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第384回 ビリギャル 小林さやか さん

5冊で「いただきます!」フルコース本

書店員や出版・書籍関係者が
腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。
おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。
好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ

Vol.132 ビリギャル 小林さやか さん

2018年6月に行われた、大ヒットコミック『君たちはどう生きるか』の漫画家・羽賀翔一さんを招いた特別授業の様子もあわせてご紹介します!

[本日のフルコース]
札幌新陽高校で「校長の右目」になったビリギャルが送る
「高校生にいま読んでほしい!」本フルコース

[2018.7.16]

書店ナビ 坪田信貴著『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(アスキー・メディアワークス)が出版されたのは、2013年のこと。
その長いタイトルが語る《奇跡の実話》の主人公は、「金髪ビリギャル」のさやかちゃん。著者の坪田さんは実際に彼女を指導したカリスマ塾講師です。

大ヒットした原作はその後有村架純さん主演で映画化され、大勢の中高生たちに、「ゼッタイ無理」と言われてもあきらめる必要はない、という勇気を与えました。

ビリギャルこと小林さやかさんは坪田先生の指導に応えて、偏差値30から爆発的に成績を伸ばし、見事、慶應大学の総合政策学部に合格。
大学卒業後はフリーのウェディングプランナーとして働くかたわら、年間90回を超える講演活動やイベント・セミナーの企画運営を続けています。
そのさやかさんが、今年3月から札幌新陽高校(荒井優校長)のインターンになったニュースは、たちまち各メディアで取り上げられました。

www.syoten-navi.com

小林 ビリギャルの本で坪田先生が書いてるとおり、高校時代の私は「小学4年生レベル」の学力で、先生たちにとっては問題児。職員室なんて怒られるときぐらいしか入ったことがないし、基本的に先生という人種はイヤな人しかいないと思っていました(笑)。
それが、Facebookで優(ゆたか)さん(荒井校長は今年の入学式で「自分のことは優さんと呼んでほしい」と新入生を含む参列者に呼びかけた)の「校長日誌」を読むと、優さんはいつも生徒や先生たちのことをうれしそうに書いていて、私のことを「君は人間のクズです。我が校の恥です」と嘆いた校長先生とは全然違うことにとっても驚きました。
それで「いつかお会いしたいです」とメッセージを送ったらすぐにお返事をくださって、最近私が学校や教育に関心があると伝えたら「新陽でインターンをしたら?」と声をかけてくれたんです。

全国を講演で回っていると当地の雰囲気はタクシーの運転手でわかるという。「札幌はやさしい人ばかり。住み始めてから一度もヤな思いをしてません」

書店ナビ 新陽には「校長の右腕」という変わった役職の中原健聡さんがいますが、さやかさんの役職は「校長の右目」。み、右目、ですか?
小林 右目、です(笑)。担任のクラスはありますが、私は「先生」ではないので授業はありませんし、むしろ気になる授業を生徒たちと一緒に受けたり、野外授業について行ったり。
「あそ部」を作って、みんなと一緒にイベントもしますし、進路指導室にいると生徒たちが「さやかちゃんいるー?」と来るので、人生相談にのってます(笑)。
インターン期間は7月末で終わりますが、いま言えることは、「本気で挑戦する人の母校」を掲げる新陽高校は、先生たちがめちゃくちゃ本気です!
ただ教科書に書いてある内容を教えるんじゃなくて、どうしたら生徒たちが社会に出てから自分の足で歩いていけるかを真剣に考えている。
いま、新陽に通えるみんなが心底うらやましいです。
書店ナビ さやかさんが新陽ライフを満喫されているのをブログで拝見して、これはぜひとも「高校生のためのフルコースを作ってほしい」とお願いしました。
それでは、ビリギャル時代の思い出とともに4冊のフルコースの紹介をお願いします!

[本日のフルコース]
札幌新陽高校で「校長の右目」になったビリギャルが送る
「高校生にいま読んでほしい!」本フルコース

前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書

漫画 君たちはどう生きるか
原作 吉野源三郎・漫画 羽賀翔一 マガジンハウス

2017年8月の発売以来、200万部突破! 80年前に書かれた原作をはじめて漫画化したもので、サラサラ読めちゃうので手始めに読んでみて。生きていくうえでとっても大切なことが詰まっています。

小林 私も恩師の坪田先生に出会うまでは本なんて一冊も読まなかったので、いまの高校生たちがメンドくさがって本を読まない気持ちはわかるんです。
でもね、本はやっぱり読んだほうがいい。男子学生には「モテたきゃ本を読もう!」って勧めています。
私が慶應に入ったあと、「この人すごい!話が面白い!」と思う友人たちはみんな、本を読んでました。読書から得られるものってすごく大きい。
この「僕たちは…」は原作も読んでいます。主人公コペル君の葛藤がとても愛おしいですよね。10代のいまだからこそ、みんなに読んでほしいなあ。

6月17日、新陽高校に漫画家の羽賀さんを招いて特別授業を開催。本書にある「自分では気づかないうちに、(中略)ある大きなものを、日々生み出している」それは何かを、生徒たちに聞くと「向上心」「いろんな考え」「探究心」と三者三様の答えが返ってきた。

歓迎のホワイトボードに美術部の生徒が描いたイラストを見て、羽賀さんも思わず共作(右)したWコペル君!

