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北海道書店ナビ  第117回 北友堂書店

書店所在地はこちらをご覧下さい。

心を揺さぶる一冊との出会いは人生の宝物。書店独自のこだわりやオススメ本を参考に、さあ、書店巡りの旅に出かけてみませんか?
こちらのお店は閉店しました。

「本は本屋で買うもの」だった時代を知る個人書店が少なくなってきた昨今、札幌の白石区北郷にある「北友堂書店」は今も頼もしい現役組。頼られすぎて「店のシャッターが下りているときは裏の自宅玄関のチャイムが鳴る」こともあったりする。[2013.4.1]

[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=b1aG-ANugag]

札幌白石区の北郷で看板を掲げる「北友堂書店」。「店を始めたのは先代です。今年62歳になる主人が小学生だったころからやってる店ですから50年は経ってますよね」。そう教えてくれたのは30坪弱の店を守り続けてきた“本屋のおかあさん”こと、佐藤恵理子さんだ。
「昔は“本屋のこわいオバサン”だったの(笑)。あるとき、すっかり大人になったお客さんが立ち寄ってくれて、“オレ、子供のころ、立ち読みの態度が悪いって怒られました”だって」。そう言いながらもきっと怒られたほうも大事にとっておきたい思い出話だったに違いない。大人が子供を叱るという意味でも昭和の残り香を感じさせるエピソードだ。

取材中、子連れの母親が入ってきた。2、3冊雑誌を選んで清算を済ませると、「これ置いといてもらえる?あとで買い物帰りに寄りますから」…え? 今なんと? 驚く取材班を尻目に当の恵理子さんは「はいはい〜」と手慣れた様子で商品をレジ脇に置き、出て行く二人を見送った。
「ん?驚いた?うちではね、よくあることなの。“これから街中までバスで行くから帰りに回収するね”っていう強者もいますよ」。さすが地元に根を下ろして半世紀。平成の今もしっかりと近隣住民の暮らしに溶け込んでいるのである。

以前は本店近くに支店を出していた時期もあったが、道路拡張工事の話が持ち上がった平成10年、自宅併設の場所に店をまとめて現在に至る。「本は本屋で買う時代」が遠ざかり、空いている棚も少なくないが、ご主人が朝8時半から夕方まで札幌市内をまわる配達が売上の半数をカバー。週に1、2度は苫小牧に住む息子さんが帰郷し、配達を手伝ってくれるそうだ。

「今日まで続けてこれたのは、なんといってもなじみのお客様のおかげです」。恵理子さんが体調不良で店のシャッターを下ろせば、裏手にある自宅玄関に「大丈夫?何かあった?」と常連客が顔を出すこともあるという。支えて支えられての老舗書店。地元密着のぬくもりを絶やさずにこれからも北郷の書店時間を刻み続けてほしい。
Store picture

店が出来てほぼ半世紀。子供だけでも買い物に来れる貴重な場所だ。



「北海道ネタや健康、長寿系の本が人気ですね」と佐藤さん。



定期購読の顧客も多数。「数年越しのお客様もいらっしゃいます」


Basic information
【  住    所  】札幌市白石区北郷3条4丁目
【 電 話 番 号】011-873-6947
【 営 業 時 間】9:00〜20:00
【 定  休 日  】年中無休

佐藤恵理子さんがセレクト! 3冊のおすすめ本

1)渡辺和子著「置かれた場所で咲きなさい」(幻冬舎)
ちょうど一年くらい前に出た本ですが、うちでもよく動きましたね。やっぱり年を重ねると、これから自分がどう“自分らしく”生きていくかが気になりますから。著者の渡辺さんは旭川生まれ。36歳という異例の若さで岡山県にあるノートルダム清心女子大学の学長(のちに名誉教授)に就任された方です。やさしい語り口と字が大きくて読みやすいところもいいですよね。
2)全国有料老人ホーム協会著「シルバー川柳2」(ポプラ社)
「誕生日/ローソク吹いて/立ちくらみ」が表紙の「1」が全国で話題になったシルバー川柳の第二弾!2001年から毎年行われている公募集です。どの句も秀逸で思わず笑ってしまいますが、これが現実なんですよね。「不満なら/犬に言うなよ/オレに言え」「お辞儀して/共によろける/クラス会」…まだまだ傑作が満載ですのでご家族やお友達との話のタネにいかがですか。
3)藤原てい著「流れる星は生きている」(中央公論新社)
著者の藤原ていさんは作家新田次郎さんの奥さんで、藤原正彦さんのお母さん。第二次世界大戦にソ連が参戦した昭和20年、夫の次郎さんと引き裂かれたていさんが幼子三人を抱え、日本の地を踏むまでの言語に絶する脱出記です。この本はね、私自身の子育てが始まったときに実家の母から「読みなさい」と渡された一冊です。いろんなことを教えてもらいましたよ。これからお母さんになる人に読み継がれてほしい“母の書”です。

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