北海道書店ナビ

第229回 ダイヤ書房 | ヒシガタ文庫




5冊で「いただきます!」フルコース本

書店員が腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。
おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。
好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ

Vol.6 ダイヤ書房さん

2015年5月22日、札幌市東区にあるダイヤ書房の一画に雑貨ショップ「ヒシガタ文庫」がオープン!


[本日のフルコース]
世代を超えて読み継いでいきたい絵本 

[2015.7.6]



書店ナビ 2015年5月、札幌市東区の方々にうれしい知らせが入ってきました。1970年創業のダイヤ書房が新刊書店をいまの場所、札幌市東区北25条東8丁目にオープンしたのは85年のことでした。
開店30周年を迎える今年の5月22日、店の一画60坪のスペースに雑貨ショップ「ヒシガタ文庫」が誕生しました。ヒシガタ文庫のスタッフ谷尾苑香さん、オープンおめでとうございます!
谷尾 ありがとうございます! オープン初日からたくさんの方にお越しいただいて、本当にうれしいかぎりです。



〈物語〉との出会いをつくる空間に








書店ナビ フルコースは後ほどご紹介するとして、まずはヒシガタ文庫オープンの経緯を教えてください。
谷尾 「不況が続く出版業界のなかで街の本屋の役割を見直したい」という当社代表の山田が、本とともに〈物語〉を伝える雑貨を取り扱う、という構想を練り、その思いを皆で形にしたもの、がこのヒシガタ文庫です。
そもそも書店自体が本という物語を提供して成り立っている空間ですし、私たちが店頭に新たに並べたいと思うモノたちにもそれぞれの作り手がこめた物語が詰まっています。
選りすぐりの物語を内包したモノたちを手に取っていただくことで、今度は買い手となったお客様自身の物語が始まっていく…というように、ヒシガタ文庫は〈物語との出会いをつくる空間〉をコンセプトにしています。
書店ナビ 谷尾さんはもともとダイヤ書房にお勤めだったんですか?
谷尾 いえ、札幌市内のカフェでイベント企画を担当していました。道内のものづくり作家さん同士をつなげるイベントを行ったときに、来場していた山田がそれを気に入ってくれたようで、ヒシガタ文庫の中心人物としてすでに動いていた田口恵里さんを介して会うことになりました。
東区の本屋さんがリニューアルする、しかも自分の好きな雑貨やイベント企画に関わる仕事で…という願ってもない申し出に、私からもぜひ働かせてほしいと伝えました。
書店ナビ 新規事業のために谷尾さんのようなスタッフを新たに雇う。「長く続く事業にしたい」と願う会社側の本気を感じさせるエピソードですね。
谷尾 でもそれが開店2カ月前のことだったので、そこからが大変で。コンセプトから商品までトータルプロデュースをしてくださったバイヤーの田口さんを中心に、ロゴやオリジナルグッズなどをディレクションしてくださったグラフィックデザイナーの阿部寛文さん、トロッコ一級建築士事務所の方々を交えた「ヒシガタ文庫」チームで、コピーの一文字一文字にいたるまで話し合う濃密な時間が始まりました。従来のお客様を大切にしつつ新たに増やしたかったのは、30〜40代の女性層。新しいものに敏感な雑貨好きのお客様に訴えかける商品選びや店づくりを進めていきました。




内観

無垢材の棚が居心地の良さを誘うヒシガタ文庫。
空間の真ん中をさらにヒシガタに囲む入れ子構造も面白い。



コンセプトシート

取材では貴重なコンセプトシートも見せていただいた。



コンセプトシート

デザイナーの阿部さんが提示してくれたロゴマーク、
こんなに目線のバリエーションが!







ヒシガタ文庫独自の選書で新たなジャンルも発掘







書店ナビ ヒシガタ文庫、素朴で愛らしい名前ですね。
谷尾 「ヒシガタ」はダイヤ書房のダイヤとかけていて、バイヤーの田口さんからの提案で決まりました。「文庫」には選りすぐりを集めた書庫にいるような感覚で店頭でお気に入りの雑貨や文具を見つけてほしいという思いをこめています。
書店ナビ ダイヤ書房とは別に、ヒシガタ文庫が独自に選んだ本も置いてありますね。
谷尾 はい、従来の選書とかぶらないように、できるだけ今までになかったジャンルの本を選んでいます。例をあげると野宿を愛する旅コミ誌『野宿野郎』とか(笑)、日本語と英語でハイクを紹介する「葉っぱの坑夫」さんというウェブ出版社の本も置いています。
雑貨は作家さんに直接コンタクトを取って置かせてもらっているものも多く、なかには実店舗で販売するのはうちがはじめて、という方もいらっしゃいます。衣類やアクセサリー、食品もあり、カフェ出身の私としては好きなコーヒー関係の商品を選ぶのも楽しみのひとつです。



野宿野郎

こんなミニコミ誌があるとは!奥が深そうな『野宿野郎』。



葉っぱの坑夫

こちらも初めて知ったウェブプレス「葉っぱの坑夫」の本。



「yuknoutar」(ユクノウタ)

ハンドメイドの子ども服「yuk no utar」(ユクノウタ)は
通常ネット販売だが、実店舗での取り扱いはヒシガタ文庫が初!


