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第319回 喜久屋書店ブックジャム すみよし店 店長 東山 美英子さん

5冊で「いただきます!」フルコース本

書店員や出版・書籍関係者が
腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。
おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。
好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ

Vol.85 喜久屋書店ブックジャム すみよし店 店長 東山 美英子さん

千歳市住吉町にある喜久屋書店ブックジャムすみよし店にうかがった。


[本日のフルコース]
千歳の書店員が毎日の元気をもらう
「肩の力が抜ける生き方指南本」フルコース

[2017.4.10]



書店ナビ 喜久屋書店ブックジャムに勤めて20年以上、現在はすみよし店配属の東山店長にフルコースづくりをお願いしました。
テーマの「生き方指南本」、最近はご高齢の執筆者の本が人気ですよね。
東山 ええ、当店でもコーナーをつくると立ち止まるお客様が多いです。私自身、もとは何かと考えこむ性格で、そこを変えたいなと思って生き方指南本のページをめくっていたので、買っていかれる方のお気持ちはよくわかります。

[本日のフルコース]
千歳の書店員が毎日の元気をもらう
「肩の力が抜ける生き方指南本」フルコース


前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書

ずっと楽しく生きる
PHP研究所

人生がラクになる15のヒントを心屋仁之助、下重暁子、成毛眞ら各界の専門家がやさしく解説。




東山 これはもう、「ずっと楽しく生きる」というタイトルそのものが本の中味を一言で表しています。心理カウンセラーの心屋仁之助さんほか、いろんな方が「毎日を楽しくする方法」「豊かに暮らすためのヒント」を紹介していて、自分で気になったところだけ拾い読みするのもありだと思います。
エッセイストの下重さんが掲げる『持たない暮らし』も実行するとなると大変ですから、そこはうまく自分流にアレンジして(笑)。「参考にする」くらいの気持ちで読むといいかもしれません。




スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本

役に立たない人生相談
佐藤愛子  ポプラ社

人生に起こることは誰のせいでもなく、自分で背負うしかない。愉快痛快!人生問答。







書店ナビ 『血脈』や『晩鐘』などの傑作を生んできた現役作家の佐藤愛子さん。卒寿を超えたいま、『九十歳。何がめでたい』など老境を綴るエッセイが大ヒットし、各書店の人気ランキングの常連です。
東山 どんな相談も一刀両断なので、読んでいて気持ちがいい。「好きな人を一人に絞れない」なんていう相談者は普通、叱ってやりたくなるところですが、佐藤愛子さんは「そのうち、もてなくなるから」とバッサリ(笑)。
「濡れタオルをそのへんにほうりなげる夫をどうにかしたい」というお悩みにも、「人を変えることはできない」といきなり核心をついてきます。
本当、人を変えることはできないんですよね。自分を変えるしかない。だから難しい(笑)。



魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく

2800人を看取った医師が教える 人生の意味が見つかるノート
小澤竹俊  アスコム 

今日一日を大切に過ごすことで人生は変わっていく。著者の質問に自分を書き出していくノート。  



東山 ひところエンディングノートが流行りましたが、これはまたちょっと違うタイプ。「エンディングノートに手を伸ばすにはまだ抵抗感がある」と思っていた方も、質問する著者がベテラン医師であるという安心感に背中を押されて、書いてみようかなと思えてくるのかもしれません。
小澤先生の『今日が人生最後の日だと思って生きなさい』もいい本ですよ。





肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本

のびのび生きるヒント
武田双雲  青春出版社

頑張らない、比べない、競わない。人生は「楽」でうまくいく!心と時間に余白をつくる新しい生き方の教科書。



書店ナビ 著者の武田双雲さんは1975年熊本生まれ。母は書道家の武田双葉。NTTに3年勤めたのち、書道家として独立。映画や大河ドラマの題字を手がけるほか、パフォーマンス書道も多数。こういう生き方指南本を50冊近く出しているとは知りませんでした。
東山 テレビで見ているとやさしい話し方で、素直に好感を持てました。本書のキーワードは「のびのび」。うまくいかないときって”いっぱいいっぱい”になりがちですが、そういうときこそ力まずにのびのびふるまえば、事態も自然と好転する。
目をつぶって1分間深呼吸する「のびのび瞑想」なども紹介していて、試してみたくなりますよ。




デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで

考えすぎない
本多時生  アルファポリス

食べすぎ・飲みすぎ・働きすぎ…なんでも”すぎ”はダメってことですね。新年度からラクに過ごしませんか?



東山 まさに私自身のテーマでもある「考えすぎない」方法を紹介してくれる本書が出たのは、2011年のこと。流行りすたりが多いジャンルの中でひそやかに売れ続けているロングセラーです。
「慢性的な問題について考えない」とか「人のことを考えない」など、言われてみればそのとおり、自分ひとりで簡単に解決できそうにないことにまで頭を突っ込んでいることに気がついて、「や~めた」と思えるとすごく気がラクになります。

文中には日暮里や根津、湯島のおいしいお店が登場。栞と春一郎が過ごした時間を追体験できる地元マップ付き。



ごちそうさまトーク 人生をラクにする拾い読みのすすめ

書店ナビ 今回のフルコースを振り返ると、生き方指南本はやはり「タイトルが命」ですね。いかに一言で読者を惹きつけるか、共感させるかが売れ行きに響きそう。
東山 ああ、そうかもしれませんね。勇気や元気をもらえそうなタイトルにはつい手が伸びてしまいます。
繰り返しになりますが、私個人的にはこういう指南本をマジメにすみずみまで読み込んで、自分の人生と照らし合わせて…というよりも、楽しくできそうなところだけ拾い読みしていくのがおすすめです。
肩の力をぬいて、毎日笑顔で過ごせるのがイチバンですものね!
書店ナビ まったく同感です。本のヒントを上手に自分の毎日に取り込めるといいですね。読後は自分にもひとにもやさしくなれそうなフルコース、ごちそうさまでした!


●喜久屋書店 ブックジャム すみよし店














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