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第505回 『ねぐせきょうだい』出版記念イベントレポート

2021年2月7日紀伊國屋書店札幌本店で行われた出版記念イベント。通常100名近く入る会場の半分の定員でソーシャルディスタンスをキープした。画像提供/中西出版(以下★)

[イベントレポート]
札幌在住のアーティスト加賀城匡貴さん初の絵本
『ねぐせきょうだい』発売記念イベントレポート

[2021.2.15]

「えっ、こんな形に?」ねぐせで遊ぶ「見立て」の世界

空の雲が動物に見えたり、学校の壁のひび割れが日本列島に見えたりする、対象をまったく異なるものに読み替える「見立て」の世界。
「誰でもできて、自分の視界が変わってくる」とその魅力を語る札幌在住のアーティスト加賀城匡貴(かがじょう・まさき)さんが絵・文ともに手がけた初めての絵本『ねぐせきょうだい』が、2021年2月5日に発売された。

ねぐせきょうだい
加賀城匡貴  中西出版
毎朝「ねぐせ」が爆発しちゃうおにいちゃんといもうと。でもそのねぐせ、よく見るといろんな形に見えてきて…。軽快なことばのリズムとともに「えっ、こんな形に?」と自由奔放に広がるねぐせワールド。夢も毛量もたっぷりの一冊。


この発売を記念して版元の中西出版は2月7日に紀伊國屋書店札幌本店で出版記念イベントを企画。
お笑いグループ「スケルツォ」のメンバーでもある加賀城さんのパフォーマンスとトークの二本立てで、約1時間のイベントが開催された。

「スケルツォ」とはイタリア語で「冗談」の意味。音とことば、映像を使って笑いを誘う。写真は作品「ピアノが弾けない人の演奏でラジオ体操」(1分30秒)。★

「川」の字を家族の寝姿にたとえ、「州」「洲」とイメージを膨らませていく作品「川の字で寝る」(2分)。★

2008年に出した脳トレ本にきょうだいの原型を発見!

冒頭、4人の演じ手で構成される「スケルツォ」の8作品が披露され、その後加賀城さんの作家トークがスタート。進行は北海道書店ナビの佐藤優子が務めた。
1975年北海道生まれの加賀城さん。小さいころから人を笑わせることが好きで、友だちと野球をするときも自身は実況役で場を盛り上げるほう。
小学生の頃に流行ったファミコンで外遊びが激減すると、「学校から頼まれたわけでもないのに”外で遊びましょう!”とポスターを作って登校する子どもたちに呼びかけた」など、クリエイティブな遊び心を発揮した。

高校時代、友達と「欽ちゃんの仮装大賞」に出場したこともある加賀城さん。そのときのテーマは「雪崩」。「残念ながら10点でした(笑)」★

そんな加賀城さんが「自分で楽しみを作り出し、人を笑わせること」と同じくらいの熱量で夢中になっていたのがサッカーだった。ポジションは中盤のハーフ。
高校卒業後、単身イギリスに渡り語学学校に通いながら地元のサッカーチームに所属した。だがケガを機に加賀城さんの進路は、現在の活動へと大きく舵を切っていく。

帰国後は放送局に勤めながら映像制作のキャリアを積み、1999年に映像・音楽・演劇的要素も全て詰まった「スケルツォ」を結成。
そのステージを見た出版社から「加賀城さんの見立ての視点がおもしろい。小学生向けの本を作りませんか?」と声をかけられ、国語・算数・理科・社会を楽しく学ぶ『脳トレ!パッとブック』(教育画劇)も出版した。

「実はこの『脳トレ!パッとブック』の中でねぐせが福井県の形をしたおにいちゃんとねぐせが長野県の妹を描いています。『ねぐせきょうだい』の原型です」

きょうだいの原型が描かれた『脳トレ!パッとブック 社会で脳トレ!』をお披露目中。2008年に出版されたこのシリーズは今年4年ぶりに増刷が決定した。★

子どもが描く子どもの顔を模写、郷土玩具も参考に

スケルツォの活動の他にも、小学校で子どもたちにワークショップを行うなど先入観や固定概念を少しズラした視点から生まれるものづくりの楽しさを広めている加賀城さん。
今回絵本づくりの依頼がきたときも、すでに原型ができていたきょうだいをさらにブラッシュアップさせ、新しいねぐせワールドに取り組んだ。

シンプルながら愛らしいきょうだいの表情は「父の日や母の日に子どもたちが描く絵がスーパーとかに貼り出されますよね。それを見ていると、子どもたちが描く子どもの顔に不思議と共通点がある。その顔を模写して研究しました」

画材はコピックを使用。普遍的な愛らしさを持つ郷土玩具の顔だちも参考にして、この表情が完成した。

本のキャッチコピー「毎朝がたのしい」も加賀城さんが提案した。
「 “次の日の朝が楽しみでたまらない!”ことって、特に大人になると少なくなりますよね(笑)。でもねぐせは毎朝変わるし、どんな形になるかもわからない。次の日が希望であり続ける、そう思わせてくれるきょうだいを描くことができました。毛量たっぷりのこのコたちをどうぞよろしくお願いします!」

小さいお友達もトークを熱心に聞いてくれて、トーク後のサイン会もおおいに盛り上がった。

スケルツォ

https://www.facebook.com/scherzokagajomasaki

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