「本のフルコース」に妻も夫も登場したのは附柴夫妻が初!裕之さんの回が1月で、彩子さんが12月。2020年の始まりと終わりを飾っていただいた。
[2020.12.14]
書店ナビ:白樺やアズキ、ラベンダーなどの北海道産素材を使った手作り石鹸で、全国のファンに支持されている札幌の石鹸ブランド「SAVON de SIESTA」(サボン・デ・シエスタ)。
既存の石鹸が肌にあわず、自らの手作り石鹸で肌荒れを解決した附柴彩子さんが2005年に立ち上げたブランドです。
北大の大学院で理学系の研究に没頭し、製薬会社で薬事法について学んだ彩子さんですから、化学の延長上に位置する石鹸づくりもお手のもの。
確かな専門知識と、小さい頃から大好きだったという自然への憧憬を、SAVON de SIESTAというブランドに結実しています。
学生時代からおつきあいしていた夫の裕之さんは現在、会社の代表取締役としてSAVON de SIESTAのビジネス面を牽引。
2020年1月の「本のフルコース」に「心を越えて人生の目的を見つける本」のテーマでご登場いただきました。
Vol.174 株式会社Savon de Siesta 代表取締役会長 附柴 裕之さん [本日のフルコース] スティーブ・ジョブスを敬愛する附柴さんの愛読書! 「心を越えて人生の目的を見つける本」
書店ナビ:今回彩子さんが選んでくれたテーマは「毎日をごきげんに」。コロナ禍の今こそ、すごく大切なキーワードですね。
附柴:2020年はSAVON de SIESTAの創業15周年でもあったんですが、私が27歳で石鹸屋を始めてから、出産や直営店のオープン、イベントの出店や取り扱い商品の拡大など本当にいろんなことがありました。
気がつけば40代に入り、最近とても大切にしているテーマが「毎日をごきげんに」と「自分を大切にすること」。
これから起業を考えている方々にもこの二つはすごく大切なことだと思うので、そのヒントをもらえる5冊をご紹介します。
附柴:小さい頃に母に買ってもらい、何度も読み返しました。おばあさんがいろんなものを混ぜていちごの色を作り上げていく過程がすごく楽しそうで、私自身も理科の実験やお菓子作りが自然と好きになっていきました。
大学で理学部に入ったのも、石鹸づくりの道に進んだのもこの本が導いてくれたから。
起業したときにふと読み返したら、自分がどういう気持ちで石鹸づくりを始め、将来はどんな姿になりたいのかを再確認できました。いつも自分を原点に戻してくれる一冊です。
娘が生まれてからは彼女にも贈って一緒に読みました。今日うちから持ってきたこれは、娘の本です。
書店ナビ:以前、札幌の絵本専門店「ひだまり」の青田正徳さんが「いい絵本には人生で三度出会います。一度目は子どものときに親に読んでもらい、二度目は自分のために読む。そして三度目は自分が親になり、我が子に読み聞かせるとき」とおっしゃっていました。
彩子さんは、この『いちごばたけのちいさなおばあさん』と三度出会ってますね。
附柴:青田さん……名言ですね!私も「ひだまり」さんが大好きで、何度かお店にうかがっています。
書店ナビ:附柴夫妻を別々に取材したことがあるライターの一田さんは、SAVON de SIESTAの店頭イベントでも一緒にコラボされたり、2020年の15周年トークライブ配信のときもゲストで登場されたりと、附柴夫妻が厚い信頼を置く間柄です。
(一田さんが彩子さんを取材した新刊のお話は、のちほど「ごちそうさまトーク」でご紹介します)
直営店Siesta.Laboでも一田さんの書籍を取扱中。
他にもブランドコンセプトである「ココロがホッとするひととき」につながるものづくりやライフスタイルに関する書籍を並べている。
附柴:この本は私が初めて読んだ一田さんの本で、20代から30代になるとき、これからをどう過ごすか、誰かお手本がいてくれたらなあと思っていたときに旅先の書店で見つけて手に取りました。
読んでわかったことは、ひとりとして同じひとがいないということ。「自分らしさ」に正解はない。ということは何にでもチャレンジしていいんだ!という勇気をもらいました。
書店ナビ:登場する10人を「決着力」や「焦点力」「沈黙力」といった「○○力」で表現する構成が面白いですよね。
彩子さんが特に惹かれた「○○力」は何でしょうか。
附柴:モデリスト篠原寛子さんの「停止力」、立ち止まるという行為が、実は私は大の苦手で、うちのスタッフにも「隙間恐怖症」と言われるくらい、ちょっとでも予定に隙間ができると何かを入れたくなっちゃうほうだったんです。
でもずっと立ち止まらずに高いパフォーマンスを維持できるわけもなく。100点のあとは電池切れの0点、そしてまた充電ができたら100点……の繰り返しは私も疲れますし、それに周囲も疲れさせてしまうことになる。
それよりも自分のいい状態を把握して、80点くらいでいいからキープする。立ち止まるからこそ、維持できる「持久力」も教わりました。
書店ナビ:暮らしや生き方、幸せについて何冊もの本を書かれている松浦弥太郎さん。「自分らしさ」の固まりのような方だと思っていましたが、本書で「自分らしさ」はいらない、と言い切るところに驚きました。
附柴:ビックリですよね!この本を読んだ2018年の私は、SAVON de SIESTAの夢だった工房付き路面店ができ、スタッフも順当に増えて、「次に何をしたらいいんだろう」と途方にくれていた時期だったんです。
当時は社長職でもあったので、周囲から期待されている「社長らしさ」にからめとられて、かなりのスランプ状態に。
そんなときに弥太郎さんが書いた、この文章に救われました。
《「どうすれば自分らしいのか?」などという意識を捨てて、夢中でやる。自分らしさにこだわる余裕などないくらい、没頭し、楽しむ。そのはてにある実りこそ、自分らしさではないかと、僕は考えています。》
附柴:これを読んだときに「そうだよな!」と、まるで目の前の霧が晴れていくように感じました!
