トイレ型石鹸やクラゲのぬいぐるみ、「たばこ」&「としお」のマッチ、文学館による復刻本など各ミュージアムの思いが詰まったグッズがズラリ!
[2022.6.27]
札幌のご自宅にうかがう直前に、2021年7月4日に刊行された初の著作『ミュージアムグッズのチカラ』をAmazonで検索したところ、発売から11カ月後の今も美術館・博物館ジャンルで8位にランクイン! 今年5月26日には待望の続刊が出版され、今勢いに乗るミュージアムグッズ愛好家の大澤夏美さんに、前作の反響や続刊に込めた思いをうかがいました。
書店ナビ:この度は『ミュージアムグッズのチカラ2』出版おめでとうございます。大澤さんには1が出たときに、書店ナビの特別企画として「ミュージアムグッズでフルコース!」を作っていただきました。
続刊のお話はいつ頃から出ていたんですか?
大澤:きっかけは、1が出てから2カ月後にNHKの『あさイチ』に取り上げていただきまして。その時のゲストが坂口健太郎さんで、たくさんの方がご覧になっていたのにも助けられました。
そのあと一瞬でしたが、Amazon全体の人気ランキング10位になったんです。はい、「ウソでしょ?」と思いました(笑)。
それでもう、出版元の国書刊行会さんもビックリされて、「創立以来初めてです」とご連絡をいただいた時に、思いきって私から「2を出しませんか?ネタはあります」と提案したら、ゴーサインを出してもらいました。
時計回りにクラゲのぬいぐるみ3種類は鶴岡市立加茂水族館(山形県)。男女イラストのマッチはたばこと塩の博物館(東京都)。その左は福井県立若狭歴史博物館の『解体新書ノート』。北海道旭川市にある三浦綾子記念文学館からは復刻本とノート、しおり、ミスト。奥のマグカップはキャップに注目!環状列石をモチーフにした青森市小牧野遺跡保護センター 縄文の学び舎・小牧野館の話題作。トイレ型石鹸と小物入れはもちろんTOTOミュージアム。
たばこと塩の博物館オリジナルキャラクター「たばこ」と「としお」。顔つきマッチで知るひとぞ知る「こけしマッチ製作所」に依頼して作っているのだそう。
書店ナビ:前作の反響で印象に残っていることはなんでしょうか。
大澤:皆さん、本の感想と一緒に「私はこれを買いました」とか「自分がその博物館に行った時は近くのどこそこにも寄ったんですよ」とご自分の体験談を送ってくれました。
本の内容を知ってもらえただけでなく、ミュージアムにまつわる思い出を掘り起こす本になれたことが、すごくうれしかったです。
あとはやっぱり、取材でお世話になったミュージアムの皆さんが「紹介してもらえてよかった!」ととっても喜んでくれたこと。
なかには、伊丹市昆虫館さんの缶バッジの紹介を読んで「うちも小ロットでオリジナルグッズを作れるバッジマシーンを導入しました」というところもありました。
日本のミュージアムは「国立」と付くような大規模施設よりも中小規模のところが圧倒的に多いので、この本の1も2もできるだけ、規模は小さくても個性的で面白いところを中心にピックアップしたつもりです。
規模が似ていれば、参考にできるところも多いはず、ということを念頭に置きながら書いたので、バッジマシーンのように早速実践してもらえると「やった!」という気持ちです。
「TOTOミュージアムはこの袋ですね」。ミュージアムごとにチケットやグッズなど関係するものを全てジップロックに入れて保管するのが大澤流。
書店ナビ:2で新たに試したかったことはなんですか。
大澤:デザイナーの坂田亜沙美さんと相談して、2は章扉のグッズの見せ方や散りばめているイラストの使い方など細部にまで気を配りました。各館がどの都道府県にあるか、ひと目でわかる日本地図も追加しました。
掲載ラインナップでいうと、1には入れられなかった旭川の三浦綾子記念文学館さんは絶対に紹介したかったので、4章「もっと深く学びたい」のトップバッターで掲載しています。
特に触れたかったのは、すでに絶版や重版未定になった三浦文学をご自分たちで復刻されていること。すばらしい試みです。
SNSで大人気!黒猫ケンちゃんと警備員さんの”攻防”で有名な尾道市立美術館も掲載。この写真は取材の帰りがけに、たまたまケンちゃんが遊びに来たところをキャッチ。「連写しました(笑)」
書店ナビ:1も2もコロナ禍の出版です。
大澤:2021年7月に出した1の時は取材も緊急事態宣言の合間を縫って、細心の注意を払って進めていきました。ですが肝心のミュージアムの皆さんが取材時点で休館を余儀なくされたりして、本当に苦しんでいる姿を目の当たりにしました。
2の取材期間は2021年の10月から11月にかけてだったので、そこから状況も変わり、1と2を通して読むと、各館がコロナ禍の中でどう動いたか、そこでミュージアムグッズはどういう役割を果たしたのかを記録する〈コロナ禍のミュージアム・ドキュメンタリー〉にも読めると思います。
「この本はコロナ禍じゃなかったら、もっと売れたんじゃない?」と言われたこともありますが、私としてはコロナ禍に出したからこそ、「ミュージアムグッズのチカラ」という言葉が強く響いたのではないかと感じています。
そのミュージアムグッズのチカラが導き出してくれるのは、そういうグッズがあることを知って、次は「自分にできることってなんだろう?」と考える私たちのチカラ。この本が、そこに思いを巡らせるきっかけになれたら最高です。
「最近は民芸品も気になっています」という大澤さん。
書店ナビ:「ミュージアムグッズのチカラ」1と2が出たことで、ミュージアムグッズ愛好家としての出番も増えたとうかがっています。
大澤:ありがたいことに、いろいろな雑誌のミュージアム特集に企画から声をかけていただいています。
これまでは添え物のように触れられていたミュージアムグッズが、「かわいい」だけではない価値や意味を持っていることが広まってきたのを実感しています。
6月20日に出たばかりの暮らしの図鑑編集部『暮らしの図鑑 紙もの』でも、紙もののミュージアムグッズをご紹介しています。
それから、2年前に私が自主制作したリトルプレス 『ミュージアムパスポート』を見てくださった編集プロダクションの調度さんとも、ずっと「一緒に本を出したいね」と言っていました。
それがとうとう実現して、7月4日に私の3冊目となる『ときめきのミュージアムグッズ』が出版されます!デザインはこちらも坂田さんにお願いしています。
書店ナビ:快進撃が続きますね!玄光社のサイトにあるサンプルページを見ると、まさに”ときめき”を書き立てる美麗なレイアウト。こちらも評判になりそうです。
大澤:『ミュージアムグッズのチカラ』は、自分が学んだ博物館学の視点をベースにしているので、どうしてもややマニアックになりがちですが、こちらは「ミュージアムグッズでときめいてみませんか!」という入門編。間口の広い一冊になっていると思います。
調度さんたちとお仕事できたことも、すごくいい勉強になりました。
書店ナビ:こうしてAmazonにランクインするような出版物を出せるようになるまで、私費で全国のミュージアムを訪ね、グッズを買い集め、リトルプレスを自主制作する。そういった活動の全てが今、花開いていますね。
大澤:投資してきたかいがありました(笑)。でも本当に感謝したいのは、好きに飛び回っている私をいつも見守って、本づくりにも全面協力してくれた家族です。心から「ありがとう!」と言いたいです。
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