[2022.12.21]
プロフィールにまつわる「嘘」を解説中の浅生鴨さん。Twitter公式アカウント「@NHK_PR」の「中の人1号」時代は60万人以上のフォロワーを集めたことで知られる。出版社「ネコノス」創業。
真っ白な新刊の帯には、こう書かれている。
「嘘の海に浮かぶ、それぞれの”真実”が愛おしくなった。人が人と向き合うとき、本当に大切にするべきものをこっそり教えてもらった気がした。」浅生鴨氏(作家、プランナー)
なんとなぁくわかったような気持ちになる美辞には引き出し線が伸びている。
その先の枠線の中を読むと、「こんな感じのおしゃれなコピーが欲しかった。誰も書いてくれなくて、自分で書いた。」という”告白”にクスリと笑う。
他にも〈「すごい人が書いた役立つ本だ。」と言いたい。〉など、裏表紙に至るまで注釈付き。
自著の帯に著者自らがコピーを書くというこの自由な発想の持ち主は、元NHKディレクターの浅生鴨さん。
2022年9月に最新刊『ぼくらは嘘でつながっている。』を発売し、10月2日(日)には三省堂書店札幌店でトーク&サイン会が開催された。
本書が取り扱う「嘘」とは、いわゆる「事実と異なること=嘘」という共通認識をさらに広げて、個々人が世界を切り取る視点を指す。
ある事柄に対してAさんとBさんが各々の”真実”を持つということはすなわち、相手の言い分は”嘘”となる。
その仕組みを双方が理解することで、とかく意見の対立が起こりやすい現代社会の知恵にしようと呼びかける。
だが目次にあるように「みんな毎日嘘をつく」「「言葉」はすべて嘘である」といきなり突きつけられても、ピンとこない人も少なくないのではないだろうか。
そこでこの日のトークは、会場の参加者同士でペアを組むワークショップを中心に構成。
組織名や具体的な固有名詞を使わずに自分の職業を自己紹介し合う、会場で配布された筆記用具の長所と短所を言うなどの聞き取りを通して、自分たちが無意識に情報を「省略」していることや「立場」によって自在に意見を変えていることへの自覚を促した。
この日は本書の編集者さんを含めて16名が参加。写真は浅生さんも一緒にお題の絵を描いているところ。
ワークショップ後の質疑応答で聞かれた「今までついた嘘の中で一番好きな嘘は?」に対して浅生さんは「例えばですが、”母親を亡くした子どもに”お母さんはいつも、あなたのことを見ているよ”という優しい嘘を上手に言ってあげられる大人はかっこいいと思う。人を喜ばせる嘘もいいですが、どちらかというと辛さや悲しみを癒すような嘘の方が好きかもしれません」と回答。
「面白い本の見つけ方は?」には「とにかく読んで数をこなすこと。そうするとだんだん”この本は面白いな”と気配でわかるようになる。買うまでが読書です」と語り、笑いの絶えないトークをお開きとした。
「9-E」「12-E」とは本書にある嘘の分類表のこと。なお、本書230Pを読んで「?」となった人は日本最古の日記文学『土佐日記』を思い出して。
2022年1月6日にJR千歳駅前に開館した「まちライブラリー@ちとせ」
全国に広がる利用者参加型民間図書館「まちライブラリー」の恒例イベント「まちライブラリーブックフェスタジャパン」が2022年も9月2日(金)から10月30日(日)まで開催中。
その一環として10月23日(日)には、まちライブラリー@ちとせと北海道書店ナビのコラボ企画「本のフルコース」公開インタビューが開催される。
2022年9月2日(金)から3日間にわたり「ちとせまちライブラリーブックフェスタ2022」が開催された。画像はオープニングトークの様子。
フルコースのテーマは「防災」。千歳市総務部危機管理課の髙橋裕輔さんおすすめの防災本を、会場の参加者さんたちと一緒に聞いていく。
2018年の北海道胆振東部地震や全道ブラックアウトの記憶はまだ新しく、規模や場所は違っても災害のニュースは日常的に聞こえてくる。
そのときのために、私たちはどう備えたらいいのか。そしてそのときがきたら、どう行動したらいいのか。先人たちの知恵や記録から学びたい。
事前申し込み不要・無料参加。
2020年11月に行われたリトルプレス 『本のフルコース』取材の一場面。
2022年10月10日(月・祝)から始まった「おたるBook Art Week 2022」。市立小樽文学館や小樽図書館をはじめ、カフェや木工房、ジーンズショップなど14カ所で思い思いの本にまつわる展示や企画が開催される。
小樽文学館では10月13日(木)~11月3日(木・祝)まで、小樽ゆかりの文豪たちの「ちまちま人形」を作ってきた高山美香さんに焦点をあてて「高山美香の偉人本フルコース」を展開。
本展は北海道書店ナビの選書企画「本のフルコース」から生まれた同名のリトルプレスとの連動企画。
高山さんが偉人にまつわる膨大な資料本をどの順番で読み込むかを、料理のフルコースに見立てて紹介する。
10月29日(土)14時からは、高山さんとリトルプレスの著者佐藤優子によるトークイベント「『本のフルコース』厨房こぼればなし」が開催される。
トークのお申し込みは文学館(電話0134-32-2388)まで。定員30名(申込順)・参加費無料。
高山さんの人形制作話をいつ聞いても面白く、偉人たちをグッと身近に感じるエピソードが満載なのでどうぞお見逃しなく!
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