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第361回 田北社会保険労務士事務所 所長 田北 百樹子さん

5冊で「いただきます!」フルコース本

書店員や出版・書籍関係者が
腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。
おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。
好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ

「過去の人気フルコースをリバイバル掲載!」

Vol.64 田北社会保険労務士事務所 所長 田北 百樹子さん

今年で開業21年目に突入した田北さん。


[本日のフルコース]
「シュガー社員」「ベビー社員」の名付け親が処方する
「会社の人間関係に効く本」フルコース

この記事は[2016.9.26]初掲載されました。


書店ナビ 社会保険労務士とは、企業の労務管理や社会保険にまつわる相談に応じるプロフェッショナル。
さまざまなケーススタディを見つめてきた札幌の社労士、田北百樹子さんは、2007年に「自分に甘く自立心に乏しい社会人」を「シュガー社員」と命名し、その事例と対処法を分析した初の著書『シュガー社員が会社を溶かす』(ブックマン社)がベストセラーとなりました。
それから9年後の今年7月、7冊目となる最新刊『べビー社員―職場をイライラさせる幼稚な人の深層心理』が発刊されたとたん、今回も再び「ベビー社員」というキャッチーなフレーズが瞬時に広まり、再び熱い注目を集めています。
田北 私たち社労士が取り扱う人事や労務の世界は、なにかトラブルが起こると、とかく法制度や企業内の仕組みづくりに目がいきがちですが、実は根本に潜む問題は大抵が人間関係に集約されます。
10年前でしたらその中心にいたのが「シュガー社員」であり、近年は行動や思考が幼稚な「ベビー社員」なのではないか、という自分なりの考えをまとめたのが、本書になります。
一番お伝えしたいことは、「あの人はベビー社員だ」と面白おかしくレッテルを貼って切り離すのではなく、”対処法を学んでともに社会で機能していきましょうね”という共存の姿勢です。
自分の部下や同僚あるいは上司がすぐに感情の導火線に火がついてしまうタイプなら、その導火線を賢く回避して、ご自分もストレスのない会社生活を送っていただきたい。
今回のフルコース5冊も、そんな思いをこめて選ばせていただきました。

田北百樹子  PHP研究所
「ベビー社員」に年齢は関係なし!「かまってほしい」「自分は特別」…大人になりきれない社会人を5つのタイプに分析し、彼らの行動原理に迫る。






[本日のフルコース]
「シュガー社員」「ベビー社員」の名付け親が処方する
「会社の人間関係に効く本」フルコース



前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書

僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
木暮太一  講談社

会社に対する二大不満要素「評価システム」と「人間関係」はコインの表と裏。前者に納得がいかなければ、それが態度に表れ、周囲との関係もギクシャクし始めます。「一生懸命頑張っているのに思うような評価が得られないのはなぜか」。その答えが本書の中に隠されています。



書店ナビ 著者は富士フイルムやリクルートなどの大手企業に勤務経験があるビジネス書作家。本書ではマルクスの資本論にもとづいて、社会そして労働の仕組みを明らかにしています。
田北 「自分の頑張りを認めてくれないこんな会社はもうダメだ」という不満を持つ前に、まずは働き方の仕組みや会社の評価システム、給料の構造といった労働における大前提を知ることが、企業人としての出発点。
その前提を知ったうえで、目の前のやるべきことをやり、労働力として自分の商品価値を高めていこう、という前向きな考え方に導いてくれる指南書です。



スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本

残念な人の仕事の習慣  
山崎将志  アスコム

仕事を上手に回せる人は人間関係も上手に回せる人のこと。逆に言うと、仕事の進め方が”残念”だと、人間関係にも暗い影を落とすことになります。
仕事の不満を他者のせいにしていませんか? 自覚がなくともご自身が”残念な人”になっていないか、いま一度ご確認を。







書店ナビ 残念な人の仕事の習慣、たとえばどういう行動でしょうか。
田北 金曜の夜に仕事の依頼メールを出して「月曜の朝までにお願いね」と言ったりします(笑)。
書店ナビ そのメール、もらった覚えがあります(笑)。
田北 ほかにも、流しのタクシーをつかまえて「この運転手は道を知らないし態度が悪い」と不満を言ったりするのも、もし事前に移動がわかっていて自分が気に入っているタクシー会社に依頼しておけば、そうした不満を回避できる確率は高くなります。
社会での行動はつねに相手があってのこと。「相手の立場になって考える」という目線を持つことができれば、金曜夜のメールももう少し早く出せるはず。年齢やキャリアを問わず、心がけたいことですね。




魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく

部下の哲学―成功するビジネスマン20の要諦
江口克彦  PHP研究所

経営の神様、松下幸之助氏のビジネス哲学を受け継いだPHP研究所前社長の著者が部下の哲学をわかりやすく解説。「仕事の不満は工夫がない証」とばっさり言い切り、職場で調和を保つヒントを提示してくれます。