会場からの質問を受けている間、羽賀さんが生徒たちの顔をライブお絵描き!お宝色紙が完成した。

スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本

ぼくは勉強ができない
山田詠美  新潮社

高2のとき、坪田先生から「毎月1冊読んで感想文を書いて」と言われて、初めてちゃんと読んだ本がこれ。あっという間に読めて、「本って結構面白いかも!」と思わせてくれました。

小林 坪田先生ってものすごい記録マニアで、その指導を受けた私も受験勉強時代の資料は全部取っておいています。今日は『ぼくは勉強ができない』の感想文を持ってきました。

第一作目の感想文でいきなり100点満点中92点!ビリギャル本にも「さやかちゃんは最初からセンスがありました」と書かれている。「字がきれい」なことも!

書店ナビ タイトルの「勉強ができない」もそうですが、主人公の秀美が感じる大人や学校への違和感が、もしかするとその頃のさやかさんの心にも響くかもしれない。そう思って坪田先生がこの本を最初に選んだとしたのなら、慧眼ですね。
1冊目から「面白い!」と思わせて、読書への抵抗感を払拭してくれたのでは。
小林 そっかー。そうかもしれませんね。あの人は天才ですから。この後は『注文の多い料理店』や『羅生門』『蟹工船』などの古典も読んでいきました。

メイン料理 このテーマにはハズせない《決定本》

14歳からの哲学 考えるための教科書
池田晶子  トランスビュー
「哲学」って難しそう。多分みんなもそう、感じていると思う。この本の著者の池田さんは、若い人たちにも「哲学」に興味を持ってほしいと、とてもわかりやすい文章で説明してくれてます。「考える」ってどういうことなのかを教わった、私の人生でめちゃくちゃ記憶に残っている1冊。

書店ナビ 池田晶子さん(1960年~2007年)はさやかさんの母校である慶応義塾大学出身の哲学者・文筆家です。
本書では「言葉」「自分とは何か」「死」「心」「体」「他人」「家族」「理想と現実」「友情と愛情」「恋愛と性」などのテーマを取り上げて、14歳の読者に「読んで、覚える」ことではなく、「考えて、知る」体験を促しています。
小林 私のところに人生相談に来る生徒のほとんどが、「友情」や「進路」、そして「恋愛」について彼・彼女たちなりに一生懸命考えています。
私のことを「先生」と呼ぶ子もいますが、「や、私、先生じゃないし」と答えて、できるだけ同じ目線で話し合うように心がけています。

進路のことを言うと、いまの女の子たちに「将来の夢は?」と聞くと、「ウェディングプランナー」「看護師」「とりあえず大学に…」という答えばかりで、選択肢がすごく少ない気がします。
私は死ぬ気で勉強して慶應に入りましたが、だからといって有名大学に合格することをみんなに勧める気は全然ないんです。だって、本人が行きたいと思えるところに行くのが一番だから。
ただ、社会に出る前になんらかのコミュニティに所属することは勧めたくて、そこでいろんな人と出会い、いろんな自分を知ることが成長につながると思う。自分を成長させてくれる環境こそが宝なんだと思います。

社会に出てから「優さん」をはじめ大勢のメンターと出会った。元ザ・リッツ・カールトン・ホテル日本支社長の高野登さんもその一人だという。

デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで

窓ぎわのトットちゃん
黒柳徹子  講談社

私が一番好きな本!ひらがなが多くて一日で読めちゃうから、ぜひ読んでほしい。小学1年生で”退学”になった黒柳徹子さんを受け入れてくれた「トモエ学園」の物語。かわいいエピソード、泣けるエピソードがいっぱいです。

小林 好奇心が旺盛すぎて問題児扱いされちゃった徹子さんを両手を広げて受け止めてくれる小林先生たちが最高に素敵です。
私はこの本を読んで教育に興味を持つようになり、迷ったら何度も読み返すくらい大好きな本です。
ちなみに私のお母さん、「ああちゃん」は、黒柳徹子さんの大ファン。私はビリギャルで世間から注目してもらいましたが、ああちゃんも「ビリママ」として現在、あちこちの講演会に呼ばれています。
いつか、ああちゃんが「徹子の部屋」に出られる日が来るといいなあ。

ごちそうさまトーク 「この人だ」と信じた相手に心を開く才能を開花

書店ナビ ビリギャルとして日本中から注目を集めたことで、ご自分のなかで変化や気付いたことはありましたか?
小林 みなさんからよく言われたことは「さやかちゃんは坪田先生に出会えて運が良かったねえ!」の一言。これは本当にその通りで、これからも「出会い運、最強!」とずっと言い続けていこうと思ってます。
ただ、坪田先生に教わった生徒は何も私一人ではないんですね。坪田先生の指導方針は、勉強はできないから面白くないんであって、そのためにはできるところまで戻ってやるーー。実際、私は小学4年のドリルから勉強し直しましたが、でも一日も早く成果を出してほしい親御さんや生徒の中にはそれが耐えきれなくて、塾を辞めていくコたちも見てきました。

私は別に「もともと才能があった」わけでも「地頭がよかった」わけでもないんです。ただ、自分のことを認めてくれる人には素直に心を開いたし、その人たちのことを大好きになった。
それが自分の持っていた力、才能だったんだと思います。

書店ナビ 7月末で新陽高校のインターン期間が終わります。
小林 新陽高校にいて感じたのは、学校教育はまだまだ変えられる可能性があふれていること。「教育って何なんだろう?」という答えも少しずつですが見えてきたような気がします。
新陽高校が実現している「本気の教育」を、もっと世界に広めたい!その発信に力を入れていきたいです。
書店ナビ さやかさんが言う「死ぬ気で勉強した」の「死ぬ気」は、札幌新陽高校が掲げる「本気」と同じ意味。大人になってから新たに「母校」と出会ったビリギャル小林さやかさんの高校生応援フルコース、ごちそうさまでした!

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