやっていけないところまできていました。前年比はこうで、今年はこう。今の配本ではキツイ、どうしたらいいでしょうか、と何もかも正直にさらけだしたんです」。
店は絶対につぶさない。香さんの必死の訴えが旧弊に風穴を開けた。「我々も社長の本気に応えます」と取次側が動き、これまでのパターン配本を細かく再チェック。飽和状態だったパズル誌を適正な種類・納品数に絞り込む、売れないアダルト系やゲーム誌はやめるなど“川島書店らしい配本”が始まった。「私どもの声に日販さんもキャッチボールで返してくれた。レイアウト替えにも手を貸してくださり、本当に感謝しています」。配本が入れ替わるまでの厳しい2、3カ月を乗り切った頃にスーパーも改装工事が終わり、客足が戻った店は再び軌道に乗り出した。
2014年6月10日、香さんが戻ってきてから6年目の初夏に川島書店は創業60周年を迎えた。限定で配った紅白まんじゅうにも物語がある。「市内の老舗の和菓子屋、かめや製菓さんが5月に後継者不足で閉店したんですが、そこにお願いしたところ“最後の大仕事”といって快く引き受けてくださったんです。皆さんに喜んでいただけて、いい記念になりました」。老舗同士が交わしたねぎらいのエピソードだ。
音楽好きな香さんにとってはCD・DVDの販売にも力が入る。「本も音楽も文化の種。微力ながら芦別の文化を育んでいくためにも次は創業70年を目指します」と笑顔を見せた。店の2階に暮らす両親は一人娘の奮闘を静かに、そして誇らしげに見守っていることだろう。「あなたじゃなかったら店はここまでこれなかった」とは母ナツ子さんの言葉だ。小さな地元書店のしなやかな頑固さを、芦別のまちはもっと自慢してもいいと思う。
Store picture
斜めに寝ている本や隙間がなく、どの棚も整理が行き届いている川島書店。
香社長自作の斜め棚で“表紙が死なない”陳列を徹底。
芦別出身・在住の俳人、西川哲郎コーナーを常設。作家森村誠一による西川評など貴重な本が手に入る。
おりがみテキストとおりがみ、ぬり絵本と色えんぴつなど買い手の立場に立った売り方にも工夫が光る。
市内にCDショップがなく、川島書店でCD・DVDも取り扱い中!
Basic information
【 住 所 】芦別市北1条東1丁目6-4
【 電 話 番 号】01242-2-2237
【 営 業 時 間】9:00〜19:30
【 定 休 日 】年中無休(1月1日のみ休み)
川島さんがセレクト! 3冊のおすすめ本
1)林真理子著『白蓮れんれん』(集英社)
私も毎朝見てから出勤しているNHK朝ドラ「花子とアン」。花子よりも気になる登場人物、蓮子さまのモデルとなった歌人、柳原白蓮の伝記小説です。TVより一足早く続きを知りたい方におすすめです!
2)さとうまさ&もえ原作・たいらさおり漫画『北海道民のオキテ』(KADOKAWA/中経出版)
北海道出身の嫁に夫は翻弄されっぱなし!ビタミンカステラやカツゲンなど「これって北海道だけだったんだ!」と驚かされるネタが満載で、道民こそ読んで笑える楽しいコミックエッセイです。
3)『アナと雪の女王 MovieNEX』(ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社)
DVDやブルーレイも扱う当店で最近のヒット作といえば、やはりアナ雪!親ごさんやおじいちゃんたちに「買うか?」と聞かれて満面の笑みでうなずくお子さんたちが本当にカワイイんです。ご自宅で何度でも楽しめるアナ雪の世界、ご家族みなさんで堪能してくださいね!