北海道書店ナビ

第380回 認定NPO法人アルテピアッツァ美唄 影山 宏明さん

Vol.128 認定NPO法人アルテピアッツァびばい 影山 宏明さん

彫刻家・安田侃氏がセレクトした書籍が並ぶ「アルテ文庫」の書棚の前で。

[本日のフルコース] アルテピアッツァ美唄の影山さんに聞く

「アートの面白さを教えてくれた本」フルコース

[2018.6.18]

書店ナビ 高速道路を美唄ICでおりてから約5分。緑に囲まれた美唄市落合町栄町の一角に広がる「アルテピアッツァ美唄」は、美唄市出身の彫刻家、安田侃氏の作品が約40点並ぶ屋外美術館。
2016年4月には正式に博物館(美術館)登録が認められ、名称も「安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄」に改称されました。

影山宏明さんは、アルテピアッツァ美唄の指定管理者団体、認定NPO法人アルテピアッツァびばいに2010年から勤務。
広報やカフェアルテの運営、イベントの企画などを行っています。

夏はテラス席でくつろぎ、冬は薪ストーブで暖をとれる「カフェアルテ」。パニーノやフォカッチャに地元の石釜パン屋「ストウブ」のパンを使っている。

カフェの横には緑と調和した安田侃作品「真無」を展示。取材当日の5月末、あたりはハルゼミや鳥の声に包まれて季節を全身で浴びたような心地になる。

影山 自分の父が大工だったこともあって、小さいころからものづくりに関心がありました。札幌の専門学校でプロダクトデザイン学科に進み、アートについてさらに深く学びたくなって1年間アートスクールに通いました。
今回のフルコースは、そのアートスクールから始まる僕のアートヒストリーを照らしてくれた5冊です。
書店ナビ 最後のごちそうさまトークでは「アルテ文庫」についてもお話をうかがいます。

[本日のフルコース] アルテピアッツァ美唄の影山さんに聞く
「アートの面白さを教えてくれた本」フルコース

前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書

SATOSHI HATA The Art works of Satoshi Hata1982-2001
端 聡
自分がアートの世界にハマるきっかけをつくってくれたアートディレクター、端聡さんの作品集です。ご本人からいただいたもので、多分市販されていないかもしれません。写真コラージュやインスタレーションなど、初めて間近に感じる現代アートの世界に釘付けになりました。

書店ナビ 端聡さんは影山さんも通われた札幌のアートスクール「CAIアートスクールlの設立者。長年の夢だった札幌国際芸術祭の開催にも尽力し、2014年の本祭前から札幌ビエンナーレ・プレ企画実行委員会の芸術監督に就任し、東奔西走の活躍を見せました。

端氏は1995年、ドイツ政府管轄ドイツ学術交流会(DAAD)の助成を受けて約1年間、ブレーメン近郊のアート村に滞在。世界的なアート展「ドクメンタ」で国際芸術祭の洗礼を受けた。

影山

専門学校を辞めてからアートスクールの面接で初めて会った端さんは、肩まで届く長髪に全身黒ずくめ。

アーティスト然としたオーラに10代の自分は圧倒されましたが、僕らのような若造にも情熱的に話してくださる姿に「ここから人生が変わるかもしれない!」というワクワク感が高まっていったのを覚えています。

端さん本人の作品や端さんが影響を受けた作家たちを調べていくうちに、どんどんアートの世界にハマっていきました。

実は今回のフルコースには裏テーマがありまして、それは《北海道ゆかりの作家たち》。端さんも、僕と同じ岩見沢のご出身です。 アートを考えるときに、その作家の出身地や作品が生まれた土地・背景を思うことは作品理解を深めてくれる大切な糸口になります。

スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本

18
大竹伸朗  青山出版社
タイトルは、18歳の意味。1974年、大竹さんが北海道別海町の牧場に住み込みで働いていたときのスケッチ・写真集です。何気ない風景や暮らしの中にこそ発見があるのだと気づきました。

書店ナビ 大竹さんは東京出身ですが東京芸大の受験に失敗し、武蔵美に補欠入学します。人生初の挫折にぬぐいきれない気持ちがあったのでしょう。
4月早々に大学を休学して過ごしたのが、この北海道でした。歌志内にも足を伸ばしています。
影山 牛舎や牧場の子どもたち、田舎の風景をがむしゃらに撮り、描いたという感じですが、やはり大竹さんならではのアングルやセンスを感じます。
今の大竹さんの突き抜けた作風の底流に、この繊細なバックボーンがあると思うと、ぐっとくる。おりに触れてページを開きたくなる作品集です。
書店ナビ ご本人にお会いしたことは?
影山 アルテに勤める前、札幌国際芸術祭のプレ企画として北海道立近代美術館で大竹さんの展示があったとき、グッズ販売をお手伝いしました。
本書はそのときに見て以来「いつか欲しい!」と思って、最近ようやく購入したものです。
アルテにも2009年の「森山大道写真展 北海道<序章>」のときにお越しいただいています。とても気さくな方で、僕らスタッフにも気軽に話しかけてくださいます。

魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく

The sculpture of KAN YASUDA
安田侃  スタンピア・アルティスティカ・ナツィオナーレ出版
イギリスの彫刻公園「ヨークシャー・スカルプチャー・パーク」で1994年に行われた「大理石とブロンズ」展と、過去の展覧会や代表作をまとめた2冊組の写真集。安田侃さんの集大成のような作品集です。

