北海道書店ナビ 第167回 シアターキノ編
シアターキノの所在地はこちらをご覧下さい。
心を揺さぶる映画との出会いは人生の宝物。茜色クラリネット公式ガイドブックを片手にシアターキノへ出かけてみませんか?
北海道書店ナビがお勧めする映画『茜色クラリネット』応援企画のトリは、肝心の映画が公開されている劇場、シアターキノを訪ねることに。『茜色クラリネット』を含め映画と本はカルチャーの中でもとても身近な間柄。どんな映画だと関連本も売れるのか?代表の中島洋さんにお話をうかがった。[2014.3.31]
[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=VZGgsgjQ9hI]
映画『茜色クラリネット』が公開中のシアターキノに行くと、ロビーで「トニ子」着ぐるみを発見! この映画のために作られた「トニ子」は、北海道犬と屯田兵を組み合わせてできた琴似(劇中ではコトニのまち)のキャラクター。今はこうしてシアターキノに“出張”して映画の宣伝に一役買っている。
3月22日の『茜色クラリネット』公開初日にはキャスト・スタッフを務めた中高生たちが舞台挨拶に勢揃い。全21名のメンバー中、この春から高校あるいは大学に進学が決まった7人に、映画づくりをけん引した市民団体「土曜はコトニ」実行委員会の代表であり、くすみ書房店主の久住邦晴さんからお祝いの本が贈られた。「お返しに中高生たちからはその日が誕生日だった久住さんにハッピーバースデーの歌を贈りました」。キノ代表の中島洋さんが教えてくれた。
劇場前の廊下では『茜色クラリネット』コーナーが設けられ、是枝裕和監督や大林宣彦監督ら映画人からの鑑賞コメントが紹介されている。「ありがたいことに皆さんからとても高い評価をいただいています」と話す中島さん。2005年からキノ主催の映像制作ワークショップを続け、本作はいわばその集大成。規模も内容もパワーアップした完成度に胸を張る。「あとは関係者以外の人たちにも純粋に一本の青春映画として楽しんでもらえたら言うことなし。札幌で盛り上がれば秋に予定している東京での公開にも弾みがつきます。応援よろしくお願いします!」。5月23日(金)〜25日(日)は帯広で、6月には苫小牧、函館で上映が決まっている。瑞々しい中高生キャストを支えた大人キャストには、北海道出身の名バイプレーヤー斎藤歩さんや札幌の劇団で活躍する小林エレキさんら舞台組も登場。確かな演技で観客を『茜色』の世界に引きつけている。
「映画もそうであるように、本作のガイドブックは地元で子どもたちと一緒に映画制作を実現する一つのロールモデルを示すようなものにしようと決めました」。そう語る中島さんに最近の上映作品の中でパンフレットや関連本がもっとも売れた映画を訊ねると、即答で「『ハンナ・アーレント』です」という答えが返ってきた。
実在した哲学者ハンナ・アーレント(1906年〜1975年)はドイツ系ユダヤ人。第二次世界大戦中に自身も強制収容所入りした経験のある彼女が、逃亡先で捕まったナチス戦犯アドルフ・アイヒマンの歴史的裁判を傍聴し、ザ・ニューヨーカー誌にレポートを発表。その衝撃的な内容に世論は激しくハンナを非難し始める…という、かなり重厚なテーマを取り扱った『ハンナ』だが、劇場から出て来てもすぐに帰らずにロビーに貼ってあるパネルを真剣に読み込む観客が多かったことから「皆さん、“よくわからなかったけれどなんとか理解したい”という刺激を受けたのではないか」と中島さんは見ている。
「物語の最後に明快な結論が待っていてスッキリする映画や、描かれた世界にどっぷりと入り込んで共感できる映画も素晴らしいですが、見終わった後、観客に“考える作業”をさせる映画はとても貴重な作品です。そのモヤモヤを補いたい、もっと知りたいという思いから関連本に手を伸ばすお客様が多いようです」。その証拠に『ハンナ・アーレント』公開中は映画でハンナが書いたレポートをまとめた著作『イェルサレムのアイヒマン』が約4000円という価格にも関わらず200冊近く売れたという。
「これは自戒をこめて思うことですが、人間、考え込むような重たいテーマはつい敬遠しがち(笑)。でも脳は鍛えれば鍛えるほど活発化されるようですので、いくつになっても自分のハードルを高くすることが成長につながる。そういえば、本屋の久住さんが『茜色』の卒業生たちに贈った本を見て一瞬、“ちょっと難しすぎないか”と思ったものもありましたが、あのハードルの高さがきっと彼らの成長につながるはず。今思うとさすがの選書でした」と振り返る。
公式ガイドブックにもあるように『茜色クラリネット』は、中高生に映画づくりを体験してもらうという教育的な目的からもう一つ上を目指して「誰の鑑賞にも耐えうる、いい映画を皆で作る」という高いハードルを自分たちに課した挑戦の一本だ。出来上がった作品に対する評価は私たち観客に委ねられている。上映時間81分の『茜色クラリネット』は4月11日(金)まで札幌のシアターキノで公開中! 中学生以下500円、高校生800円の学生割引もあるので友達同士や家族でも気軽に楽しめる。
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受付で公式ガイドブックやトニ子グッズも発売中!
『茜色クラリネット』コーナー前で記念写真はいかが?
1998年4月24日に移転オープンしたシアターキノ。全国の映画人に愛される札幌自慢のミニシアターだ。
Basic information
【 住 所 】札幌市中央区狸小路6丁目 南3条グランドビル2F
【 電 話 番 号】011-231-9355
上映時間等は
コチラでご確認下さい。
全道各書店で発売中!『茜色』の世界をより深く知りたい人に
『中高生とまち、プロの力で映画を作る 茜色クラリネット公式ガイドブック』(コアBOOK)
2013年夏、中高生×琴似(コトニ)のまち×プロの映画人。〈地域で撮る映画制作〉の全てがこの一冊に。スタッフ・キャスト関係者50人近くの声を一挙掲載!映画によるまちおこしや映像制作の参考になる制作スケジュール「茜色カレンダー」やシナリオも採録。帯メッセージはあの是枝裕和監督!ーー「中学生たちのまっすぐな視線で撮られたこの映像に触れると「いつの間にか自分も『大人病』にかかってしまったのではないか?」という不安に襲われる。映画について、人生について大切なことを思い出させてもらいました。」