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第218回 吉田類責任編集『旅人類』創刊記念インタビュー&函館サイン会編

黒いハンチングからくるりと巻いたくせッ毛がのぞく。全身黒でキメたあの人が函館・釧路の地を知る、詠む、飲み歩く。酒場詩人・吉田類さんが大人の旅をナビゲートする北海道ガイド『旅人類』はただいま好評発売中!先週の札幌サイン会編に続き、今週はインタビュー&函館サイン会編をお届けする。[2015.4.20]


北海道書店ナビが聞きました!吉田類さんインタビュー

ーー吉田類さんと北海道の結びつきは、「かれこれ四半世紀」にわたるとか。

吉田ええ、僕は山も好きですが、釣りも好きでして。イワナを追いかけて北海道に来たのが、そもそもの始まりです。北海道の山は日高、えりも、大雪山系…ひと通り登りました。山に入るときは単独が多いです。一人のほうが野生動物に会える機会が多いですから。ヒグマに会ったこともありますよ。大丈夫。僕が先に見つけて“対面”を避けました。

サイン会でもお話しましたが、僕にとって詩人としての野性や感性を鍛えるには、野性の厳しさにあふれた北海道の自然がとても大切です。いつか住みたいと思っていた北海道に来る機会がどんどん増えていき、数年前から札幌に“基地”を持つようになりました。今では1年の3分の1近くは北海道にいます。



「札幌はフレンチやイタリアンの枠組みにとらわれない
 創作料理がおいしいですよね」

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ーー2003年9月にスタートしたBS-TBSの番組『吉田類の酒場放浪記』で全国に知られるようになりました。お酒、お強いですね。

吉田先日、偶然自分の番組を観る機会がありましたが、「あんなに飲んでいるのか!」とビックリしました。5、6件はしごして、日本酒で換算したら二升分くらいは飲んでいた(笑)。それでもありがたいことに、僕は(体質的に)二日酔いをしたことがないんです。札幌にいるときはどんなに飲んでも、翌朝必ず近所の山を2時間かけて散歩しています。最近は俳句や詩、エッセイ、小説などの執筆に時間をとられて睡眠時間が少なくなるほうが大変です。



ーーお好きな作家さんや作品を教えていただけますか?

吉田夢野久作は『ドグラマグラ』が有名ですが、『氷の涯』(現代教養文庫882 夢野久作傑作選2)もいいですし、三島由紀夫の『金閣寺』も好きです。どちらも文章が美しい。人間の動物的な生理を美しい表現で読めたときに魂がやすらぐ。自分もそういう文章に近づきたいという思いで書いています。


ーー3月25日に発売された『旅人類』。公式には「たびじんるい」ですが、「たびびと・るい」とも読めます。

吉田僕にとって「旅」はライフワーク。距離を移動するという物理的な旅であると同時に、心の旅でもあります。人との出会いを含め、移動することで得られるものが自分の中に沈殿していき、人としての幅が広がっていく。
もっとも僕の場合、おいしいお酒でそれらが流れてしまい、気がつけばゼロになっていることも多いですが(笑)。でもそうしたら、また一から始めればいい。だって人生そのものが旅なんですから。





「函館・釧路を深堀りした大人の旅が詰まっています」とご本人も自信の仕上がり、
酒場詩人・吉田類責任編集『旅人類』(あるた出版)は好評発売中!



函館サイン会の導入は『旅人類』巻頭言の朗読から

3月27日、『旅人類』創刊記念トーク&サイン会の旅は前日の札幌から函館入り。午後6時から函館蔦屋書店の2階で行われた。函館は、「2度目の函館・釧路 大人の好奇心を満たす旅へ」と掲げる『旅人類』創刊号の主役となったエリアのひとつ。
来場者の中には誌面で紹介されたジャズ喫茶『café バップ』のマスター松浦善治さんや、帽子好きの類さんがオーダーメイドした『赤帽子屋』のご店主・村上幹男さんの顔もあり、まさにご当地感たっぷりの雰囲気に包まれた。



