北海道書店ナビ

北海道書店ナビ  第86回 くすみ書房

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心を揺さぶる一冊との出会いは人生の宝物。書店独自のこだわりやオススメ本を参考に、さあ、書店巡りの旅に出かけてみませんか?

書店ナビ4回目の登場となるくすみ書房。「中学生はこれを読め!」など数々のヒット企画で知られる“本屋のオヤジ”こと久住邦晴さんは、北海道書店商業組合の理事長でもある。2012年7月現在の道内書店事情をうかがった。【2012.7.23】

[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=Vk9har_o6dw]

取材当日、久住さんは夏休みに向けて「高校生はこれを読め!」の棚を整理している真っ最中だった。2004年の「中学生は…」に始まったこのシリーズはくすみ書房の看板企画。現在は小・中・高をカバーした展開へと広がり、道外からも高い評価を得ている。高校生に限らず今年の夏は何を読もうか迷ったときはぜひくすみ書房へ。この店独自のおすすめ棚から周囲とはひと味もふた味も違う読書体験が楽しめる。

さて、北海道書店商業組合の理事長でもある久住さんに2012年7月現在の道内書店事情を教えていただいた。「北海道新聞社の調べによると現在道内の180市町村中1軒も書店がないところが60カ所なんだそうです。これを“3分の1も?”と読むか、残りの3分の2の地域が頑張っていると読むかは人それぞれですが、いずれにせよリアル書店には依然厳しい時代が続いています」。

もちろん業界も無策ではない。日本書店商業組合連合会は2011年から「書店再生委員会」を設置し、現在いくつかのプランが出始めている、と久住さんはいう。「各店が自力で行う改善策は限界にきています。書店の粗利率や流通システム、営業時間、労働環境…こういうことを踏まえた、より大きな視点で書店というビジネスを成立させるための根本に立ち返る時期」。そのためにも欠かせない要素のひとつが「行政からの支援」だと指摘する。
「子どもたちが自宅から走って行ける距離にリアル書店がないことの文化的な危機感」を“3分の2”である地域は真剣に受け止めてほしい。本屋のオヤジはそう願っている。

こうした大きな書店像を語る一方で、久住さんは自店でのさまざまチャレンジにも取り組んでいる。そのキーワードのひとつが「文庫」。「一見とっつきづらい専門書の棚も文庫を入れると棚の景色がやわらかくなる」ことに気づいてからは、文庫中心の棚づくりを進めている。もうひとつのチャレンジは、2012年5月から始めたくすみ書房友の会「くすくす」。年会費1万円で年4、5回手作り情報誌の「くすくす」と「特におすすめの本」が4冊(お申し込み時点/クリスマス/今年最高の本を翌年1月に/入会者の誕生日に)送られてくる。

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来年には単行本「中学生はこれを読め!」第三弾の出版も控えているというから楽しみだ。

久住さんは言う。「お客様は大型書店に本を探しに行き、小さな個人書店にはお目当てのものだけを買いに行く。じゃあ、私どものような中規模書店の役割はというと、“楽しめる本屋”になること。ここは面白い本屋だね、と言っていただける声を増やしていきたい」。
多忙な久住さんだが、最近は店にいる時間も多くなった。「棚づくりをしていると結局これが好きなんだなぁって実感します」。本屋は楽しい。そう顔に書いてある。

Store picture

文庫の“やわらかい存在感”を活かした棚づくりが進んでいる。

Basic information

【  住    所  】札幌市厚別区大谷地東3-3-20 CAPO大谷地(地下鉄東西線大谷地駅隣接)
【 電 話 番 号】011-890-0008 ‎
【 営 業 時 間】10:00〜22:00
【 定  休 日  】年中無休

久住店長がセレクト!3冊のおすすめ本

1)宮台真司著「きみがモテれば、社会は変わる。」(イースト・プレス)

社会学者の宮台さんが「なぜ今の日本はこんなにも住みづらい社会になったのか、そして我々はこれからどうしたらいいのか」を中高生向けに解き明かした一冊ですが、大人こそ読むべきでしょう。「弱者」や「地域」に関心を向けられる“きみ”こそがモテる。「私のことを大事にしてくれる」と思われる。現代社会を理路整然と解体してみせる手腕に引き込まれます。

2)瀬谷ルミ子著「職業は武装解除」(朝日新聞出版)

タイトルにある通り、彼女の仕事は武装解除、職場は世界の紛争地です。紛争の果てに武器を捨てた兵士たちがその後社会で自立していくためのプロセスを支援する、世界的にも希有なプロフェッショナルの自伝的エッセイ。彼女が来道したおりにわずかな時間ですが話すことができ、「くすみ書房さん?知っています」と言っていただけてうれかったです。店にはサイン本も置いています。

魅力的な装丁本)三島邦弘著「計画と無計画のあいだー「自由が丘のほがらかな出版社」の話」(河出書房新社)

自由が丘の一軒家を本社とする独立系出版社ミシマ社の起業からの5年間を代表の三島くんが綴るエッセイです。未借金に直販という“原点回帰”の書店は編集会議もちゃぶ台の上。誰にも負けない情熱を原動力に、なにかと呪縛が多い出版業界を生き抜いていく彼らの姿に希望を見出します。表紙をはずすと、計画線とその対極にある無計画線を記した図が表れ、間にあるのは「自由」の一言。アツイ三島くんだから実現できた5年間の足跡が詰まっています。

http://www.youtube.com/watch?v=Vk9har_o6dw

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