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北海道書店ナビ  第194回 ビブリオバトル in 江別港

2014年9月、それまでの札幌ブックフェスから「北海道ブックフェス」と名称を改め、規模も拡大した本の催しが札幌や江別、浦河で行われた。江別のコミュニティカフェ「江別港」では関連イベントとして9月27日に書評ゲーム「ビブリオバトル」を開催。ちゃぶ台を囲んでのバトルに密着させていただいた。[2014.10.20]

[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=m4nuyjAohRg]


北海道ブックフェス2014江別会場「江別港」で開催
9月27日の午後6時から、一人5分の持ち時間でおすすめ本を紹介する知的書評ゲーム「ビブリオバトル」が江別市内で行われると聞いて行ってきた。
会場は大麻銀座商店街にあるカフェ「江別港」。「人と地域の架け橋」を目指すコミュニティスペースだ。
9月の26日から28日までの3日間、北海道ブックフェス2014の江別会場として古書市や豆本づくりの講習会、トークなどさまざまなイベントが行われ、ビブリオバトルもその一つとして開催された。
カフェの2階にあがると、ちゃぶ台が置いてある畳敷きの一室に全員集合。男性はあぐらをかいて、というなんともアットホームな雰囲気の中、「始めましょうか」という司会者の一言が聞こえてきた。


北海道ブックフェス2014江別会場になったコミュニティカフェ「江別港」。


ビブリオバトルの他、古書市やトークセッションも行われた。


カードを使ってバトラーに感想をフィードバック
この日の司会を務めたのは、ビブリオバトルの普及に力を注ぐ安部尚登さん(フィジカル・コミュニケーション・デザイン協会代表)。今回のバトルのもっとも大きな特徴は、安部さんが考案したビブリオバトル・カードを使う点にある。聞けば、チャンプ本を決めるときに参加者全員が投票用紙代わりに使うものだという。
「ビブリオバトルはチャンプ本に選ばれることだけを目的とする勝ち負けのゲームではありません。本をすすめる人とそれを聞く人との間でコミュニケーションを築き上げていく双方向型のゲームです。そこでバトル本の〈どこがよかったか〉を伝えるカードを使えば、バトラーにとってはうれしいフィードバックになり、聞き手もより能動的に参加できる。お互いに豊かなコミュニケーションが生まれます」。
たとえチャンプ本に選ばれなくてもバトラーは皆、もらったカードを通じて自分では思いもよらなかった受け取り方と出会うことができる。一枚のカードが「またやりたい」という新たな意欲を育んでくれそうだ。

上の枠には本のタイトルを書き、下の線にはプレゼンを聞いて面白そうと思ったポイント(例/ストーリーやテーマなど)を2つ記入する。


途中から聴衆として参加した地元中学生が書いたカード。


将来有望なバトラー候補?地元の本好き中学生も見学
カードの説明が終わると、6人のバトラーが3人2組に分かれてバトルスタート。1組目、湊かなえ著『往復書簡』と筒井康隆著『バブリング創世記』、きむらゆういち著『幸せな嘘』の3冊が紹介された。
結果は「わずか15ページという短い表題作ですが、この物語を最後まで読み通せた人、しかも〈音読〉できた人は日本中に一体何人いるでしょうか!」という刺激的なプレゼンがほぼ全員の心をつかんで、チャンプ本は筒井康隆著『バブリング創世記』に決定。
続く2組目は児童書『エルマーのぼうけん』『地球の歩き方 イギリス編』『鋼の錬金術師』の中から「兄弟二人の成長を描いた超エンタメ作。映画でいうと『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のようにどの世代も楽しめる魅力が詰まっている」『鋼の錬金術師』が選ばれた。


5分間のプレゼン後、2〜3分の質疑応答がある。

会が終わってみれば2組ともチャンプ本を紹介したのは、この日初めてバトラーに挑戦した初心者のおふたりだった。すすめたい本さえあれば誰でも気軽に参加できる、ビブリオバトルの親しみやすさが証明された。
また、会が始まってすぐに地元中学に通う男の子が「見学していいですか」とやってきた。付きそうお母さんにうかがったところ「ほぼ毎日図書館に通いづめるほどの本好き」なのだという。
バトル中も熱心に頷きながらプレゼンに聞き入り、「大好きな本についていろんな人の話を聞けるのがすごく楽しい!」と語ってくれた彼が、いつかバトラーになる日もそう遠くないのかもしれない。現在は大学生対象の全国大会もあるビブリオバトルだが(北海道地区決戦は10月25日(土)室蘭、11月16日(日)に札幌で開催)、今後は中高生へとさらなる裾野が広がることを期待したい。


本とカードを持って記念写真。左端はこの日の「ビブリオバトル」コーディネーター安部尚登さん(フィジカル・コミュニケーション・デザイン協会代表)。

知的書評合戦ビブリオバトル公式ウエブサイト

フィジカル・コミュニケーション・デザイン協会

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