いつもはDVDレンタルの新作CMが流れるスクリーンに、この日は『旅人類』の動画が映し出された。


いよいよ定刻になり、さっそうと類さんが登場!「『旅人類』で訪れる前から何度も足を運んでいる函館には特別な思いがあります」と一言挨拶し、次に『旅人類』の巻頭言を女性スタッフのナレーションで会場の皆さんに聞いていただくことに。創刊にこめた思いを皆で共有した。

札幌のサイン会では「酒場詩人」の名にふさわしく、日本酒を傾けながらのほろ酔いトークだったが、函館の会場ではなんと〈類さん歓迎〉の気持ちを表すために地元の特産「がごめ昆布」の新しい食べ方を提案するギフトセット「函館がごめしゃぶしゃぶ」を試食する場がもうけられていた!(注:函館蔦屋書店様にご理解いただいた今回限りの特例です)
「いいのかなあ、すみませんね、皆さん」と恐縮しつつも頃合いを見て箸をのばした類さん。一口食べて「…がごめ昆布、トロトロですよ、こっちまでトロトロにとけそう。いけますねえ」と笑顔を見せた。




「道南食と観光クラスター型6次産業化推進協議会」から生まれた
ギフト商品「函館がごめしゃぶしゃぶ」。




「こんなおいしいものを食べたら飲みたくなって困りますねえ(笑)」



興味津々「類さんに聞きたい!」来場者の質問コーナー


質問 休肝日はありますか?
吉田僕にとって「中ジョッキ3杯まで」が休肝日です。

質問 好き嫌いを教えてください。
吉田キライなものはマズイもの(笑)。というのは冗談でも、やっぱり鮮度がいいものはおいしいですね。その土地でとれたものは現地で食べるのが一番。僕の田舎も自給自足が当たり前の土地でしたから、いつもとれたてのものを食べていた子ども時代が、今の味覚を作っているのかもしれません。

質問 好テレビ番組を拝見していると日本酒やビールのイメージが強いですが、カクテルとかは飲みますか?
吉田僕は、お酒はなんでも飲みます。一番好きなカクテル? マティーニです。

質問 『吉田類の酒場放浪記』では毎回最後に「それじゃあ、あと2、3軒行きますか」といって夜のまちに消えていきますが、あれは本当?
吉田ええ、行くときは4、5軒行くこともあります。ですが番組をご覧になっている全国のお父さんの教育上よろしくないので、「2、3軒」ということに(笑)。



終始なごやかな空気に包まれたトークのあとは
お楽しみのサイン会





「家族でファン」という声も多く、毎週月曜になると
「類さん始まるよ」とテレビの前に集まるという。


イベント終了後、「皆さん、本当にありがとう」とあらためて来場者に握手をしてまわる類さんが、取材先だった『café バップ』の松浦さんや『赤帽子屋』の村上さんに気づいて笑顔を交わす場面もあった。

最後、『赤帽子屋』の村上さんにお話をうかがったところ、「(類さんと)一緒に飲みたかったなあ。誌面にはまだ載っていない、いろんな穴場を案内したかった」と、ちょっぴり心残りの本音を明かしてくれた。
いやいや、きっと大丈夫。類さんがいうところの「酒縁」は、この『旅人類』をきっかけに結ばれたばかり。いつかどこかの酒場でばったり再会もありそうな「旅人・類」の旅はこれからも続くのである。


酒場詩人・吉田類責任編集『旅人類』(あるた出版)

旅人類表紙テレビやO.tone連載でおなじみの酒場詩人・吉田類さんが責任編集を務める大人の北海道旅ガイドを創刊。創刊号は「2度目の函館・釧路」をテーマに、そこでしか出会えない格別なロケーションや長く愛される酒場や喫茶店をじっくり巡ります。池内紀、川本三郎ら人気作家による旅ごころをくすぐるエッセイも必読。大人世代に向けたディープな旅をナビゲートします。



あるた出版 http://www.alter.co.jp/

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