5冊で「いただきます!」フルコース本
書店員が腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。
おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。
好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ
Vol.15 ゲオ北広島店 岩崎 利江さん
勤務14年、「本に囲まれているこの仕事が大好き」という岩崎さん。
[2015.9.7]
書店ナビ | 「夢を仕事に!」、とても素敵な切り口ですね。 |
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岩崎 | ホントに好きなこと、やりたいことを仕事にできてる人ってどれくらいいるのかなと思い、お給料や条件を飛び越えて夢を形にしていこうとしている若者を描いている小説を選んでみました。 |
前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書
しゃべれどもしゃべれども
佐藤多佳子 新潮社
落語家の世界を舞台にした友情、人情、愛情たっぷりの小説。
岩崎 | 主人公は26歳の今昔亭三つ葉。落語家としてはまだ「二つ目」で、しゃべりは上手なんですが面白くないという致命的な悩みをかかえています(笑)。 その三つ葉の話し方教室に集まるワケありの生徒たちと、ときにはぶつかりあいながら互いに何かを見つけていく、という下町のお話です。 |
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書店ナビ | 映画化の主演はTOKIOの国分太一さんが務めました。 |
岩崎 | 合ってましたね。三つ葉のイメージにぴったりでした。 ちなみに佐藤多佳子さんの作品は『一瞬の風になれ』も大好きで、若者の青春群像劇を描かせたら抜群にうまい。他の作品もおすすめです。 |
スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本
駅物語
朱野帰子 新潮社
鉄道会社の駅員として働く若者たちの物語。自分や家族の夢を職業に選んだ幸せや苦悩がさわやかに描かれています。
書店ナビ | 単行本は2013年7月に発刊され、今年2月に出た文庫の帯には「東京駅100周年記念文庫化」の文字が入っています。 |
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岩崎 | 好きな方はひとめでわかると思いますが、表紙の駅舎は東京駅です。主人公は若葉直という女性駅員。彼女がなぜこの仕事に就いたのか、というところも含めて駅をめぐるさまざまな人間模様が交錯します。 |
書店ナビ | 映像でもなんでも、やはり駅はドラマが似合いますね。 |
岩崎 | ですよね。それに著者の朱野帰子(あけの・かおるこ)さんがとても丁寧に取材されているようで、駅員たちの日常が手に取るようにわかって面白い。各章も「第一章 通勤定期券」「第二章 鉄道グッズ」と、駅ゆかりのアイテムで構成されていて、作中にはもちろん“てっちゃん”も登場します。 |
表紙には2014年12月に100周年を迎えた東京駅が描かれている。
魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく
海に降る
朱野帰子 幻冬舎
深海探査機パイロットという特殊な職業に就いた女性が主人公。今秋WOWOWで有村架純主演でドラマ化。
書店ナビ | WOWOWのドラマ『海に降る』は10月10日からスタート。毎週土曜夜10時に放送されます。 |
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岩崎 | 主人公の深雪は父親も深海探査船のパイロットで同じ道を目指したという設定です。 海の底には何があるかわからない。極限の空間がテレビでどうビジュアル化されるのか楽しみです。 ちょっとだけネタばれしますと、深雪には閉所恐怖症の気があって、それは本人の体調管理うんぬんということだけでなく仲間の命をも危険にさらしてしまう可能性がある、というシビアな局面も描かれています。 |
書店ナビ | 夢を仕事にしても楽しいことばかりでなく、乗り越えなければいけない壁があることを伝えているところがいいですね。 |
肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本
舟を編む
三浦しをん 光文社
辞書編纂というお堅そうな仕事を身近に感じられる、2012年の本屋大賞受賞作。
岩崎 | きっと皆さんご存知だろうなとは思いましたが、お仕事小説を選ぶとしたらこれは外せない、三浦しおんさんの代表作です。 言語学者の金田一秀穂先生がテレビに出たりして、言語学や国語辞書の世界が少しは身近に感じられるようになってきましたが、それでも私たちにはまだまだナゾの領域。ああやって言葉を集めたりしてるなんて、この本を読んではじめて知りました。 |
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書店ナビ | 映画化では主人公の馬締光也(まじめ・みつや)を松田龍平さんが演じました。恋人の林香具矢(はやし・かぐや)は宮崎あおいさん。 |
岩崎 | この二人がいいんですよね、微笑ましくて。応援したくなりました。 |
就活中の娘さんに『駅物語』を勧めた岩崎さん。「本人なりの進路が決まったようでほっとしています」
デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで
仏果を得ず
三浦しをん 双葉社
『舟を編む』の作者が今度は古典芸能に着目。人形浄瑠璃・文楽を担う若手太夫たちを軽妙に綴った笑って泣ける一冊。
岩崎 | 表紙の二人は、左が主人公の義太夫・健で、右がその相方となる三味線弾きの兎一郎兄さん。この兎一郎兄さんが渋くて、とてもいいんです。 |
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書店ナビ | タイトル『仏果を得ず』の仏果とは、「仏道の修行によって得た仏の境地」。芸事にも通じる修行の厳しさと、その果てに得られるものの大きさを表しているように感じました。 |
岩崎 | 修行とまではいかなくても、自分が選んだ仕事はとりあえず続けることが目標かな、と。あと、目指す人が大きいと頑張れる。健の師匠である銀大夫さんも人間国宝なのにすごくオチャメ。こういう人のもとで学びたいという気持ちにさせられます。 |
ごちそうさまトーク 気がつけば女性作家に手が伸びて
書店ナビ | 今回のお仕事小説、5冊とも女性作家さんの作品ですね。 |
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岩崎 | そうなんです!選んでから気づきました。うちは家族全員が有川浩(ありかわ・ひろ)さんのファンで全作読んでいるんですが、だからといって今回も女性作家に限定したつもりはなかったのに気がつけば(笑)。 きっと女性作家ならではの観察力や女性主人公の細やかな心理描写が、読んでいて素直に共感できるからかもしれません。なかでも朱野帰子さんは今後ブレイクの予感がします。皆さんもぜひご注目ください。 |
書店ナビ | 好きな本に囲まれて働く岩崎さんが選んだ元気が出るお仕事小説のフルコース、ごちそうさまでした! |
旅先で やっぱり気になる ライバル店
オフの時間も旅先でもつい足が向くのは本屋さん。「配本チェックをして気になる本があれば帰ってからうちの店でも注文する」くらいのタフさがなければ、大事な店頭は守れない。特に東京、代官山方面は「行ってきました」話で盛り上がる。やっぱりみんな、本が好きなのだ。
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