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第219回 函館蔦屋書店

JR函館駅でタクシーに行き先を告げると、「ああ、あのでっかい本屋さんね」とすぐに車を出してくれた。2013年12月の開店から約1年半。2000坪の圧倒的な空間と豊富な品揃えを誇る “みんなの居場所”函館蔦屋書店、二度目の取材にうかがった。[2015.4.27]

[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=o4SRPji3bRI]

2015年3月27日、酒場詩人・吉田類さんのトーク&サイン会密着取材で1年ぶりに訪れた函館蔦屋書店。駐車場の埋まり具合を見ると、地元での順調な浸透ぶりがうかがえた。
この日は土曜だったこともあり、1階の「キッズパーク」にはちびっこ達が大集合。設計時に思い描いていたという「室内公園のイメージ」どおり、いくつもの笑い声が広がっていた。

2013年12月にオープンした函館蔦屋書店。

2013年12月にオープンした函館蔦屋書店。
2000坪の広さと豊富な品揃えで全国から注目を集めた。


かわいい遊具

店の外にもかわいい遊具が設置されている。


2000坪の店内では、書籍の他に雑貨・文具・コスメなども取り扱い、カフェやレストラン、モバイルショップ、コンビニ、映像・音楽のレンタルやゲームコーナーも幅広く展開。
座って読めるスペースも多く、取材時の3月末にはまだ火が入っていた暖炉のそばでゆっくり本を読む、なんていう北国らしい時間を過ごすこともできる。

暖炉の炎

まだ肌寒かった3月の取材時、
暖炉の炎が視覚的にも暖かさを運んでくれた。


実はこの暖炉、本物の薪を使って火をおこしているため、ちょっとしたコツが必要になる。その暖炉係も兼任しているのが、今回ご登場いただいた函館蔦屋書店コンシェルジュの福島誠さんだ。

1階の雑誌売り場「マガジンストリート」から左右に枝分かれしている専門書の「小部屋」は全部で7つ。各小部屋にコンシェルジュがおり、福島さんは「宇宙・科学」の小部屋を担当している。

マガジンストリート

1階を貫く「マガジンストリート」は全長約100m。
そこから「料理」「歴史」などの小部屋に枝分かれしていく。


「宇宙・科学」の小部屋

福島さんが担当する「宇宙・科学」の小部屋。
“センセイの書斎”におじゃましているような気分になる。


「宇宙・科学」の小部屋のコンセプトは“円環型”。「宇宙が出来てから人類がいまに至るまでの出来事」に沿って本が並べられている。
端から順に見ていくと、始まりは「137億年前のビッグバン」から。次に「銀河系、太陽系、地球の始まり」「生物が発生したのちの進化論、生命論、遺伝、分子生物学」、そこから「動物・植物、人間の脳」「科学・物理」と進み、物理の本の最後は「素粒子・ビッグバン」という切り口で再び先頭の「宇宙」につながるという、美しいストーリーテリングが完成されている(この様子はトップの動画でも収録。最後に福島さんからの味わい深いメッセージもついている)。

宇宙・科学の世界が円環型に構成されている小部屋。
内部の様子がよくわかる解説動画も必見!


透明標本

取材時には「透明標本」のコーナーも発見。


これほど見事な構成力を持つコンシェルジュの福島さん。やはり前職は大手書店を定年まで勤め上げたベテラン書店員だった。
40年近いキャリアで培かってきたモットーは、「お客様がお探しの本をできるだけ調べて、最終的な答えを提供すること」。

過去には「警備の勉強がしたい」という問い合わせに対して北海道警備協会が出版している教材を教えるなど、通常の書店に並ばない本がどこにあるかまでを把握する“本探しの最後の砦”のような役割を果たしてきた。

定年退職後、函館蔦屋書店開店の知らせを聞きつけ、「新しい書店を一から作り上げる」面白さに惹かれて、店頭復帰を決意。
「若いスタッフがいろんなことにチャレンジしている現場で、私は後ろにこぼれてきた球を拾う役割でしょうか」と笑う福島さんの存在が、同僚の方々にとってどれだけ心強いことだろう。

「本という素材は同じでも担当者の編集力によって打ち出し方が変わる」という言葉どおり、「宇宙・科学」の小部屋の棚づくりは「著者と読者をつなぐクリエイティブな編集作業」のお手本そのもの。
知の小宇宙で見る人を楽しませている。

イベントを展開中

函館蔦屋書店では毎週多彩なイベントを展開中。
詳細はホームページでご確認を。


接客業向けの英会話本

観光地函館らしく接客業向けの英会話本も充実している。





Basic information
外観

住所 〒041-0802
北海道 函館市石川町85番1号
電話番号 0138-47-2600
営業時間 朝 7:00~深夜1:00
定休日 年中無休
駐車場




福島さんがセレクト! 3冊のおすすめ本

1)『150枚の画像が語る 幕末・明治の国際都市ハコダテ』(新函館ライブラリ)

150枚の画像が語る 幕末・明治の国際都市ハコダテ企画・編集・発行は、はこだて外国人居留地研究会 「第二の開港」プロジェクト立ち上げチーム。写真や古地図から函館の歴史をひも解いていく郷土本です。「あの通り、この丘にこんな歴史が?」と興味をかきたてます。観光のお供にも!



2)『世界で一番美しいイカとタコの図鑑』(エクスナレッジ)

『世界で一番美しいイカとタコの図鑑』タイトル通り、イカとタコの図鑑です。函館といえばイカの街なので。函館蔦屋書店には他にもさまざまな図鑑を豊富に取り揃えております。ぜひ店頭でページをめくってみてください。


3)フレッド・B・リクソン著、松田和也翻訳『暗号解読事典』(創元社)

フレッド・B・リクソン著、松田和也翻訳『暗号解読事典』格調高い表紙の中身は、古代エジプトからインターネット黎明期までの暗号史とさまざまな暗号の作成法および解読法がぎっしり。634ページの謎をお手元に。

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