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第601回 白老町「またたび文庫」リニューアルオープン! 

内観1

JR白老駅から徒歩5分の場所に誕生した固定店舗「またたび文庫」。営業は金土日月の12:00~18:00。イベントやワークショップも開催している。

[本のある空間紹介]
「◯◯と◯の部屋」も完備!白老町唯一のまちの本屋さん
2024年5月3日、「またたび文庫」固定店舗オープン!

[2024.5.20]

移動書店の活動を拡大し、昭和レトロな二階建てで本屋を開業

取材中、地元の方が「羽ちゃん」に会いにきた。まちの本屋さんができた感想をうかがうと、「本当にうれしいです。本を買うときはいつもAmazonか、札幌に出たついでに立ち寄るしかありませんでしたから」と目を細めて喜びの声を聞かせてくれた。

出版文化産業振興財団(JPIC)の調査によると、2024年3月時点で全国の「書店ゼロ」市町村は27.7%に上るという。
そのうち北海道は50近くの無書店自治体があると言われており、2024年5月3日以降はそのリストから白老町の名前が外れたことになる。
移動書店「またたび文庫」を運営していた地域おこし協力隊の羽地夕夏さんがその活動をさらに拡大し、町内に固定の店舗を構えたからだ。

外観

昭和の時代に建てられた二階建てを借り、できる限り自力でリノベーションした「またたび文庫」。角丸のしつらえがある窓の表情がなんとも愛らしい。

羽地 夕夏さん

「羽ちゃん」こと羽地夕夏さんは沖縄県読谷村出身。友人に誘われ白老に移住したいきさつや愛読書は下記のリンク先からご覧ください。

第566回 またたび文庫 羽地 夕夏さん

www.syoten-navi.com

定石に縛られない店づくり、人文系や絵本、寄贈された古書も販売

2024年5月3日のオープン初日や翌日は50人近くが来店し、連休中にも平均20人近くが新しい本屋の誕生を喜んだ。
クラウドファンディングで集まった支援金を投じた800冊近くの発注は、5月13日時点でまだ半数近くが納品待ち。今は隙間がある各棚がこれから埋まるのを待っている、まさに”できたてホヤホヤ”の状態だ。

北海道白老町。土地に根ざした学びと集いの場となる、「まちの本屋」をつくる! – クラウドファンディングのMotionGallery

motion-gallery.net現在の選書は金沢大学で国際社会コースを選択した羽地さんらしく哲学や歴史、文化人類学、社会課題などの人文系を中心に、地域住民から要望が多かった絵本やエッセイ、話題書もラインナップ。ゆくゆくは新刊雑誌も取り扱いを視野に入れているという。

書棚の配置は当初予定していた棚同士の背をくっつけてその外周を人が回遊する並びから変更し、ジグザグに並べて自由な動線を意識した。
細かいインデックスはつけず、店に入って右側には「ふんわりと読める」エッセイや画集、絵本等を集め、左側に「じっくり読んでほしい」タイトルとそのための椅子も並べている。

内観1

書店経験がない羽地さんだからこそ、定石に縛られない店づくりが進んでいる印象だ。

ミニコーナーのテーマ

ミニコーナーのテーマも「考える」「創る」「自然」など、羽地さんのカラーを感じるセレクトになっている。

新しい本棚は恵庭のゲンカンパニーが製作

新しい本棚は恵庭のゲンカンパニーが製作。移動できるように車輪付き。

町民から寄贈された画集や文学全集

町民から寄贈された画集や文学全集、「暮しの手帖」バックナンバーなどの古本も扱っている。

動かないタイプの本棚類は全て「使えるようだったら使って」

動かないタイプの本棚類は全て「使えるようだったら使って」と有志からいただいたもの。

開店祝いの形もいろいろ。店名入りの竹製電卓

開店祝いの形もいろいろ。店名入りの竹製電卓はキーを押すとフカっと沈んで気持ちいいのだそう。

「一人になれる」読書室や2階イベントスペースの貸し出しも

固定の店舗を持とうと動き出したときから、羽地さんには作ると決めていたものがある。
店の場所は商店街に近く、そばに白老中学校もある。「子どもたちが家でも学校でもない場所で一人になれる空間をつくりたい」。
それを実現したのが、ひとり読書室だ。

精神と時の部屋 看板

部屋の名称は皆がよく知る国民的コミックから命名。「学生1時間100円」とあるが、その下に「じゆうねだん」とやさしく書いてある。

精神と時の部屋

机は昭和の洋ダンスを大胆にリノベーション。開けた引き出しに天板を乗せて固定した発想がすごい。

羽地さん2

2025年の地域おこし協力隊任期終了後も白老町暮らしが続く羽地さん。

2階

2階のイベントスペースは貸し出しもしており、ヨガ教室などに使われている。

皆で作った白のミニチエア

皆で作った白のミニチエアは天板を乗せるとテーブルに変身する優れもの。

絵本コーナーと駐車場の看板は羽地さんの小さなお友達

絵本コーナーと駐車場の看板は羽地さんの小さなお友達、カンくん5歳が作ってくれた。

本屋さんでウエディング!家族と仲間、町民で作る「みんなの店」に

北海道で久しぶりに聞くまちの本屋の誕生は、随所に見える手作りのあたたかさと”個と集”のどちらも受け入れる現代らしい書店のあり方を感じさせる空間だった。
「まだ始まったばかりですが、この店はみんなで作る本屋さんです。これから仲間や町の人たちといろんなことを試したい。頑張ります!」という羽地さんの意欲的な一言で取材は終了。

そのあとは最近羽地さんが新しい家族に迎えた子犬のうるまちゃんの話で盛り上がった。「知り合いのところで生まれた子犬をもらい受けました。看板犬になってもらいます」。
そしてさらにうれしい話は続き、「私、結婚しました。今週の土曜にこの店で結婚式をやるんです」
……なんと、本屋さんが本屋さんで結婚式とは!10年以上続けている書店ナビ取材でも初めて耳にする吉報のお裾分けをいただいた。
お相手は同じ白老町の地域おこし協力隊で、自然ガイドをされているという。来年に控える協力隊任期終了後もこのまちに暮らし続けるという小さな家族の大きな一歩が刻まれる。

2024年春、白老町のまちの本屋さん開店です。新しい家族の門出を祝って、ぜひご来店を!

ドライ


またたび文庫

北海道白老町大町3-9-11

https://www.instagram.com/matatabibunko_hon/

営業 金・土・日・月曜 12:00~18:00
貸し読書室、コミュニティスペース有(予約可)
出店依頼や古本買取のご相談等はDMへ

処分されるところだった木製玩具。 一目見て持ち帰ってきました!

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