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第464回 「札幌スタイル」つくり手たちのMyBestBook

「札幌スタイル」つくり手たちのMyBestBook

[イベント紹介]
札幌市図書・情報館で開催中!
「札幌スタイル」つくり手たちのMyBestBook

[2020.2.24]

企画中止のお知らせ(札幌スタイル企画展示)

2/27から後半展示予定だった札幌スタイルの企画展示ですが、
コロナウイルスの影響で、残念ながら中止が決定しました。
(2/25が展示終了日となります。)




今月13日から札幌市が認証する地域ブランド「札幌スタイル」と、2019年にライブラリー・オブ・ザイヤーに輝いた札幌市図書・情報館のコラボ企画が始まっている。
タイトルは《「札幌スタイル」つくり手たちのMyBestBook》(以下、MyBestBook)。作家が選ぶ《大切な一冊》と認証製品を並べて展示中だ。

展示スペース

展示スペースは札幌市図書・情報館1階。入って右手の柱の奥にある。木工からレザー、文具、スキンケア、スーツまで幅広い「札幌スタイル」製品が楽しめる。

展示には「札幌スタイル」認証の21社が参加。

今回北海道書店ナビでは4名の方々にご協力いただき、MyBestBook選書の理由をさらに詳しく掘り下げるメール取材を実施。
あの商品を作ったひとは一体どんな本に影響を受けているのか――。
4人の回答からそれぞれのものづくりの源泉が見えてきた。

MyBestBook1
「デザインとは?」を教えてくれた梅原流ものづくり

選者/モリタ株式会社 常務取締役 近藤篤祐さん

札幌スタイル認証商品/紙箱収納 MiNiMuM-Space(ミニマムスペース)

MyBestBook/
ニッポンの風景をつくりなおせ
梅原真  羽鳥書店

手に取ったきっかけ

いまから12年ほど前、著者である高知県在住のデザイナー梅原真さんの講演会を聴く機会があり、デザインによってローカルの価値を見出していく梅原さんの仕事に感銘を受けました。その後この本が刊行され、すかさず購入しました。

私はもともと商社の営業マンで、縁あって紙箱・パッケージをつくる仕事に就きましたが、それまでデザインのデの字も意識したことがありませんでした。何となく、ではありましたが「よい包装パッケージづくりにはデザインを重要視すべきだ」と思い立ち、デザイン学校の夜間部に通いグラフィックデザインを学びました。

当初デザインとは「カッコよくするもの」「キレイにみせるもの」といった表層的なイメージを持っていましたが、少しずつデザイン制作や考え方が理解できるようになりかけた頃に出会ったのが、この本です。
その後さまざまなデザイナーさんとの仕事やコラボ企画の「ハコマ」などを積み重ね、今回札幌スタイルに認証していただいた当社のオリジナル製品「ミニマムスペース」の開発へとデザインの領域を拡げています。

特に好きな場面・セリフ

高知県馬路村で作ったゆずポン酢のネーミングを梅原さんが「ゆずの村」と提案したとき、依頼者である農協の係長さんは「村」であることにコンプレックスを持ち「町」と表現して欲しかったというエピソード。
ところがその後「ゆずの村」が大ヒットし、係長さんは「村」のネーミングで大正解だったことに気づきます。
小さいからこそ魅力があるということは、当事者にはなかなかわからないもの。デザインとは「ものの本質的な魅力を見出し、それを最大限にして受け手に伝えること」だと教えてくれるエピソードです。

紙箱収納MiNiMuM-Space(ミニマムスペース)

モリタのノウハウを注いだ「紙箱収納MiNiMuM-Space(ミニマムスペース)」。

ニッポンの風景をつくりなおせ

読んでいるうちにそのまちを訪ねたくなる『ニッポンの風景をつくりなおせ』。

『ニッポンの風景をつくりなおせ』は、梅原さんが手がけたローカルデザインのセルフ解説付き事例集です。ローカルの人たちが「○○しか無い」「何もない」と思っているもの自体に実は大きな魅力が隠されているということがよくわかります。
同じ時期に刊行された『おまんのモノサシ持ちや! 土佐の反骨デザイナー梅原真の流儀』(篠原匡著・日本経済新聞出版社)は第三者による解説書なので2冊セットで読むとより理解が深まります。

