2017年9月に全国各地で展開された「北海道ブックフェス2017」
[2017.10.16]
今週から3週連続!イベントレポート&フルコースも掲載
「まちで本とあそぶ9月」をキャッチフレーズに、今年8回目を盛況のうちに終了したブックイベント「北海道ブックフェス2017」。
飲食店やアパレルショップなどが店内に書棚をつくり、”本屋さんごっこ”を楽しむ「ミセナカ書店」や古書&自作本マーケット、朗読イベント、ビブリオバトル、トークなど、さまざまな本にまつわる行事が開催されました。
2010年に有志が立ち上げたこのイベントは、当初「札幌ブックフェス」の名称でしたが、2014年から全国各地を会場とする「北海道ブックフェス」に発展。
実行委員長である札幌のブックコーディネーター尾崎実帆子さんをはじめ、「本でつなぐ街のカタチ」を広めようとする本好きの輪に、今年は北海道書店ナビも入れていただきました!
そこで今週から3回にわたって北海道ブックフェス関連の記事を投稿します。
●10月16日月曜更新 イベントレポート
9月23日土曜終了 植本祭 まちライブラリー@千歳タウンプラザ
●10月23日月曜更新 イベントレポート
福岡市の有名書店「ブックスキューブリック」大井実さんを迎えて
9月22日金曜終了 トークイベント「福岡×北海道 本とまちの未来」
9月23日土曜終了 アルテ〇〇の学校 第11回マルマルは(本)(屋)
●10月30日月曜更新 5冊で「いただきます!」本のフルコース
「ブックスキューブリック」大井さんにつくっていただきました!
「独立・起業におすすめの本」フルコース
どうぞお楽しみに!
まちライブラリー@千歳タウンプラザ「植本祭」トーク
北海道書店ナビでも紹介したことがあるまちライブラリー@千歳タウンプラザは、2016年12月に千歳市幸町にオープンした民間図書館。
寄贈された本の貸出しだけでなく、誰でも気軽に企画・参加できるイベント開催も活発に行われています。
●まちライブラリー@千歳タウンプラザの詳しい紹介記事はこちら。
今年は北海道ブックフェスにも参加し、関連企画として9月23日土曜に「植本祭」を開催しました。
第一部「本のある空間づくり」と題したクロストークに、まちライブラリー提唱者である礒井純充(いそい・よしみつ)さんと、北海道書店ナビライターの佐藤優子(私です)、そして店舗やオフィスなどのセルフリノベーションをプロデュースする「KUMIKI PROJECT」代表の桑原憂貴さんが、自分たちの活動を発表しました。
はじめにマイクを持たせていただいた「北海道書店ナビ」ライター佐藤の発表内容は、以下の通りです。
本サイト「北海道書店ナビ」は、出版社と書店をつなぐ取次会社コア・アソシエイツ(札幌本社・1981年設立)が、2010年10月からスタート。
道内各地の書店やブックカフェなどを取材・紹介してきましたが、中小書店の相次ぐ閉店や大型・複合型書店の進出を目の当たりにし、切り口の異なる新たな企画を考案。
2015年5月から本を料理のフルコースに見立てて、ワンテーマで5冊を選書していただく『5冊で「いただきます!」フルコース本』を始めました。
●はてなブログ「5冊で「いただきます!」フルコース本」
http://syoten-nav.hatenablog.com/
これまでにフルコースづくりをお願いした方々は、書店員や出版関係者あるいは専門分野をお持ちのスペシャリストたち。毎回「その人にしか作れない5冊セット」のお話をうかがってきました。
100本以上の連載を続けていくうちに、実はこの企画は単なる選書紹介ではなく、選書を通して人となりを知る「人物紹介」であるということにも気づかされました。
2017年6月には高校生を対象にしたフルコースワークショップも行った。
「本のある空間」には必ず「人」がいます。スライドの終盤では、北海道で「本のある空間」を生み出す人々についても触れました。
2017年8月に亡くなった元くすみ書房の久住邦晴さんや2017年5月に札幌市中央区で詩人の谷川俊太郎氏公認の私設記念館兼カフェ「俊カフェ」を開いた古川奈央さん。
シャッター街だった江別市大麻銀座商店街はいま、本の力で活気を取り戻そうとしています。
北海道書店ナビはこうした方々への取材を通して、これからも北海道の読書人たちを応援していきます。
震災後の陸前高田市から始まった”Doing It Together”
続けて活動を発表したのは、KUMIKI PROJECT代表の桑原憂貴さんです
●KUMIKI PROJECT 公式サイトはこちら
http://kumiki.in/concept/
KUMIKI PROJECTは、自作の日曜大工を意味する “Do It Yourself”=DIYではなく、「ともにつくるを楽しもう」という”Doing It Together”=DITを提唱。
国産DIYルームキットの開発・販売や各種DIYプログラムの企画・開催を行っています。
群馬県生まれの桑原さんがKUMIKI PROJECTを始めるきっかけは、2011年3月11日でした。東日本大震災後、「奇跡の一本松」で知られる岩手県陸前高田市を訪れ、地元の杉を使った商品化を模索し始めたそうです。
その後2013年6月、陸前高田市の方々と「ともに」21坪の集会所を建設したことが、プロジェクトの始まりとなりました。
「震災から2年というのはちょうど、自分ではどうしようもない無力感を覚える時期。家の外で夢を語っても、話し合いが終われば仮設住宅に帰る現実が待っている。そのギャップに肩を落とす皆さんの顔を見て、今こそできることを形にしなければ、という気持ちになりました」