書店ナビ 影山さんが「僕の人生観を変えてくれたアーティスト」という安田侃さんは1945年に美唄市で生まれ、現在はイタリア在住の世界的なマエストロ。
日本でアトリエを探しているときに、旧栄小学校に併設されている幼稚園に通う子どもたちの姿を見て「この子たちのために広場を作ろう」と思ったのが、アルテピアッツァ美唄構想の始まりだったとか。
影山さんがNPO法人アルテピアッツァびばいに勤めるきっかけはなんだったんですか?
影山 端さんのアートスクールを一年で修了したあと、楽器店やアートイベントのアルバイトをしていたら、知人が声をかけてくれて職員募集を知りました。
皆さんご存知のとおり、安田さんの作品は、誰もがひと筆書きできそうなやさしい線でありながら、それは安田侃という一人の作家の中からしか生まれえない洗練されたフォルムを描いています。
そのフォルムは、アルテのような緑深い自然の中でも、あるいは東京・札幌のような都心の中にあっても唯一無二の存在感を放っている。得難い作家性だと思います。

本書は日本では入手しづらいかもしれないが、アルテのギャラリー内にある「アルテ文庫」で自由に閲覧できる。

影山

北海道書店ナビさんも取材に来てくれましたが、2017年9月23日にかつて安田さんのマネージャーをしていた九州の書店、ブックスキューブリックの大井実さんをお招きして、トークイベントを開きました。 そのときに写真集の舞台となったイギリスの「ヨークシャー・スカルプチャー・パーク」の話が出て、僕らも初めて聞くことばかりで面白かったです。

肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本

工事中
川俣正  現代企画室

北海道三笠市出身の造形作家、川俣正さんの作品集。本書が出たのが1987年。現地で素材を調達して、出来上がったら解体するーー。いまでもまったく変わらないコンセプトを掲げて世界で活躍している姿に感銘を受けます。

書店ナビ いまはパリ在住の川俣さん。「ワーク・イン・プログレス」と呼ばれる現地制作の手法を貫いています。
影山 三笠で制作に参加する希望者を募るワークショップがあったので、一ファンとして参加し、作って壊す儚さを身をもって知りました。
大理石を彫る安田侃さんの作品世界が長い歳月や厳しい風雪に耐えうる《不動》のものならば、川俣さんはその対極。世界中どこででも調達できるから、という理由で木を使うのにも納得です。
若い頃からやり続けていることが、こうして世界を感動させるアートに昇華されていく姿勢にも、非常に勇気をもらいます。
本人に会ってみた感想ですか? 見た目は大工の棟梁みたいですが(笑)、とってもいいお顔をされています。

デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで

ぎったんこ ばったんこ
柚木沙弥郎  福音館書店

最後は《デザート》らしく趣向を変えて絵本にしました。染色家、柚木沙弥郎(ゆのき さみろう)さんの絵本です。カフェアルテにも柚木さんが絵を描かれた絵本を数冊置いています。

影山 2017年10月に企画したアルテピアッツァ美唄25周年「安田侃のまなざし展」で4人の作家さんが安田作品とコラボレーションし、そのお一人が柚木先生でした。
恥ずかしながら、そのご縁で自分も初めて存在を知ることができました。
書店ナビ 1922年東京生まれの柚木さん。日本における型染の第一人者ですが、絵本も描かれていたんですね。
影山 この『ぎったんこ ばったんこ』はうちの家族全員が大ファン。はじめはネコ好きのおくさんがひと目惚れして購入し、最近2歳になった娘にもせがまれて何度も何度も読み聞かせしています。同じページにくると、いつも大笑いしてくれるのがうれしくて。
子どもができてから絵本にも興味を持つようになりました。奥深いですよね。

ネコ家族がシーソーで遊ぶ、それだけなのにたまらなく楽しい1冊。影山さんちのたみちゃんは、おかあさんネコの表情が大好きなのだとか!

ごちそうさまトーク 貴重なサイン絵も発見!アルテ文庫

書店ナビ お話をうかがったカフェアルテから、撮影場所を旧栄小学校の木造校舎を使ったギャラリーに移動しました。その入口にあるのが「アルテ文庫」です。

2014年10月5日にできた、安田侃セレクトの書籍が並ぶ「アルテ文庫」。

影山 皆さまからいただいた寄付で安田さんが「これは」と思う本・図録を購入しています。
なかには貴重なサイン入りのものも。現在の蔵書数は230冊。読んで楽しんでいただく《安田侃ワールド》です。

建築家、安藤忠雄氏の『直島 瀬戸内アートの楽園』には安田氏宛てのサイン絵を発見!

影山 アルテではこの夏もさまざまなイベントを企画中です。7月6日(金)~8日(日)は安田侃さんが直接指導する「安田侃の『こころを彫る授業』」を開催。
7月22日(日)の13:30から始まる「アルテ○○の学校」第13回のマルマルは(イ)(ン)(タ)(ビ)(ュ)(ー)で、
元北海道放送アナウンサーの安藤千鶴子さんをゲストにお招きします。

「久しぶりだ」という方も、まだ一度も行ったことがないという方も、ぜひアルテに遊びにいらしてください。お待ちしています!

書店ナビ 大理石の白と初夏の緑のコントラストが美しいアルテから、影山さんが選んでくれたアート本フルコース、ごちそうさまでした!

安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄
●影山宏明(かげやま・ひろあき)さん
1984年岩見沢市出身。CAIアートスクール修 了後、2010年から認定NPO法人アルテピアッツァびばいに勤務。

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