[2024.3.4]
2024年1月31日、染色家の柚木沙弥郎(ゆのき・さみろう)さんが101歳で天寿を全うされた。書店には「故人を悼む」ための時間も流れている。2月25日紀伊國屋書店札幌本店2階。
「リトルプレス」とも「ZINE」とも呼ばれる自費出版物の市場が近年、活気づいている。
企画やサイズ、デザインも作り手の個性が際立つ自費出版。日本各地で展示即売会が開かれ、現在札幌でもユニークな即売会が開催中だ。
会場は札幌市中央区南22西15丁目にあるギャラリー&ショップ「馬と獅子」。
「北から南までツツウラウラ いろんな読みもの、大集合。」と銘打った「日本全国ZINE/リトルプレス博覧会」に行ってきた。
日本全国ZINE/リトルプレス博覧会開催
日時:2024年2月22日(木)~3月10日(日)
営業時間:11時~19時
会場:Gallery&Shop 馬と獅子
北海道札幌市中央区南22西15 1-10猪狩ビル2F
(札幌市電 電車事業所前駅 徒歩2分)
入場無料/会期中無休
2023年9月にオープンした「馬と獅子」。市電の電車事業所前駅より徒歩2分。
企画者は「馬と獅子」オーナーの笹山浅海さん。笹山さんはマニュブックスという編集プロダクションを経営する編集者でもあり、近年勢いを見せるZINEに着目。
「自分の”好き”を思うまま表現できるZINEの、形式に捉われない自由度の高さは「既存の枠に囚われないギャラリー」を目指す我々にとって共鳴するものでした」とnoteに企画の意図を綴っている。
さらに今回は「日本全国」に出品者の枠を拡大。47都道府県ごとに笹山さんやスタッフが愛読していた、あるいは気になる作り手たちに声をかけ、1県も欠けることなく全国制覇の布陣を完成させた。
「ジャンルはさまざまですが、よくよく見ているとやはり地域性が浮かび上がってくるような気がします」と語り、笹山さん自身もZINEでできた全国マップを楽しんでいるようだ。
「北海道」枠は佐藤優子、Futaba.、Cadbunny、志賀康洋の4組が出品。
「関東」「中部」「関西」などエリアごとに展示されている。
左)ZINE界隈では早くから名が知られている『名古屋渋ビル手帖』。
右)マッチ箱ZINE!奈良県から「喫茶若草山」。可愛くて2つ買った。
神奈川県でリトルプレスを作るサンズイ舎。学術書のような専門性の高さと読みやすさが共存する『漁民の芸術Ⅰ』で三浦半島の漁民文化に迫る。
香川県の『サン』。「みんなの作品が好きすぎて本にしました」という愛情爆発のアートブック。「全人類が震えた」シールもZINEならありなのだ。
東北エリア。秋田県民にとって鰰(ハタハタ)がどういう存在かを伝える『鰰 本体接岸』。内容も写真も装画も何もかもがステキだった。
この「日本全国ZINE/リトルプレス博覧会」は、3月10日まで「馬と獅子」で開催され、3月11日からオンライン開催へと移行する(4月10日まで)
「会期中行けなかった」という方は、ぜひそちらをのぞいてほしい。オンラインショップのURLや各ZINEの紹介は「馬と獅子」Instaで随時アップされていく。
書店ナビで何回もご紹介している民間図書館「まちライブラリー」。単なる本の貸し借りの場ではなく、まちづくりの拠点や「居場所」「サードプレイス」としての役割が認知され、今では海外も含めて全国約1100カ所に拡大。
北海道にも大小さまざまなまちライブラリーが52カ所存在している。
その第一号は大阪から。提唱者である礒井純充さんの熱い思いから始まった。
2024年2月に刊行された『「まちライブラリー」の研究 「個」が主役になれる社会的資本づくり』はその足跡を振り返り、学術的に分析・考察した磯井さんの最新刊。
この新刊発売を記念して、本書にも登場するまちライブラリー@ちとせでトークイベントが開催される。 本でまちづくりができないかと考える人や本好きさんと繋がりたい人たちの新たな出会いの場になりそうだ。
3/24(日)14:00~
場所:まちライブラリー@ちとせ
『「まちライブラリー」の研究』について話す会@まちライブラリー@ちとせ
千歳市末広6-3 アルファ千歳ビル1階
※1時間半くらいを予定しています。
参加申し込みは下記のメールアドレスか電話にて。
・メール:machilibrary.chitose@gmail.com
・電話0123-21-8530
札幌・北18条に新刊書店Seesaw Booksがオープンして今年は3年目に突入する。オーナーは出版社の営業職だったこともある神輝哉さん。
2階は生活に困窮した人々のためのシェルターがあり、「シェルターありき」で始まった全国でも珍しい形態が注目を集めている。
第530回 UNTAPPED HOSTELが作る新刊書店「Seesaw Books」
書店に来てもらうための企画も多く、札幌では珍しい棚オーナー制度の導入やトークイベントも積極的に開催。
社会活動や異文化理解、LGBTQなど自分の視野を広げるテーマに関心を持つ人々が集まっている印象だ。
Seesaw Booksの運営会社であるPLOWは、2023年から新たに生前整理や遺品整理の終活窓口事業もスタート。
さらに2024年2月からは古書の取り扱いも始めるという。
この記事を書いている2月末段階では、出張買取の告知が始まったばかり(店頭での扱いは「まだ少し先」になるそう)。
暮らしの整理収納を考える時、本と書棚の存在は大きく、終活世代の方々から「読まなくなった本を引き取ってもらってスッキリした」という声も聞こえてくる。
神さんとその仲間たちによる古書サービスも同じ文脈にあり、一度読まれた本がやがて北18条界隈に暮らす若い誰かに読み継がれる未来も見てみたい。
関心がある方はぜひ上記のお問い合わせ先まで。
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