手に持っているのは「札幌スタイル認証製品カタログ2020」。沼田さんも着用している防水・撥水性に優れたセットアップが初認証された。
[2020.4.6]
書店ナビ:札幌市が認証する地域ブランド「札幌スタイル」は、2020年のカタログを見ると現在70ブランド。
「ファッション」の項目だけでも帽子やバッグ、ストール、アクセサリーなど多岐にわたっていますが、そのなかでもひときわ目立っているのが昨年認証されたばかりのIMVER(インヴェル)のメンズウエア。
11年間スノーボードウェアを作り続けてきた地元のメーカー、株式会社フォーシーズンが新たに開発した「都市生活に使えるレインウェア」です。
雪国にはうれしい防水で蒸れにくい素材。生地も軽く「これを着て雪かきができる」くらい伸縮性もいい。自転車の泥はねも水で流すと落ちてくれる。
書店ナビ:札幌スタイルが札幌市図書・情報館とコラボした選書企画「札幌スタイル つくり手たちのMyBestBook」を書店ナビで紹介した縁で、株式会社フォーシーズンのプロダクトマネージャー沼田大資さんにご登場いただいています。
沼田:自分は特に読書家だというわけではないので恐縮ですが、中学時代からファッションに目覚めて20代、30代、そして今にいたるまでいつもチェックしてきたファッション誌でこれまでの道のりを振り返ってみました。
沼田:うちは両親と3つ下の弟がいるんですが、子どものころの思い出といえば親父との豆まき勝負。初めはダンボールで剣と楯を作って闘ってたんですが、小学2~3年生のころからだんだんジャンプで読んだ聖闘士星矢の聖衣を手作りしてバトルするようになりました。
書店ナビ:沼田さんは1978年生まれ。まさに聖闘士星矢が始まったばかり、一番勢いのある時期の読者ですね。
沼田:ええ、9月生まれのぼくは当然、天秤座の童虎をモデルにして12の武器も全部作ったんですけど、全部装備したら動けなくなりました(笑)。
今考えると、このとき子どもながらにどうやったら体にフィットするかとか動きやすいかを考えてダンボールを切り貼りしていたのは、実は洋服のパターンづくりとまったく同じことなんですよね!
今に通じるものづくりの土台がここにあったんだなあと実感しています。
沼田:ぼくは苫小牧の田舎で育ちましたから、小学生時代は聖闘士星矢の聖衣は作っても普段着るものには無頓着な子どもだったんです。
それがある日、いつもどおり紫色のKappaのジャージを着て街で同級生の女子とすれ違ったら「街中でジャージって」ってバカにされました。
書店ナビ:うわあ、女子の一言。強烈です…。
沼田:トラウマです(笑)。「ジャージで何がワルイんだ!」と思いつつ、やっぱり男の子だから女子にバカにされたことが猛烈に恥ずかしくて。
そこで初めて手に取ったファッション誌が『Hot-dog PRESS』でした。刺激の強い記事もありましたけどファッション初心者にはちょうどよかったのかもしれません。
沼田:ぼくが中学に入ったころの90年代はBボーイ系のだぼっとしたバギーパンツとかが流行っていたんですけど、身長もそんなに高くない細身の自分にはどうもそれがしっくりこなかった。もっとフィット感があるほうが好きだったんです。
なので『MEN’S NON-NO』で武田真治さんやいしだ壱成さんたち中性的な男性モデルが女性ブランドを着ているのを見たときは「えっ、男も着ていいんだ!」と驚いたし、すごく勇気づけられました。
このころからコンビニで手に入るほぼ全てのファッション誌を買いあさるようになりました。
中学時代はバスケ部でポジションはガード。「『スラムダンク』より『DEAR BOYS』派で、三浦くんが好きでした」
書店ナビ:高校を卒業した沼田さんは、宮島学園北海道ファッション専門学校に入学。学内のデザインコンテストで見事1位に輝いたこともあるとか。
沼田:そのときはスーツを作ったんですよね。この時期はもう、どっぷりファッションにハマっていてFNや繊研新聞、テレビでは「ファッション通信」でつねに最先端の情報を追いかけていました。
またちょうど、世界的にデザイナーの交代劇が続いた時代だったのですごく面白かったんですよね。
トム・フォードがグッチを再生し、ジョン・ガリアーノはジバンシーからクリスチャン・ディオールに行き、そのジョン・ガリーアノのアシスタントだったアレキサンダー・マックィーンがジバンシーの後を引継ぎ、師匠に負けない世界観を展開したとか…。
ビッグメゾンが世界で長く愛される理由や時代をとらえる力、ファッションの本質について考えていくようになりました。
書店ナビ:専門学校を卒業した沼田さんはその後、毛皮専門店やデニムショップ、紳士服専門店等に就職。一時は「サービスをしっかり学びたいから」と3年間イタリアンレストランに勤めたこともあるとは驚きです。
フォーシーズンズさんに転職したきっかけは何だったんですか?
沼田:ロードランナー時代の知人が当社の代表である山下勝彦の友人で、ぼくのことを紹介してくれて社長から声をかけてもらいました。
自分たちで作って販売までできるところが魅力で、6年前に転職して現在に至ります。
書店ナビ:プロダクトマネージャーのお仕事内容は?
沼田:一言で言うと「何でも屋さん」。社内デザイナーのアイデアを聞いて、それを実現するために細かく詰めていくのがぼくの仕事です。
海外の縫製スタッフさんたちに説明するときは日本から折り紙を持っていってホチキスとハサミで「ほら、ここをカットしてここをこう縫えばできるよね」なんて工作もします(笑)。
もちろん店頭でお客様と直接お話しできるのも大好きです。
ロードランナー時代は1人ひとりの顧客を念頭に置いた丁寧な積極で店・個人ともに社内1位の売上を達成。
IMVERのテイラードジャケットの内ポケットは出し入れしやすい縦の切り込み。袖の飾りボタンもわずか1mmが重なるデザイン。ディテールを知れば知るほど欲しくなる。
沼田:『WWD JAPAN』は記事の切り口が多面的で勉強になりますし、ストーリー性もあるので読んでいてとても面白い。ビジネスキュレーションサイト『NEWSPICS』でも取り上げられるくらいですから、やはり鮮度がいいと感じます。
書店ナビ:FourSeasonsDesignLab.さんではスノーボードウェアの「43DEGREES」やゴルフウェアの「unitement」など着たいシーンごとにブランドを展開。最後にあらためて札幌スタイルに認証されたタウンウェア「IMVER」のピーアールをお願いします。
岩佐ビル1階の店頭では機能性とファッションが両立するバッグ類も充実。
沼田:ぼくたちが目指しているのは買ってくださったお客様にたっぷり愛情を注いでもらい、その一着を長く着たおしていただくこと。
素材もデザインも時代を越えていけるクオリティーに徹底的にこだわっているので、いつか息子さんがお父さんのクローゼットを開けたときに「オヤジ、センスいい服持ってたんだ」と言われるような一着をお届けてしているつもりです。
自転車に乗られるお客様のアイデアを反映させたモッズコートも作りました。いまのこの事態が落ちついたときはどうぞお気軽に店頭にいらしてください。お待ちしています。
書店ナビ:沼田さんの生い立ちと一緒にファッション誌の歩みも懐かしく振り返ったフルコース、ごちそうさまでした!
北海道苫小牧市生まれ。宮島学園北海道ファッション専門学校卒業後、毛皮専門店や紳士服、ジーンズショップ、イタリアンレストラン等を経て2014年に株式会社フォーシーズンズに入社。プロダクトマネージャー。
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