5冊で「いただきます!」フルコース本
書店員や出版・書籍関係者が
腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。
おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。
好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ
Vol.90 イラストレーター アカツキさん
1万人以上のフォロワーがいるTwitter(@buchosen)が大人気!プロレスをこよなく愛するアカツキさん。
[2017.5.15]
書店ナビ | 今回のフルコース選者は、プロレスファンの間で大人気のこの方! Twitterで連載中の4コマ漫画「味のプロレス」がじわじわと評判になり、プロレス通が多い芸能人やレスラーたちにも愛されて、気がつけば2017年4月時点でフォロワー数1万2000人を突破! イラストレーター、アカツキさんの解説です。アカツキさん、よろしくお願いします。 |
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アカツキ | よろしくお願いします。まず自己紹介をさせていただくと、僕がプロレスを見始めたのは5才のときから。 母親に「テレビでアントニオ猪木やってるわ」と教えられたときの「アントニオイノキ」ということばの響きが、何も知らない子どもにとって「ウルトラマン」と同じくらい衝撃でした。 以来、札幌でよく試合が行われていた中島体育センターに通うようになり、でもプロレスと同じくらいにマンガを描くことも好きだったので、高校卒業後の進路はデザイン系の専門学校に進学しました。 そこを出たあとはいろんな仕事につきましたが、やっぱり自分は絵を描いているときが一番落ち着く。フリーランスを経て、いまはイベント企画やタレント育成を手がける株式会社タイズブリック(東京本社)の専属イラストレーターとして活動しています。 |
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書店ナビ | このあとは「味のプロレス」話を含め、本の紹介とあわせながらアカツキさんのプロレス愛を探っていきたいと思います。 |
前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書
プロレススーパースター列伝1(少年サンデーコミックス)
梶原一騎原作・原田久仁信画 小学館
昭和のプロレスファンなら誰もが知っている伝説のプロレス漫画。馬場、猪木、ブッチャー、シン、アンドレ、ハンセン…数々の名レスラーの実話とフィクションを交えて紹介する全17巻。5歳ごろ無我夢中で読んでいた名作。「めばえ」より読んでました。
書店ナビ | いまはこれのKindle版が出ていますが、コミックとしては古本で手に入れるしかないようですね。 |
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アカツキ | 自分も一時は全巻持ってたんですが、いまは手元に一冊もなくてさみしいかぎりです。 昭和50年生まれの僕らの世代が子どもの頃に見た昭和のプロレスは、ほとんど無法地帯というか、”見てはいけないものを見ている”世界。 中島体育センターで初代タイガーマスクに感動したり、おやじが食堂でビールを飲んでいる間に客席に1人残されて「場外乱闘のブッチャーから半泣きになって逃げまわったりして、最高に楽しかった。 『プロレススーパースター列伝』の17人のなかで特に好きだったのは、「文明のキングコング! ブルーザー・ブロディ」。チェーンを振り回して登場する姿が強烈でした。チェーンですよ? そこがもう、プロレスですよね。 |
スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本
キン肉マン
ゆでたまご 集英社
今なお続くプロレス漫画の金字塔。子どもの頃、毎日のようにキン肉マンの絵を描いていた影響で、いまだにレスラーの筋肉を描くときは自然とキン肉マンのタッチになります。
書店ナビ | 以前ご登場いただいたまんだらけ札幌店の大井店長いわく、「キン肉マンがヒットした要因のひとつはライバルが非常に魅力的だったこと」だそうです。 |
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アカツキ | わかります。僕は「7人の悪魔超人編」が好きで、ロビンマスクやラーメンマン、そのあとの話ですがバッファローマンまでもが味方になってくれたときの心強さといったらなかった。子ども心にも描きやすかったのは、ラーメンマンです。 |
魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく
週刊プロレス
ベースボール・マガジン社
今も昔もプロレスファンのバイブル。特に90年代はプロレスのTV時代が終わり、活字プロレスへと移行した時代であり、雑誌のなかで週プロが「一番売れていた」ときもありました。昔は家に300冊くらいあったと思います。
アカツキ | 当時学生だった僕は発売日が待ちきれなくて。ほら、北海道は入荷が2日遅れるじゃないですか。毎週木曜発売の週プロが土曜じゃなくて金曜の夕方に入荷する札幌市内のプロレスショップにわざわざ買いに走ってました。 高校の修学旅行で東京に行ったときも「はじめて発売日に買える!」と喜んで、都庁の近くのコンビニに行きました。 週刊プロレスの編集長だったターザン山本さんはかなりクセがある人で、新日本プロレスと袂を分かつまでは「週プロの表紙になったレスラーは絶対売れる!」と言われるくらいプロレス界に影響を持っていた。リングの外からブームを盛り上げた一人でした。 |
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肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本
