5冊で「いただきます!」フルコース本
書店員や編集者が腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。
おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。
好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ
Vol.28 北海学園生協学生委員会G’stAffのみなさん
フルコース初の学生編は6人の力を結集!右端の女性が代表の佐藤さん。
[2015.12.14]
書店ナビ | 以前ご登場いただいた歌人であり北海学園大学人文学部の日本文化学科で教えている田中綾さんからのご紹介で、北海学園生協学生委員会G’stAff(ジースタッフ)のみなさんにご協力いただきました。 代表の佐藤優衣さん、自己紹介をお願いします。 |
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佐藤 | 私たちG’stAffはさまざまなイベント企画や書店・食堂の販促活動を行い、北海学園生によりよい大学生活を送ってもらう、「北海学園に入学してよかった」と感じてもらうことを目標としている学生組織です。 今回は学生らしいフルコースを作ろうとみんなで相談して、「学生生活に影響を与える本」というテーマに決めました。 |
書店ナビ | 代表の佐藤さんはまとめ役に徹して、他の5人のメンバーが選んでくれたんですね。では、一人一冊、自己紹介を兼ねたお話を聞いていきましょう。 |
学生生協の書店にはG’stAffおすすめのコーナーがあり、新刊やおすすめ本を紹介するフリペも毎月発行している。
前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書
大学時代しなければならない50のこと
中谷彰宏 PHP研究所
著者自身が「やっておけばよかった」「やっておいてよかった」と感じていることが書かれており、大学生活の視野を広げてくれる一冊です。
書店ナビ | トップバッターは法学部1年生の坂田雄治さん。この本を知ったきっかけから教えてください。 |
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坂田 | G’stAffが作った「新入生おすすめ本紹介パンフレット」で紹介されていて知りました。著者の中谷さんは学生のとき、映画監督になりたかったそうで「毎日のように映画館に通った」と書いてあり、自分もそんな風に学生のうちに夢中になれるものが見つかればいいなと思っています。 |
「ノーギャラのアルバイトをする」「深夜歩いて帰ってきた最長記録を作る」。
確かに社会人になれば“しないし、やれない”ことばかり。
坂田 | G’stAffには、新入生向け説明会で代表の佐藤先輩に呼び止められて、加入を決めました。内輪で好きなことを楽しむサークルとは違って、自分たちが作ったポップが書店や食堂といった公の場所に飾られたりするのでやりがいがあるし、きっと将来の自分のためになると感じています。 |
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坂田さんがいま挑戦したいことは?「アルバイトをしてみたいです」
スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本
マスカレード・ホテル
東野圭吾 集英社
刑事とホテルマン、まったく異なる職種の2人が事件解決に取り組む姿を通して、人との出会いや互いの価値観を大切にすることを教えてくれるミステリーです。
書店ナビ | 坂田さんと同じく法学部1年の吉田如海(いくみ)さんは、ヒットメーカーの東野圭吾作品を持ってきてくれました。 簡単にあらすじを紹介すると、都内で連続殺人事件が起き、警察は次の犯行場所が一流ホテルのコルテシア東京だということを突き止めた。若き刑事・新田浩介はホテルマンに化けて潜入捜査に就くことになり、その彼を女性フロントクラークの山岸尚美が教育する…。 |
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吉田 | そのホテルウーマンの山岸さんがカッコイイんです。新田刑事のほうは「自分はどうせ本物のホテルマンじゃないんだから」という少しナメた態度なんですが、山岸さんのプロ意識からするとそれはダメ。二人の緊張感ある関係に引きつけられました。 |
書店ナビ | 学生時代は“仲がいい同士”で集まりがちで、意見が違う人と顔を突き合わせることは少ないですよね。でも実は、“意見が違う友達”こそが大事な存在かも。 |
吉田 | はい、自分も人との出会いを大切にして、いろんな人の意見を聞いていきたいです。 |
「ちょっと厚いけど面白くて2、3日で読み切りました!」
魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく
武士道ジェネレーション
誉田哲也 文藝春秋
二人の女剣士が“自身の武士道”と向き合う姿を描いた青春ストーリー。剣道における「真の強さ」とはどういうことなのか。読後、たとえ困難な目標でも目指そうと思える勇気を与えてくれるシリーズです。
