北海道書店ナビ

北海道書店ナビ 第106回 くすみ書房大谷地店

書店所在地はこちらをご覧下さい。

心を揺さぶる一冊との出会いは人生の宝物。書店独自のこだわりやオススメ本を参考に、さあ、書店巡りの旅に出かけてみませんか?


書店ナビが「本屋さんの現状を知りたい!」と思ったときはいつも頼りにしてしまう北海道書店商業組合理事長のくすみ書房さん。取材は2012年12月に行われ、書店業界およびくすみ書房の2012年を振り返っていただいた。【2013.01.14】

[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=y8DLV-7THfM]



ミニチュアのちゃぶ台を用いたユニークなディスプレイ。リアル書店ならではの本を探す楽しさを味わえる仕掛け。


早速ですが、久住さん、2012年は書店業界にとってどんな一年でしたか。「最初にキビシイお話をしますと、業界全体で雑誌・コミックが売れない年でした。もちろん一部の例外はありますが、大型書店でも二桁数字が落ち込んでいます。特に2012年11月末は爆弾低気圧などの悪天候で北海道は3日間流通が止まったという非常に大きなダメージがありました。明るい話題は、文庫などの書籍が好調。札幌出身の円城塔さんが『道化師の蝶』で第146回芥川賞を受賞されたことも記憶に新しいですね」。

日本版「Kindle」の浸透が気になる電子書籍の行く末については「正直なところ、業界はまだ情報に翻弄されている状態。出版社の動向を探る一方で、Kindle やipadなどタブレットの進化には目を見張るものがあります。本を読むありようは確実に変わっていく」と語る久住さん。粗利が2割というリアル書店経営の厳しさを訴え続け、取次会社を通さない出版社との直取引や粗利の高い文具の併売、地元の子どもたちに読書の喜びを伝える講演会など、「できることを探る」知恵を多方向に働かせている。

2009年に移転オープンしてから3年間の絵本人気ランキング



その一貫として2012年11月17日には書評家豊崎由美さんを招いてトークショーを開催。店頭でも豊崎さんのおすすめ本を並べた「豊崎由美書店」を企画し、60人近くが来場したトークショーをおおいに盛り上げた。「豊崎由美書店」は150冊中124冊を売上げ、「池袋でやったときより多い。札幌は池袋に勝ちましたよ!」という豊崎さんの報告に、来場者も喜びの拍手で応えていた。このトークショーは好評につき今年も企画される予定だという。

同じころ、くすみ書房の看板企画「中学生はこれを読め!」シリーズでも新しい展開が始まった。「札幌市立大学の学生さんから卒論でうちを取り上げたいと問い合わせがありまして。そこから、じゃあ、大学生自身が選んだ『大学生はこれを読め!』キャンペーンをやろうじゃないかと発展した企画です。道新で取材してくれた時、「他の大学にも参加して欲しい」と呼びかけたところ、次々に他の大学から名乗りをあげるグループがあり、現在4~6グループが選定中とのこと。各グループによって個性が出ますし、これまでの小学生・中学生バージョンとは異なる成長発展型の企画として今後が楽しみです」。
さまざまな創意工夫でリアル書店の魅力を発信するくすみ書房。今年も何度も足を運びたい。
Store picture

2012年11月から始まった「大学生はこれを読め!」。大学生自身による選書で、棚づくりの輪は4大学7グループに広がった。



好評継続中!書評家豊崎由美さんによるおすすめ本コーナー。


Basic information
【  住    所  】札幌市厚別区大谷地東3-3-20 CAPO大谷地(地下鉄東西線大谷地駅隣接)
【 電 話 番 号】011-890-0008 ‎
【 営 業 時 間】10:00〜22:00
【 定  休 日  】年中無休

久住さんがセレクト!2012年に出版されたおすすめ本

1)百田尚樹著「海賊とよばれた男」(講談社)
「2012年のいちおしは?」と聞かれたら、迷わずこれを選びます。『永遠の0』がいまだに売れ続けている百田尚樹さんによる傑作歴史小説。出光興産の創始者、出光佐三をモデルにした物語です。上下巻あわせて約750ページの大作ですが、このエンターテインメントにはかなわない!圧倒的な面白さにページをめくる手がとまりません!
2)原田マハ著「生きるぼくら」(徳間書店)
2012年は宮部みゆきさんや横山秀夫さんなどベテラン勢の動きが目立つ年でしたが、なんといっても注目株はこの原田マハさん。美術エンターテインメント『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞受賞後に書いた『生きるぼくら』では、まったく異なる世界に連れていってくれます。ひきこもりの青年と対人恐怖症の少女、一人暮らしの老女が紡ぐ、実にいきいきとした成長小説です。
3)ミシマ社編「THE BOOKS 365人の本屋さんがどうしても届けたい「この一冊」」(ミシマ社)
書店と出版社の関係を原点に戻って考え「直取引」を貫くミシマ社は、私が今もっとも期待と希望を寄せている出版社です。本書も書店に直接足を運んでいるミシマ社だから作れたブック&書店ガイドで、全国の書店員による「この一冊」が本人の直筆とともに紹介されています。かくいう私もP22に寄稿させていただきました。北海道から11の書店が参加しているので、ぜひお手にとってご覧ください!

ページの先頭へもどる

最近の記事