[2020.3.16]
新型コロナウイルス感染症の一刻も早い収束が待たれるいま、「こういうときこそ、読んでほしい本を紹介してもらうのはどうだろう?」と立ち上げた北海道の読書人たちによる選書企画が、「いま、あなたとシェアしたい この本を このことばを」です。
2020年3月9日月曜に一週目の選書10冊を紹介したところ、FacebookやTwitterでたくさんシェアしていただき、あたたかい共感・応援コメントもちょうだいしています。ありがとうございました。
今週は第二週目。掲載は五十音です。かわいい野鳥図鑑から企業小説、「今!読まないでどうする!」のサスペンス巨編まで今週の10冊、ぜひご覧ください。
[選者]ご自宅の蔵書は2000冊以上!北菓楼企画部課長の大野重定さん
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[コメント]
言葉には偉大な力がある。しかしいくら想いがあっても、それをどう話せば良いかというとなかなか難しい。当書はOLがスピーチライターになるビジネス小説。素晴らしい感動作品で、スピーチの勉強にもなる。それも”目から鱗”レベルに。この本をぜひ沢山の人に読んで頂きたい。想いをもっとうまく伝えられるようになるだろうから。この本の中から一つ、勇気をもらった台詞を紹介。「困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙が止まっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している」
[もうひとこと]
[選者]FBでもおすすめ本を発信中!読書家のグラフィックデザイナー岡野康弘さん
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ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し
せめては新しき背廣をきて
きままなる旅にいでてみん。
てな感じで、詩人の萩原朔太郎は抒情をスマートに言ってまして、
大好きな詩でかつて苗穂駅ホームにも掲げられてましたが、
それとは逆に、まあ、この爺さんの減らず口に次ぐ減らず口。
あーだこーだに次ぐあーだこーだ。それはもうひどいもんで。
ところが僕の中のヒマラヤ山系が
うっかりそこに抒情を受け取っちゃうのだから面白い。
[もうひとこと]
[選者]外国文学や自費出版に強い札幌の柏艪舎の編集者、可知佳恵さん
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アフリカのある村ではマラリアが定期的に流行り、たくさんの方が亡くなるのですが、1/4の割合でマラリアにかかりにくい遺伝子を持つ人が生まれています。そして同じ1/4の割合で鎌状赤血球症による貧血で若くして亡くなる人も生まれてきます。研究を進めていくと、マラリアにかかりにくい遺伝子を持つ人が生まれるためには、鎌状赤血球症の人も必ず生まれてくるということがわかり、健康な3/4の人たちのために苦しむ「弱者」が私たちにとっていかに必要な存在であるかを、この本が伝えてくれます。
今回のような未知の伝染病を乗り越える遺伝子を作るために、病気や障がいに立ち向かってこられた人々がいる。そのことに思いを馳せる時間を持っていただけたら、と思います。
[もうひとこと]本書は同名のドキュメンタリー映画のムック版です。映画は各地で自主上映会が続いています。
ドキュメンタリー映画「1/4の奇跡~本当のことだから~」
[選者]浦河町で自宅本屋さんを毎週月曜営業中「森の六畳書房」店番の櫻井けいさん
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こんな時だからと家にこもっていないで、近くの公園へ出かけて、かわいい鳥たちに会ってみましょう。
暖かい居間でこの本によるバードウォッチングを楽しんでから、出かけてみてください。
きれいな写真に詳しい説明が添えられています。パラパラと思いつくままに眺めても楽しめる図鑑です。
タイトルに「さっぽろ」と、ありますが、札幌以外のところでも十分に役立つ本です。
バードウォッチング初心者も上級者も楽しめる工夫がいっぱいで、当店のような小さなところでも10冊ほどは売れています。
[もうひとこと]
[選者]氷室冴子青春文学賞も応援!岩見沢市立図書館長の杉原理美さん
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オックスフォード大学史学部大学院生の主人公は、歴史研究のためのタイムトラベルで疲労困憊。指導教官によりのどかな19世紀の英国ヴィクトリア朝へ派遣されるが、予期せず時空連続体の存亡に関わる使命を負ってしまう…SFにして本格ミステリの風格もあり。さらに”恋あり冒険あり不可能状況ありタイムパラドックスあり涙なしのドタバタ劇”(訳者あとがき)と、いろんな味が楽しめるお得感満載の作品。
珍妙なタイトルは、ヴィクトリア朝のユーモア小説家ジェローム・K. ジェロームがテムズ河での川遊びをもとに著した『ボートの三人男』の副題から。
[もうひとこと]
本作、ハードカバー2段組542頁、文庫版で上下巻1000頁近くと、たいそう長い。ぜひ、ボートでゆるゆる河を漕ぎ進むように長く長く、楽しんでくださいませ。
[選者]卒業式の日に生徒からサプライズで誕生日を祝ってもらった札幌新陽高校の教諭、高橋励起さん
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[コメント]
