「まちで本とあそぶ9月」をテーマに、今年も1カ月に渡り、北海道各地で本にまつわる楽しいイベントが開催された「北海道ブックフェス2016」。
北海道書店ナビもイベント2カ所を訪ね、現場の盛り上がりを目の当たりにしてきました。
前編の今週はユニークな出版社フェアを、10月31日(月)更新の来週は社会人版ビブリオバトルの模様をご紹介します。
zeeのマネージャー渡辺美雪さん(写真右)と、「旅する灯台」を提案したブックコーディネーターの尾崎実帆子さん。
[2016.10.24]
札幌・円山にあるビルの5階にその扉はありました
9月26日(月)、この日の取材先は書店ではありません。札幌市中央区円山にあるセレクトショップ「zee」さんです。
zee(ゼー)とはオランダ語で「海」の意味。ビーチでくつろぐように居心地のいい空間にしたい、というマネージャー渡辺美雪さんの思いがこめられた店名です。
北海道ブックフェスの実行委員長であり、ブックコーディネーターである尾崎実帆子さんのお取引先でもあるzeeさんに、それでは早速おじゃまします!
白を基調としたゆったりとしたオトナの空間
店内には渡辺さんが選りすぐった今シーズンの秋冬ファッションがラインナップ。トレンドと着心地、オトナの女性だからこそ両立したいグッドバランスのセレクトが、たくさんの女性客の心をとらえています。
さらに同店では、アクセサリーづくりのワークショップや北海道赤井川村のいわもと農園さんの元気野菜が並ぶマルシェなど、さまざまなイベントを積極的に企画し、お客様に豊かなライフスタイルを提案しています。
その一環として今年の北海道ブックフェスにも初参加し、とうかがっていたのですが、肝心の本はどこに…?
キョロキョロしていると、”コッチですよ”、誰かに呼ばれたような…。
海を渡って北海道ブックフェス初上陸!
おお、いました、いました。今回お目当てにしてきたのは、こちらの灯台。東京の出版レーベル、アノニマ・スタジオが「旅する灯台」と題したブックフェアのシンボルである「旅する灯台1号」さん(直径約60cm・高さ約120cm)です。
このブックフェアは、「以前から”いいな”と思った本はたいていアノニマ・スタジオさんの本でした」という渡辺さんに、今年の北海道ブックフェスで「旅する灯台」を複数店舗で初展開することになった尾崎さんが「zeeさんでもやりませんか?」と提案して実現したもの。
店名の「海」にもピッタリ!ベストマッチなブックイベントとなりました。
食べたことのない味や未知を知ることも旅
ご覧のとおり、アノニマ・スタジオのテーマは「ごはんとくらし」。
日頃からzeeで大切にしているコンセプトと重なるところも多く、渡辺さんはイベントコンセプトをこう、決めたそうです。
「なかなか旅ができない人たちへ 旅してもらうzee」
本は旅ができる 人と出会うことも旅
食べたことのない味を知るのも旅 未知を知ることは旅なのだ
同レーベルのラインナップから「旅」「食」「手仕事」の本や絵本を中心にセレクトし(「最後まで悩みました!」by尾崎さん)、できあがった素敵な空間がこちらです!(このイベントは9月に終了しました)
壁の棚や飾り模様のディスプレイもこの日のために
「この壁の白い棚、いつも当店のディスプレイを手がけてくれる方が急きょ作ってくれたんです」という渡辺さんの解説を聞いてビックリ!
全国を旅してきた灯台を迎える準備を万端にして、待っていた姿勢が伝わってきます。
札幌のなかでも上質なライフスタイル&美食を好む住人が多い円山地区らしく、料理家高谷亜由さんの著書『レシピ 家で呑む』は取材前日に売れていったとのこと。
尾崎さんが「絶対に入れようと思っていた」1976年出版の桐島洋子さんの名著『聡明な女は料理がうまい』復刻版も、会期中きっとお客様の誰かに気に入ってもらえたような気がします。
本にあわせて、札幌で普段使いの器と雑貨を取り扱うショップ「asa」の協力で、器や料理道具なども揃え、空間の統一感をやさしく演出しています。
プレゼントや自宅のインテリアに、と買う人が多かった大人向け絵本。記者Sの個人的なおすすめは『ゆきのあさ』。クリスマスプレゼントにピッタリ!
本を手にする場所が書店から広がっている
今回のブックイベント「旅する灯台」at zeeからは、2つの可能性を読み取ることができそうです。
ひとつは、専門特化した出版レーベルあるいは出版社がたとえ大手でなくとも灯台のようなシンボルを上手に活用すれば、十分店頭アピールできるブックフェアの空間がつくれること。
そしてもうひとつは、zeeのように専門書店ではないショップでも店のコンセプトや客層とマッチしていれば、”本”という商材を売るチャンスが潜んでいるということ。
もちろん、そこには尾崎さんのようなブックコーディネーターなど書籍流通のプロの存在は必要ですが、書店業界以外の店舗にとっても本を販売する可能性がゼロではないことを証明してくれた今回のイベントだったのではないでしょうか。
「お客様も楽しんでくださったようでやってよかったです」と渡辺さんが語れば、「こういう新しい書籍販売のチャンネルをこれからもっとつくっていきたいです」と意欲を見せる尾崎さん。
2016年9月24日からの1週間、zeeの一画を照らし続けてくれた「旅する灯台」に感謝をしつつ、お二人とも、次の楽しいブックイベントづくりに思いを馳せています。
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