心を揺さぶる一冊との出会いは人生の宝物。書店独自のこだわりやオススメ本を参考に、さあ、書店巡りの旅に出かけてみませんか?
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早速ですが、久住さん、2012年は書店業界にとってどんな一年でしたか。「最初にキビシイお話をしますと、業界全体で雑誌・コミックが売れない年でした。もちろん一部の例外はありますが、大型書店でも二桁数字が落ち込んでいます。特に2012年11月末は爆弾低気圧などの悪天候で北海道は3日間流通が止まったという非常に大きなダメージがありました。明るい話題は、文庫などの書籍が好調。札幌出身の円城塔さんが『道化師の蝶』で第146回芥川賞を受賞されたことも記憶に新しいですね」。
日本版「Kindle」の浸透が気になる電子書籍の行く末については「正直なところ、業界はまだ情報に翻弄されている状態。出版社の動向を探る一方で、Kindle やipadなどタブレットの進化には目を見張るものがあります。本を読むありようは確実に変わっていく」と語る久住さん。粗利が2割というリアル書店経営の厳しさを訴え続け、取次会社を通さない出版社との直取引や粗利の高い文具の併売、地元の子どもたちに読書の喜びを伝える講演会など、「できることを探る」知恵を多方向に働かせている。
「2012年のいちおしは?」と聞かれたら、迷わずこれを選びます。『永遠の0』がいまだに売れ続けている百田尚樹さんによる傑作歴史小説。出光興産の創始者、出光佐三をモデルにした物語です。上下巻あわせて約750ページの大作ですが、このエンターテインメントにはかなわない!圧倒的な面白さにページをめくる手がとまりません!
2012年は宮部みゆきさんや横山秀夫さんなどベテラン勢の動きが目立つ年でしたが、なんといっても注目株はこの原田マハさん。美術エンターテインメント『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞受賞後に書いた『生きるぼくら』では、まったく異なる世界に連れていってくれます。ひきこもりの青年と対人恐怖症の少女、一人暮らしの老女が紡ぐ、実にいきいきとした成長小説です。
書店と出版社の関係を原点に戻って考え「直取引」を貫くミシマ社は、私が今もっとも期待と希望を寄せている出版社です。本書も書店に直接足を運んでいるミシマ社だから作れたブック&書店ガイドで、全国の書店員による「この一冊」が本人の直筆とともに紹介されています。かくいう私もP22に寄稿させていただきました。北海道から11の書店が参加しているので、ぜひお手にとってご覧ください!©2025北海道書店ナビ,ltd. All rights reserved.