この集会所建設を通して「みんなでつくると笑顔になる」ことに手応えを得た桑原さんたちは、以降「地元の木材を使って、できるだけお金をかけずに、みんなで仲良くつくる」プログラムやワークショップを全国各地で展開しています。
DITの事例を幾つも紹介してくれた桑原さん。「素人の自分たちが手を動かしたあとは職人仕事のすごさも想像できるようになる」という。
「自分たちで作り上げた手間が空間への愛着になり、そこに集まった人同士の関係が安心を生む。なかには民家解体ワークショップで一緒にお昼を食べているうちにお手製のカレーが絶賛され、周囲に背中を押されて解体後リノベーションした古民家でカレー店を開いたご夫婦もいます」と桑原さん。
「空間をつくることが、人の未来をつくることにもつながる」事例に、会場の皆さんが聞き入っていました。
「私もやってみた!」まちライブラリー体験者の発表も
まちライブラリー提唱者である礒井さんは、全国に500カ所以上広がる活動を紹介。
昨年12月に開館したまちライブラリー@千歳タウンプラザは、主だった店舗が閉店していた商業施設をまちライブラリーとして再生したものです。
全国のまちライブラリー中、800平米の広さは日本一。当初6000冊からスタートした蔵書数はハイスピードで増え続け、1年を待たずしてすでに1万3000冊を超えています。
これまで開催された読書会やパソコン教室などのイベント数326件は、全国でもトップクラス。来館者に中高生が多いことからも、同館が千歳のコミュニティスペースとして浸透し始めていることがうかがえます。
まちライブラリー提唱者の礒井さん。毎月開かれるサポーター会議には東京から駆けつける。
民間図書館であるまちライブラリーの特徴は、個人宅や自営の職場など誰でも自分が主宰者となってマイクロライブラリー(ミニ図書館)を開くことができる仕組みにあります。
礒井さん、桑原さん、書店ナビらの発表後は、千歳市内で「まちライブラリー@ゆうまい絵本文庫」を開いている石橋光子さんが登場。開館体験談を語りました。
●まちライブラリー@ゆうまい絵本文庫
http://machi-library.org/where/detail/2896/
直筆の原稿を丁寧に読み上げていく石橋さん。「ゆうまい絵本文庫」の名称は、自宅近くに流れる勇舞川から取ったそう。
まちライブラリー@千歳タウンプラザをはじめて見たとき、「カルチャーショックを受けた」という石橋さん。
「新しい設備や信じられないような規模にも感動しましたが、本を通じた交流の場にしようという目的にも感銘を受けました」
オープン後は誰でも参加できるサポーター会議に出席するようになり、礒井氏がそっともらした「千歳タウンプラザに続くまちライブラリーがまだできていない」という一言に思わず奮起し、名乗りをあげたといいます。
「二人の子どもを育ててくれた、自宅に眠っている絵本は私の人生の宝物」。自宅の六畳一間に置く、絵本展示にぴったりの白いラックも見つかり、100冊からスタートした蔵書は現在、寄贈を含め242冊に増えました。
来館者ゼロの日もあるそうですが、礒井さんに言われた「自分の好きにやればいいんですよ」という励ましを胸に、地道に来館を呼びかけています。
「まちライブラリーを始めてから、友人から『あなた、明るくなったわね!』と言われるようになりました」
ほかにも地元千歳の歴史や自然地理を学ぶイベントを次々と企画する石橋さんの姿は、まちに住まう人々が「学びあい」「縁」を深めていく「学縁(ガクエン)」の空間、まちライブラリーの精神をそのまま体現しているようなもの。
心のおもむくままに一歩前に踏み出した石橋さんの行動力に、大きな拍手が送られました。
石橋さんの左にいる男性は「まちライブラリー」開設を計画中の久保仁宣さん。
次のスピーカーは、石橋さんのあとに続くのではと期待されている室蘭の久保さん。「まだ具体的なことは何も決まっていませんが」と断りつつ、飲食店を営むかたわら「妄想を育んでくれる本をツールに、お客様とコミュニケーションできる場を作れたら」という率直な気持ちを明かしてくれました。
それを聞いたKUMIKI PROJECT桑原さんは「まちライブラリーの開設はどこからが始まりなのか、と考えたときに、伝えたいことがある時点で久保さんのまちライブラリーはもう始まっている気がします」とエールを送ります。
礒井さんもそれに賛同し、「『自分で何かやってみたい』と思っている人の背中にそっと手を置く」まちライブラリーの役割をあらためて表明していました。
こうして約2時間にわたるクロストーク「本のある空間づくり」は終了。書店ナビ取材班はこのあと次の取材があるため先に失礼しましたが、まちライブラリー@千歳タウンプラザの「植本祭」は、さまざまなイベントが企画されている第2部へと続いていきました。(詳細は下記の公式サイトでご確認ください)。
トークにご来場いただいた皆様、ありがとうございました。
高校生・大学生を対象とするフルコースのワークショップに関心がある方は、お気軽に下記までお問い合わせください。
y-aso@core-nt.co.jp 担当:麻生
●まちライブラリー http://machi-library.org/
●まちライブラリー@千歳タウンプラザ http://machi-library.org/where/detail/2437/
北海道千歳市幸町4丁目30
TEL 0123-25-3544
開館時間 毎日10:00~20:00
*施設営業は、千歳タウンプラザの営業日時に準じます
次週10月23日月曜更新は、
九州・福岡市の書店「ブックスキューブリック」
大井実店長のトークイベントレポートです!
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