5冊で「いただきます!」フルコース本
書店員が腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。
おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。
好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ
Vol.7 宮脇書店東札幌店 店長 高橋 正敏さん
[2015.7.13]
書店ナビ | 東区のイーアス札幌1階に入っている宮脇書店さんには名物コーナーがあります。その名も「店長vs文庫担当 いちおし文庫対決」! 発案者である高橋正敏店長、その後の闘いぶりはいかがですか? |
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高橋 | 10回をひと区切りにした1stシーズンが終了し、現在は2ndシーズンの12回戦に突入しています。今のところ6対5で、かろうじて私が優勢ですが、ほぼ互角の勝負が続いています。 |
書店ナビ | この対決シリーズで日頃から選書力を鍛えている高橋店長が今回考えてくださったフルコースは、「北海道」にまつわる5冊だとか。 |
高橋 | ちょっとストレートすぎるかな、とも思いましたが、僕自身が札幌出身の道産子なので地元愛をこめて考えさせてもらいました。 |
宮脇書店東札幌店名物「店長vs文庫担当 いちおし文庫対決」。
売上冊数が随時反映され、劣勢のほうが巻き返すこともあるという。
前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書
札幌学
岩中祥史 新潮社
私たち道民は日頃意識していないかもしれませんが、北海道には本州と違う文化や魅力がいっぱいあります。合理的だといわれる“結婚式の会費制”や“カツゲン”だとか(笑)。女性が自立しているところ、なんていうのも北海道らしさでしょうか。
書店ナビ | カツゲンが北海道だけのもの、って結構知らない道民が多いですよね。 |
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高橋 | 自分もそれを知ったときはショックでした(笑)。この本は店としても3年くらい前から仕掛けており、コンスタントに売れ続けています。札幌出身の自分も楽しく読めた“札幌あるある”が満載の前菜らしい一冊です。 |
スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本
北海道謎解き散歩
好川之範、赤間 均 新人物往来社
歴史的な側面から北海道をより深く知ることができる一冊。「北海道」の由来や坂本龍馬との関係など、知らなかった北海道へと道案内してくれます。
高橋 | 教科書的には北海道の歴史って函館戦争とかの幕末からしか出てきませんが、それ以前からも続いてきた人々の営みを“謎解き”感覚で教えてくれます。読み応えがあるで、出張の移動中などに集中して読むのがおすすめ。姉妹本の『北海道の地名謎解き散歩』も面白いですよ。 |
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チェーン店とはいえ「金太郎飴」にならない店づくりに試行錯誤を続ける高橋さん。
魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく
分身
東野圭吾 集英社
北海道と東京を舞台にした医学と親子の絆を描いたミステリー。札幌、函館、旭川などなじみの深い場所が登場します。
高橋 | 主人公は互いに会ったことがない双子の女の子。片割れが函館に住んでいて、最後の謎解きの舞台は旭川になります。初版は96年で、現在90刷りを重ねていることからもわかるとおり、東野作品の中でもかなりのロングセラーです。 |
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書店ナビ | ミステリー好きの高橋さんが思う東野作品の魅力とは何でしょう? |
高橋 | もちろん犯人がわかるまでのプロットの面白さはありますが、基本は人間の愛情が描かれているところ。登場人物たちがなぜそういう行動に出たのか、その動機、ときには切ないものもある人間の感情がきちんと書かれているところだと思います。東野さんの作品を読み終えたときはいつも、大切なことを教えてもらったような気持ちになります。 |
肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本
生存者ゼロ
安生正 宝島社
北海道が未曾有の危機に陥ります。原因不明の病気で次々と市町村が壊滅。北海道は生き残ることができるのか?
書店ナビ取材班K | 僕、これ読みました! 第11回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作だと聞いて手に取りました。北海道、大変なことになってますよね。 |
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高橋 | はい、とんでもなく大変です。最初の被害現場「北海道根室半島沖の北太平洋に浮かぶ石油掘削基地」に救助に向かった陸上自衛官と感染症学者が事態の収束に向けて奔走するんですが、実際に存在する北海道のまちまちに被害が拡大していく設定です。地元の人が読めばすぐに「あ、あそこもやられたのね」とわかります(笑)。実はこのイーアスがあるあたりも壊滅しちゃいまして…というふうに想像を膨らませながら読む面白さと同時に、普段自分たちが知っている景色がプロの文章ではこういう風に表現されるんだ、という発見も楽しめる北海道本です。 |
書店ナビ | 映画化されたりしないでしょうか。高橋さんの脳内キャスティングだと陸上自衛官は誰が適役だと思いますか? |
高橋 | 確かに場面展開も早くて、パニック映画を見ているような感じはありますね。配役は…うーん…やっぱり道産子の大泉さん、かと思いましたが、ヤスケンさん! シリアスなヤスケンさんが主人公で観てみたいです。 |
デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで
櫻子さんの足下には死体が埋まっている
太田紫織 KADOKAWA/角川書店
旭川に住む「三度の飯より骨が好き」という変わり者の美女と平凡な男子高校生が難事件を解決。ホットチョコなど作中に出て来る食べ物が美味しそうです。
書店ナビ | デザート本にライトノベルが登場です。 |
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高橋 | 自分も読むまではそういう軽い気持ちだったんですが、読み始めたらなかなかどうして。キャラ設定や場面描写がしっかりしていて、シリーズ化もされている人気タイトルです。作者の太田さんは札幌出身。地元の利もあってか、道産食材がふんだんに登場します。なかでも増毛の甘エビの描写が実に美味しそうで、読んだあと現地まで食べに行きました。 |
書店ナビ | 読者を実際に動かす力があるとはスゴい!ラノベあなどるなかれ、ですね。 |
「このデザート本は『店長vs文庫担当 いちおし文庫対決』に出して勝利を収めたこともあります」
ごちそうさまトーク Do you know HOKKAIDO?
書店ナビ | フルコースを選び終えてご自分で気づいたことはありますか? |
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高橋 | ミステリーと歴史モノ好きという自分の趣味が全面に出たコースになりました。北海道の人は意外と北海道のことをまだまだ知らないんじゃないか、という思いもあって選んだ5冊なので、これを機にお手に取っていただけるとうれしいです。 |
書店ナビ | 北海道がもっと好きになるフルコース、ごちそうさまでした! |
新刊の 配本つかない 厳しさよ
詠み手 日ハムファン
大手書店を除く全書店スタッフの気持ちを代弁した本音の句。北海道のホームチーム、日ハム関連本くらいはせめて多めに北海道にまわしてほしい。書店から盛り上げる応援もあるのだから。
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