書店ナビ | 続いて法学部2年の菅野芽依さんはカラフルなハードカバー、剣道女子が活躍する「武士道シリーズ」を持ってきてくれました。 『武士道シックスティーン』『武士道セブンティーン』『武士道エイティーン』の3作では10代だった主人公2人が、2015年に出た最新作『武士道ジェネレーション』では大学生になり、新たな試練に立ち向かいます。 |
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菅野 | 剣道をやっていた中学生のときからずっと読んでいて、自分が大学生のいま、大学生の主人公たちをさらに身近に感じるようになりました。 剣道は勝ち負けがあるので、どうしても強い子と弱い子に分かれますが、この本で「努力した分だけ必ず力がついてくる」ことを教わった気がします。 それと香織と早苗のように、「あのコが頑張っているなら私も頑張ろう」と思える親友の大切さも。G’stAff代表の佐藤さんとは、いいライバルとしてこれからもお互いを高め合っていきたいです。 |
「最近は民法の勉強が面白くなってきました」とも話してくれた菅野さん。
書店ナビ | 作者の誉田さんに聞かせてあげたいようなお話、ありがとうございました。 |
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肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本
下町ロケット
池井戸潤 小学館
家業の町工場を継いだ主人公の挑戦し続ける姿が、夢を持つこと、人を信じることの大切さを教えてくれます。
書店ナビ | 法学部2年の松浦真季(まさき)さんは、今日(2015年11月20日)の時点でこれを映像化したTBSドラマも大評判!ゴリゴリの人気作を推してきました。 |
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松浦 | もともと機械系の話が好きで、下町の小さい工場が実はすごい技術を持っているという設定がもう、ツボでした。 |
書店ナビ | 原作とドラマ、どちらがお好きですか? |
松浦 | 将来はテレビ関係の仕事に就きたくて「この原作をこういう風に映像化するのか!」と毎回感心しながら見ていますが、登場人物が多いストーリーをドラマは上手にはしょっている印象です。 でも原作のさまざまな人間模様を知っている読者の立場から言わせてもらうと、佃製作所の経理部の殿村さんとか、もうちょっとスポットをあててほしい人がいっぱいいます。 |
書店ナビ | 『下町ロケット』に限らず映像化で削ってほしくない原作エピソードってありますよね。将来の就活、がんばってください。 |
「町工場と大企業のプライドのぶつかりあいがすごいんです」
デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで
シューカツ!
石田衣良 文藝春秋
就職活動は基本、一人ひとりが個人でするものですが、この本で描かれているのは周りの仲間と支え合って前進する“チームワーク”の就活。読むと前向きな気持ちになれます。
書店ナビ | トリを務めるのは5人のうち、実際に“シューカツ” を体験した人文学部4年生の村中光さんです。 |
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村中 | 母が先に読んで、勧めてくれました。あらすじは大学3年生の水越千晴が仲間6人とシューカツプロジェクトチームをつくって、「最難関マスコミ全員合格」を目指す物語です。 私自身もマスコミ志望だったので、共感するセリフや参考になることがいっぱいありました。 一番参考になったのは、就活中もたくさんの人に会うところ。自分も友達とエントリーシートを見せ合ったりして、できるだけ自分の殻に閉じこもらないように心がけました。 |
書店ナビ | 時代が変わっても就職活動はプレッシャーの連続。気持ちがささくれだって誰にも会いたくなくなるのもわかります。 |
村中 | 『シューカツ!』の中でも主人公たちが自分のことだけで精一杯になりそうになるんですが、「○○はどうしているかな」と声をかけあって前に進んでいきます。 おかげで私も、納得のいく形で就活を終えることができました。 |
書店ナビ | それはよかった。内定獲得おめでとうございます。 |
来春からは販促支援などの印刷関連会社に就職予定の村中さん。
ごちそうさまトーク 新入生歓迎から就活までの大学4年間
書店ナビ | 今回は5人で5冊を選ぶ変則的なフルコースでしたが、代表の佐藤さんに再び質問です。皆さんで事前に打ち合わせはしたんですか? |
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佐藤 | テーマと選ぶメンバーを決めてからは個人に任せて、一度どんな本にしたのか、どの順番にするのか話し合いました。“前菜”は新入生向けの本から始めて、“デザート”は就活で終わる構成です。 |
書店ナビ | なるほど、よく考えられていますね。学生の皆さんが等身大の気持ちで選んでくれたフルコース、ごちそうさまでした! |
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