ETCHIRA OTCHIRA(エチラオチラ)

ソックスブランド「ETCHIRA OTCHIRA(エチラオチラ)」の
取り扱いも道内では2015年5月現在ヒシガタ文庫だけ。
目を引く看板は作家さんご本人が来店して描いてくれたもの。


かわいいキッズコーナー

大人でも入りたくなるテントがかわいいキッズコーナー。


マスキングテープ

ヒシガタ文庫オリジナルグッズにも注目!
マスキングテープが人気モノ。



ものづくりワークショップもお楽しみに!





書店ナビ 順調な滑り出し、これからが楽しみですね。
谷尾 店頭では今後、定期的なものづくりワークショップを企画していますし(第1回のプラバンワークショップは7月12日。詳細はホームページまで。)、7月20日にさっぽろテレビ塔で行われる自費出版イベント「NEVER MIND THE BOOKS 2015」には、ヒシガタ文庫オリジナルの冊子を出品する予定です。
お客様に物語と発見をお届けできる店づくりに向かって頑張ります。お近くにいらした際にはぜひお立ち寄りください!
書店ナビ 頑張ってください! さて、お願いしたフルコースですが、今回はダイヤ書房の山田社長が考えてくださったとか。それではここから「世代を超えて読み継いでいきたい絵本」フルコースをご紹介します!
谷尾さん

「プレゼントにぴったりのオリジナルボックスもあるので雑貨と本の詰め合わせも提案していきたいです」と語るヒシガタ文庫の谷尾さん。




[本日のフルコース]
世代を超えて読み継いでいきたい絵本 

前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書

ノンタンぶらんこのせて

ノンタンぶらんこのせて
キヨノサチコ  偕成社 

定番のノンタンシリーズの中でも特におすすめしたいシリーズ一冊目。リズム感がよくて、物語を通して順番を守ることや友情の大切さも学べます。言葉を覚えたての3歳からぜひ。

スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本

おばけのてんぷら

おばけのてんぷら
せなけいこ  ポプラ社

楽天的なうさぎとおっちょこちょいのおばけが繰り広げるチャーミングな物語。せなけいこさんの貼り絵がとてもあたたかく、親子で面白がりながら読み進めることができます。

魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく

100万回生きたねこ

100万回生きたねこ
佐野洋子  講談社

上質な恋愛小説のような物語で、大人も十分楽しめます。こどもにとっては悲しい結末かもしれませんが、いつかこの物語に潜む意味を親子で話し合えることができたら、とても素敵ですよね。

肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本

注文の多い料理店

注文の多い料理店
宮沢賢治  三起商行

ご存知、宮澤賢治の永遠の名作。わかりやすい内容ですが、スリルある展開に子どもたちも最後まで楽しめます。多くの画家が描いていますが、このミキハウスから出ているスズキコージさんの少し恐くてドキドキする挿絵が、物語の世界感にピッタリです。

デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで

おおきな木

おおきな木
シェル・シルヴァスタイン著 村上春樹訳
あすなろ書房

アメリカで1964年に出版された世界的なロングセラー。大人も子どもも読む人によって、あるいは読む時期によって感じることが異なるでしょう。何度でも読み返していただきたい物語がここにあります。



ごちそうさまトーク 子どもたちの笑い声に包まれて


書店ナビ 中小規模の書店に明るい材料が乏しい昨今ですが、ダイヤ書房さんのヒシガタ文庫オープンの知らせに、久しぶりに元気をもらったような気がします。近所のちびっこたちにもたくさん遊びにきてほしい。子どもたちの笑い声が聞こえてきそうなフルコース、ごちそうさまでした!







書店川柳

語り継ぐ 絵本はいつも 親の愛

詠み手 山田大介 株式会社ダイヤ書房 代表取締役社長

今年開店30周年のダイヤ書房から紡がれる親子の愛。ヒシガタ文庫の誕生によってさらに親子で楽しめる空間に進化した。ご近所の皆さんがウラヤマシイ!

2015年5月から北海道書店ナビは書店員さんにお願いしています、「お好きなフルコースを作ってみませんか?」と。素材はもちろん皆さんが愛する本を使って。

《前菜》となる入門書から《デザート》として余韻を楽しむ一冊まで、フルコースの組み立て方もご本人次第。

読者の皆さまに、ひとつのテーマをたっぷりと味わいつくせる読書の喜びを提供します。

ページの先頭へもどる

最近の記事