弥太郎さんの他の本を読むと「結構キビシイことを言うなあ」という印象だったんですが、この本の寄り添い方はすごくやさしくて、うれしかった。
ガチガチに硬くなっていた心がほどけて、いつか弥太郎さんにお会いすることができたら「ありがとうございます!」とお伝えしたい気持ちでいっぱいです。
「それとこの本を買ったもうひとつの理由は、表紙がヨシタケシンスケさんだったから。なにげない日常を切り取るヨシタケさんが大好きです」
附柴:この本のことを知る前に「どうして毎日、こんなに時間がないんだろう」と思い、自分のスケジュールを書き出してみたんですが、このままだととても考える時間が持てないことがわかったんです。
これはなんとかしないと!と思っていたときにヨガインストラクターの青木千種さんが考案した「CITTA DIARY」を見つけて、使い始めました。
書店ナビ:CITTA DIARYの公式サイトを見ると、習慣にしたいけど出来ないことを書き込んだり、自分の目標を2カ月単位で見通す「プロジェクトシート」があったりして、夢や目標の実現に具体性が増しますね。
附柴:そうなんです。そこから青木さんのことをもっと調べていったら朝5時に動画配信で瞑想会をやっていることがわかり、11月から私も参加しています。
「朝5時に起きて?ネットを通じて瞑想?」大変だと思いますよね(笑)。でも1人じゃないと、できるんです。
これをすると朝から自分の調子が整うので、私が大切にしている接客もすごくいい状態でできるんです。
この瞑想をやり始めてから、たまたま知った『モーニングメソッド』を読んだら自分が考えていたことが全て体系だてて書かれていた、という感じです。
現在は自分ひとりで考える時間や読書の時間もでき、一日を通して暮らしが整ってきたという実感を持てるようになりました。
自分が整えば、周りにもプラスの連鎖が生まれていく予感もします。早起きっていいことしかありませんね!
「コロナ対策で直営店の営業が前後を1時間ずつ縮めた12時から18時までになりましたが、11時からは店頭からインスタライブを発信しています」
附柴:毎日をごきげんに過ごすには、考え方や時間の使い方も大切ですが、なんといっても、自分のからだとこころを大事にしてあげることが一番大切。
田中さんの連載は前から読んでいましたし、気になっていたボディ・ワーク「ロルフィング」修行の回や、SAVON de SIESTAでもコーディアルを取り扱っているマヒナファーマシーさんの回もあって、楽しく読めました。
簡単に取り入れられることが多いので、みなさんも気になるケアからトライしてみてはいかがでしょうか。
「田中さんの修行に同行するフォトグラファー砂原文さんの写真も大好き。写真を見ているだけでも心地いい一冊です」
書店ナビ:SAVON de SIESTAの創業15周年にあたる2020年は、「コロナ禍のなかでできることを!」を記念トークイベントの動画を配信したり、インスタライブや記念誌の制作など新しい試みに果敢に取り組んだとうかがっています。
書店ナビ:《スープ》本でも触れましたが、附柴夫妻をよく知る一田憲子さんが2020年10月に新刊『ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく 夫と機嫌よく暮らす』(エムディエヌコーポレーション)を出されて、その中でも彩子さんが登場しています。
「私が言ったとりとめのない話が一田さんの文章になると”そう、こういうこと!”と自分でも驚くほどクリアに見えてきました。でも今回はちょっと本のタイトルに焦ったかな(笑)」
SAVON de SIESTAでは一田さんが自費出版した文庫シリーズも販売中。「まねしんぼ日記」「まねしんぼ日記2」「びびりんぼ日記」というタイトルから気になる人も多いのでは。数量限定発売。一冊1320円。
書店ナビ:ブランド創業15周年という通過点を越え、会社の声明として「2025年までに実現するシエスタの里づくり構想」も発表されました。
1人の女性として「毎日をごきげんに過ごしたい」と願う彩子さんの目標は何でしょうか?
附柴:今年はもちろんコロナで大変な年でしたが、同時にコロナだからできたこともたくさんありましたし、今日お話ししたように自分の整え方も少しずつわかるようになってきました。
10代20代のときはとてもできなかった「自分を大切にする」ということが、40代になった今、ようやくできるようになってきた。
そう考えると、今8歳の娘や同世代の子たちには若いうちから自分を大切にする術を身につけてもらいたいなって思います。
娘が18歳くらいになったときに「これはママがやってきたことなんだけどね」と言って、自分をごきげんに整えていく知恵が詰まった本を手渡せたらうれしいですね。
書店ナビ:次世代にバトンを渡す彩子さんの本、読んでみたいです。2020年のラストにふさわしいごきげんなフルコース、ごちそうさまでした!
ココロがホッとするひととき | SAVON de SIESTA
1978年茨城県生まれ。北海道大学大学院理学研究科修了。自身の肌荒れをきっかけに石鹸づくりを始め、2005年に石鹸ブランド「SAVON de SIESTA」を創業。ライフオーガナイザー1級。夫の附柴裕之さんは株式会社Savon de Siesta代表取締役。
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