北海道書店ナビ

第395回 祝連載完結!SWAN BOOKS永堀裕二さん著『夜景の山』





[おっかけ企画]SWANBOOKS永堀裕二さんの〈その後〉

札幌・円山を描いた連載小説『夜景の山』が連載完結!

[2018.10.1]

執筆期間は約1年、喫茶店と地元文筆家のコラボ企画

以前ご登場いただいたフルコース選者の方々の〈その後〉を紹介する「おっかけ企画」。

初回は、2017年12月に「生活と家族」本フルコースを作ってくれた札幌の文筆家SWANBOOKSの永堀裕二さんです。

www.syoten-navi.com


北海道書店ナビが永堀さんに注目したきっかけは、札幌市西28丁目にある喫茶店RITARU COFFEE(リタルコーヒー)さんに行ったときのこと。
「ん?これは何?」と、A5用紙にプリントされたリーフレット式連載小説『夜景の山』を手に取ったところから始まりました



2017年11月当時「その8」まで進んでいた『夜景の山』は、〈店と地元文筆家のコラボ企画〉から生まれたもの。物語の舞台が円山を中心に描かれていること、主人公たちが出会う場が実在するRITARU COFFEEであるという意欲的な試みに惹かれて、著者の永堀さんに連絡を取りました(詳細は上記の永堀さんフルコースをご覧ください)。

4人の主人公が交錯する舞台はここ、RITARU COFFEE(札幌市中央区北3条西26丁目3-8)

その後も連載は順調に続き、2018年7月に最終回〈その24〉をもって物語は終了しました(最終回はA4二つ折りの特別バージョン!)。

日中のお勤めのかたわら、約1年に渡って地道に書き続けてきた永堀さんに、連載終了の今の気持ちや執筆エピソードをうかがいました。

連載リーフレットはRITARU COFFEEの入口横に設置。コーヒーの香りでラッピングされている。








動き出すキャラクターたち、北海道の「街感」を描写


発表の場がA5のリーフレットという手軽な体裁が魅力でした。RITARU COFFEE代表の三上悦史さんとは、どんなお話をして連載が始まったんですか?
永堀 コラボ企画をやろうという話になった時、「その場で気軽に読めて、次回の来店にもつながるような仕掛けを」という大前提がありました。

ただ、そうは言っても月2回の発行スケジュールで、毎回起承転結を破綻させないために必要な文字量も確保したかったので、そのギリギリのラインを考えた結果、A5両面2段組というレイアウトに落ち着きました。

制作は僕がWordで直接入力して、ネット印刷に出しました。


連載が進むうちに変わっていったことは?
永堀 プリントのレイアウトや紙質は途中で少しだけ変えましたが、基本的にはあまり変えていません。

内容のほうは、登場人物たちが徐々に変わっていきました。大輔も佳歩も、最初はもっと「デタラメな男」と「高飛車な女」くらいのニュアンスで組み立てていたんですが、話が進んでいくうちに少しずつまともな人間になっていった(笑)。

“組織”に対峙する辺りでは、かなりのしっかり者になっていたと思います。

「カフェの階段に足をかけた。(中略)ドアを開けるとすぐにコーヒーの香りが大輔をとらえた。」(『夜景の山』その1より)。「右手には巨大な焙煎機が置かれており、左手のカウンターで忙しそうにしている店員の笑顔に迎えられた。」(『夜景の山』その2より)。



地元を書いてみて、どうでしたか?
永堀 円山を小説にしたいというのは以前から思っていたことで、それがかなったのは純粋にうれしかったです。

「このキャラクターをどこに住まわせようかな」とか「どのお店に行かせようかな」とか、表には出していない設定まで考えていました。

これはブログでも書いたのですが、北海道の街には歴史の浅い土地だからこそ表現できる「街感」があり、この魅力を見逃す手はないなと感じています。

僕の場合はたまたまそれが円山で、これからも円山のことをしつこいくらいに書いていきたいです。

「その7」では円山特有の地形を解説し、「円山には太陽の軌道よりもひと足先に夜がやってくる。円山には夕焼けがないのだ。」などの描写が秀逸でした。ご本人にとってのお気に入りの場面は?
永堀 「その15」から「その16」にかけて、夜の円山を逃げる場面です。取材がてら自分でも歩いてみて、ちょっとドキドキしました。
全24話を書き終えて一番の収穫は何ですか。
永堀 いま思っているのは、何よりも楽しかったということと「連載って難しい」ということです。

一般に小説の書き手は2種類いると言われていて、最初から完璧な設計図を構築して文章に落とし込む人と、キャラクターやテンションをある程度決めたら書いているうちに世界が動いていく人。

僕は後者で、予測がつかないところが何度もあり、本当に24話で終わるだろうかという不安は常にありました。

それでも一年間続けられたという事実と、読者の方からダイレクトにリアクションがくる喜びが一番の収穫だったと思います。

今後は文筆家としてもっと活動を広げて、円山から札幌のシーンを盛り上げていければと思います。

主人公たちも使ったであろうRITARU COFFEEのコースターにはコーポレート・アイデンティティである年輪のスタンプが。小説の中でも一本の大木が物語の鍵になっている。



完結した『夜景の山』は現在RITARU COFFEEの店頭で無料配布中。「在庫が切れた回もあるので、読みたい!という方はブログにコメントを入力してくださいね」(永堀さん)。店頭設置は2018年10月まで。

ゆったりとくつろげるテーブル席で『夜景の山』一気読みをお試しあれ!



●永堀さんのブログ「十八番茶も出花」

bancha-debana2.blogspot.com


●RITARU COFFEE

www.ritaru.com



●永堀裕二(ながほり・ゆうじ)さん

1982年帯広市出身。帯広緑陽高校卒、札幌大学卒。百貨店勤務を経て現在広告プロダクションの営業職。「ギターポップ文学集団SWAN BOOKS」の屋号で文筆活動を継続中(名称の由来はぜひブログで)。『夜景の山』連載中の2017年9月、パパになる。

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