書店ナビ 田北さんの新刊『ベビー社員』の出版元でもあるPHP研究所とは、松下氏によって1946年11月に創設された出版会社です。
「PHP」とは、「Peace and Happiness through Prosperity」(繁栄によって平和と幸福を)の頭文字。
その代表者でもあった著者の江口さんは23年間松下氏の部下として働き、松下流人材育成術を身をもって知る”伝承者”とも言われています。
田北 自分が江口さんの部下になったような気持ちで読みました。決して説教めいた口調ではなく、尊敬の念が素直にわき上がってくる名著だと思います。
たとえば、「上司に理不尽なことで叱られる」ということがあるとします。
これも江口さんに言わせれば、上司も部下を叱るときは真剣勝負。刀を抜いているときである、と。もしそこで、あなたも刀を抜けばチャンバラに、しかも部下のあなたは”勝ち目のないチャンバラ”になると看破します。
反論したい気持ちももちろんわかりますが、そこはあえて一歩引き、ちょっと時間を置いてから冷静に自分の行動を説明すれば、内心は「言いすぎたかな」と思っている上司も「そうだったのか」と理解してくれるはず。
江口さんご自身も松下さんに何度も叱られた経験がおありで、そのたびに細やかなフォローがあったと述懐されています。その繰り返しで「この人のためなら」という固い信頼関係が築かれていったんだと思います。

「人間関係の改善は相手を変えようと思うより、自分が変わるのが一番の近道です」






肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本

ウザい相手をサラリとかわす技術 今日から人間関係が必ず上向く!
清水克彦  SBクリエイティブ

「この人苦手」と思っていても関わらなければならないのが企業人です。苦手な人との適切な距離の保ち方や話題の変え方など、相手を不快にさせないようにしつつも自分の領域をおかされない手法を説明しています。


書店ナビ 著者は報道・マスコミ業界出身者。「俳優の誰々さんに会わせてほしい」とか「誰々のライブチケットが手に入らない?」等々の”ウザい”思いをいっぱいしてきた経験をもとに本書を書いたそうです。
田北 一般に”ウザい”と言われる人たちは、人づきあいで大切な距離感を保つことが苦手なひとたち。こちらの気持ちはおかまいなしにグイグイ攻めてきます。
そういう人たちに対処する大きなキーワードは「水路をつくること」。相手の話に寄り添いながら「その話、また今度教えてください。そういえば…」と逃げ道をつくっていく。
それから「時間の手綱は自分が握る」ことも重要です。「話の途中でごめんなさい、ちょっと次が詰まっていて」など、いつまでもつきあわなくていいように工夫する。
書店ナビA 「一歩なら譲ってもいいけど百歩は譲らん」みたいなことでしょうか。
田北 そうです、そうです。企業人のみなさんが一番ご苦労されているところだと思いますが、相手が誰であっても一番大切なのは「謙虚」であること。もしかしたら自分もウザい行動をとっていなかったか、省みることができる一冊でもあります。



デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで

女子の人間関係
水島広子  サンクチュアリ出版

精神科医でもある著者が「女」のイヤな部分を徹底解説。嫉妬して張り合ってくる女や敵味方をつくりたがる女等、面倒な女性の対処法をわかりやすくひもといてくれます。


田北 『ベビー社員』を書くときに出版社の方から教えてもらった本です。女子本のように思えますが、女性の社会進出に伴い、女性スタッフに手を焼いている男性のみなさんもぜひご一読を。
どんなに優秀な男性社員であっても、こと女性同士の仲介に関しては驚くほどの無力感を味わうはず(笑)。では、一体どうすればいいのか、本書の3つのステップが教えてくれます。
ちょっとだけ本書の答えをお教えすると、つまりは相手の領域を尊重すること。かといって、なにもコンクリートの壁でブロックするのはなく、透明なカーテンで境界をつくる、くらいの余裕を持てるようになれたら理想的です。




ごちそうさまトーク 理想のトップは「NO」がない

書店ナビ これまで大勢の企業人と接してきた田北さん、「シュガー社員」や「ベビー社員」とは真逆のところにいる、会社の経営が順調にいっているトップの方々の共通点とは、なんでしょう。
田北 そういう方々はみなさん、一言でいうと「NO」がない。人の話や依頼をよく聞き、100%応えようという姿勢をお持ちです。
それがもし100%でなくなったとしても、足りない分のフォローが細やか。つまるところは人づきあいがお上手で、ご自分が動かなくても代わりに動いてくれる部下との信頼関係を築いていらっしゃいます。
書店ナビ 「自分もいつかこうなりたい」という上司の姿と、「自分もああなっていないか気をつけよう」という反面教師、双方から学ぶ姿勢が大事なのかもしれませんね。
年齢・性別・キャリアを問わず服用しておきたい人間関係本フルコース、ごちそうさまでした!
田北百樹子(たきた・ゆきこ)さん
札幌市生まれ。1996年、「田北社会保険労務士事務所」を開業。札幌圏の企業と契約するかたわら、セミナー講師や執筆など他方面で活躍。オリジナル企画である中堅社員向け「実践マナー講座」DVDも好評発売中。

●田北社会保険労務士事務所 www.sr-takita.com





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