子殺し
金沢克彦 宝島社
90年代に新日本プロレスで起きた代表的な事件の裏側を、元週刊ゴングの編集長である金沢さんが赤裸々に綴ったドキュメンタリー。アントニオ猪木を軸に、大仁田vs長州戦、小川vs橋本戦の裏側や総合格闘技の誕生に揺れ動く永田裕志、ケンドー・カシン、藤田和之の強さへの葛藤がこれでもか、というくらい濃厚に描かれています。週プロが華やかな「表」だとしたら、この本は「裏」。人間ドラマが色濃く浮き彫りになる裏側を知ることで、あらためてプロレスの奥深さがわかる名著です。
書店ナビ | 『子殺し』というタイトルが強烈ですが、これは「プロレスこそが史上最強の格闘技だ!」という華やかな時代に徐々に影が差し、そこに海外選手を中心とする総合格闘技が台頭してきて、「なんでもあり」の総合格闘技の世界に、なんと新日の”父”であるアントニオ猪木自らが傾倒し、我が子同様のレスラーたちと総合格闘技の選手たちを闘わせる、というなんとも残酷かつ理不尽に思える当時の状況をずばり言い表している…。 なんかもう、深いですね、プロレス。 |
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アカツキ | プロレスのことを「底が丸見えの底なし沼」と言い表した人がいるくらい、ハマったら抜けられない面白さが詰まった世界です。 総合格闘技は一瞬で勝敗が決まりますが、プロレスはこちらの想像力があればそのときの心情や技、勝敗の可能性を無限に考えられる、唯一無二のジャンルだと思います。 |
「プロレスは”受けて攻める”格闘技。”受け”がうまいと攻めたほうも光って試合自体が盛り上がります」
アカツキ | でも、こういう僕でも「PRIDE」や「猪木祭り」などの総合格闘技が一世を風靡した2000年以降、プロレスから離れた時期もありました。 そうしたら2013年5月11日に元全日の小橋建太選手の引退試合があり、久しぶりにリングを見たら号泣している自分がいた。 ああ、やっぱり自分はプロレスが好きなんだという熱い思いが蘇ってきて、自分の中にあるプロレスを全部描ききってやろうと始めたのが、Twitterでの「味のプロレス」だったんです。 小橋さんの引退試合で蘇ったプロレス愛のおかげで、いまこうして好きな絵を描いて、しかも自分の絵を喜んでくださる方が大勢いる。その小橋さんがTwitterをフォローしてくださったとき、涙がとまりませんでした。 |
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デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで
味のプロレス
アカツキ
http://akatsuki-sense.com/category/ajipro/
最後は自分の作品でスミマセン!4年ほど前からTwitterで始めて現在600作品ほどあります。当初はファンにしかわからないようなマニアックなネタが多かったんですが、次第にファンじゃない人にもプロレスの楽しさを知ってもらいたくて、レスラーたちのいろんなエピソードを描いています。
書店ナビ | 告白しますと、プロレスをまったく知らない私でも吹き出しちゃうような話が多くて、続けて何本も見ちゃいました。面白かったです! |
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アカツキ | ありがとうございます。そう言っていただけるのが本当に嬉しいです。4年間コツコツ描き続けて、たくさんの方々にリツイートしていただいて今の『味のプロレス』があります。本当に、皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。しかもファンやレスラーの方からクレームがきたことは、これまで一度もないんです。大変ありがたいことだと思っています。 いまはニコニコチャンネルの『Dropkick』チャンネルで「味のプロレス出張版」を連載中で、引き続きTwitter でも新作を発表しています。 同じプロレス4コママンガの「プロレス少年イタイ君」も随時更新中です。よかったらのぞいてみてください! いつか書籍化したい! |
ごちそうさまトーク プロレスは青春であり宝物。プロレス愛よ永遠に!
書店ナビ | プロレスマンガ以外の活動もぜひ教えてください。 |
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アカツキ | 2016年に日ハムが日本一になったとき、うち(タイズブリック)の伊藤社長が知り合いである栗山監督に似顔絵をプレゼントしたいから描いて、と言われて喜んで描いたところ、栗山監督がとても気に入ってくださって。「日本一記念マグカップ」に採用していただきました。 |
2種類各1000円。栗山町の「栗の樹ファーム」で発売中!
アカツキ | あと、「味のプロレス」の前にブログでこつこつと描きためたマンガに「おっさん」をネタにした『部長川柳』があり、エンターブレインさんから書籍化していただきました。 |
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愛すべき「おっさん」ワールドを味のあるタッチと川柳で紹介。誰のまわりにもいそうな「おっさん」が続々登場。
書店ナビ | 今後のご活躍も期待しています!最後に、アカツキさんにとってプロレスとはなんですか? |
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アカツキ | プロレスは僕の青春であり、宝物。「一生好き」です! |
書店ナビ | アカツキさんの体内をかけめぐる熱いプロレス愛が大勢の人に伝播していくフルコース、ごちそうさまでした! |
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