松浦弥太郎さんが、ウェブサイト「くらしのきほん」に夜間限定で投稿したコンテンツを書籍化したものです。私は一昨年、弥太郎さんと一緒に仕事をさせていただく機会に恵まれました。当時学校の広報担当責任者として学校パンフレットをつくっていた私。他の学校ではつくれないパンフレットをつくったという自負がありました。はじめて弥太郎さんとお会いしたその日、言われた言葉を忘れません。
「僕はプロです。僕があなたを雇っていて、こんなパンフレットをつくったらクビです」。
全身に稲妻が走り、嫌な汗がどっと吹き出しました。この人は、本物だ。この人に、中途半端なものは通用しない。社交辞令はなく、まっすぐに向き合ってくれる。この瞬間から弥太郎さんのファンになってしまいました。
本書の「僕の声」というお話に、こう書いてあります。
「人からしてもらって嬉しいこと。人からされて嫌なこと。
僕はこのふたつの感受性を人一倍高めたいと思っています。そして、このふたつについて人一倍、想像力を働かせたいと思っています。もっと高めて、もっと働かせると、正直、自分がとてもつらくなるのはわかっているけれど、仕事というか社会生活、家族との関係にしても、がんばるってこういうことじゃないかなと思う。感謝のありがとうをあらわすって、こういうことじゃないかなと思う。」
[もうひとこと]
ふと眠れなくなる夜。暗闇で何かを掴もうと手を伸ばし、焦る気持ち。そんなとき本書を読むと物事の本質に少しだけ触れた気になり、心がスッと落ち着きます。
[選者]鉄道と旅行のプロフェッショナル、北海道鉄道観光資源研究会代表の永山茂さん
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[コメント]
近畿日本ツーリストの創業者、馬場勇の壮絶な一生を描いた本書は当時旅行業界を志す私たちの”バイブル”だった。特に心に残る言葉は「憂いは肺を取り、怒りは肝を取り、恐れは腎を取り、思いは脾を取り、癇癪は肝積を取る」「頭は体のバランスをとるために、ついとるんじゃないぞ」。
今未曽有の危機に直面している若者たちに、いかなる困難に遭遇しても乗り越えていける、そんな心の支えになる一冊としてぜひ読んで欲しい。
[もうひとこと]
日本最大の旅行会社・交通公社(現JTB)を追って戦前から近畿日本ツーリストと日本旅行は二位争いを続けていた。馬場の臨終を描いた最終場面は昭和49年1月11日。近畿日本ツーリストが日本旅行に二位の座を明け渡した年が8年後、奇しくも私が日本旅行に入社した昭和57年であった。
[選者]専門書はこの人に聞く!函館蔦屋書店株式会社専門書担当の福島誠さん
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[コメント]
昨年亡くなった橋本治さんは、いろいろなことについて「なぜそれがそうなっているのか」と考えぬく人でした。小説の執筆や評論、古典の翻訳、古典芸能、イラストレーターとさまざまな分野で仕事をしてきた橋本さんが「ビジネス書」として書いたのがこの本です。
橋本さんの説明はあっちこっちと横道にそれながらどんどん勝手に進んでいって、最後には聖徳太子以来の儒教の伝統を例にとりながら、「あ、それ?」という結論に達します。
橋本さんの議論を面白く思える人は日本では少数派だと思いますが、その人たちにとっては世の中の見え方が変わって、居心地がよくなると思います。お試しください。
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[選者]「森脇マジック」と呼ばれる質の高い指導力でスキーやバレエのレッスンを行う名トレーナー、森脇俊文さん
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[コメント]
初版が1937年(83年前!)にも関わらず未だに売れ続けている、私の生き方の基盤になっている本。大怪我で入院したときにごっそりいただいた本の中に入っていました。
本書は過去の自分の行動との照らし合わせや、これから行う行動の修正に大変役立っていて、それが今も続いています。なかでも私が好きなエピソードは若い整備士とパイロットの話です(読むたびにグッときますし、このパイロットのような振る舞いをしようと心がけています)。
エピソードが多くて読みやすいですし、きっとみなさんにも響く話があるはずです。
過去に読んだことがある人も「いま、ここ」で読み直すことを提案します。素晴らしい本は自分の成長によって気づくポイントが変わり、新しい発見をもたらしてくれるものだから。
[もうひとこと]
[選者]道産子作家からの信頼も厚い書店員、文教堂北野店の若木ひとえさん
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[コメント]
上下巻のうち、下巻の180ページから182ページには、最も大切な事柄が描かれています。権力に対する信頼が揺らいでいる今こそ、シェアしたいという思いは切実です。
日々の出来事を知るために私たちは、「報道」を信用しています。ただこの報道というものに対する信頼がもしも揺らいだら、どうなるのでしょう。報道する側に「これは報じても大丈夫だろうか」という権力への恐怖というものがあった場合…考えるだけで恐ろしいことです。
いろいろな読み方ができると思います。政治のこと、戦争のこと、社会のこと。
何よりも、今の社会のあり様を、自分のこととして考えてみてほしいです。
今!読まないでどうするの!
単行本の時から、ずっと「今」と言い続けてます。社会がちっとも良くならないから。
[もうひとこと]
「中学生のみなさんへ」という文庫のミニフェア開催中です。
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