普段の愛読書

生き方

生き方
稲盛和夫  サンマーク出版


世界的メーカー・京セラ創業者の稲盛さんは現代を代表する名経営者。その経営哲学は《人間哲学》であり、《ものづくり哲学》でもあり、あまりに生真面目かつストイックなので、ややもすれば宗教的と評されることもあるほどです。書いてあること全てを受け入れるかどうかは読み手次第ですが、それでも価値観や生き方が刻々と変化している今だからこそ、忘れてはならない人生の要諦が示されていると、私は思います。

MyBestBook2
羊に関わる全ての人が推した白糠町の羊飼いのことば

選者/Fu’s room 藤崎浩一さん

札幌スタイル認証製品/Suffolk Leather (サフォークレザー)がま口シリーズ

MyBestBook/
ヒツジの絵本  むとうこうじ スズキコージ  農山漁村文化協会

手に取ったきっかけ

羊革の開発の際、羊に携わる多くの方々からご意見を頂戴しましたが、牧場関係者、羊毛を扱う小売店、羊毛作家さんなど様々な分野でご活躍されている皆様からムトウさんのお名前を何度もお聞きしました。
白糠町で茶路めん羊牧場を営む北海道の第一人者として、多くの方から信頼されている方の著書を読みたいと思い、手に取りました。

「サフォークレザー」。

食肉加工後に捨てられていた士別市の羊の原皮を使った「サフォークレザー」。タンニンなめしのやさしさが毎日使うがま口にぴったりだ。

スズキコージさんののびやかな絵

道民こそ案外、羊のことを知らないもの。スズキコージさんののびやかな絵に誘われて、読み終わるころには羊がさらに身近な存在に。

特に好きな場面・セリフ

物があふれて豊かな日本の社会では衣食住はお金を出せば簡単に手に入るよね。
でも君のからだの中には衣食住を自分の手で創りだせる力が備わっているんだよ。

あとがきの一文です。

普段の愛読書

人生の地図

人生の地図
高橋歩  A‐Works


あまり本は読みませんが、この本は15年くらい前に頂き、今でも迷った時にたまにページを開いてはその言葉に頷いたりしています。展示スペースその2

 

MyBestBook3
根っこの気持ちに戻してくれるタッチィのクリスマス

選者/hikuidori 小笠原未季さん

札幌スタイル認証製品/とろり展示スペースその2

MyBestBook/

ねんにいちどのおきゃくさま

ねんにいちどのおきゃくさま
亀岡亜希子  文溪堂

手に取ったきっかけ

図書館や本屋さんが昔から好きでよく行きます。学校に馴染めない子供だったので、本のある空間のニュートラルな雰囲気がオアシスでした。この本に出会ったのは勤めていた家具製作会社を退職して、hikuidoriを立ち上げた年のクリスマス前。本屋さんでたまたま手に取って、少し読んでもう泣けてきてしました(悲しいお話ではないのに)。
主人公はオコジョのタッチィ。絵本ならではのシンプルさで、タッチィの気持ちがぎゅんぎゅん伝わってきて愛しくて苦しくなります。絵もすごくいいんです。

特に好きな場面・セリフ

タッチィが大好きなお客さまのためにクリスマスの準備をする。それも周りにあるもので、すごく素敵なクリスマスを作り上げるんです。
さっきまでしょんぼりしていたタッチィが「思いついた!」から夢中になって準備していくところにすごく共感します。

そしてそこにやって来た”お客さま”であるヤーコポの言葉。

「ぼくのために?なんてすばらしいんだろう。ありがとう、タッチィ。
こんなにすてきなクリスマスって、ほかにはないよ。どこにもないよ!」

私自身、常日頃から見たことのないもの、どこにもないものを作りたいと思っているので、「どこにもないよ!」の言葉がすごく響きます。
タッチィの気持ちを真正面から受け止めるヤーコポの人柄も感じられて、とっても大好きな場面です。

幼いころからとにかく何かを作るのが好きで、それをずっと続けてきて、さらにそれが仕事になると「作ること」に色々な要素が複雑に絡み合ってきます。

この本には「思いついたから作りたい!」「喜ばせたい!」「あの素敵な1日をまた迎えたい!」というシンプルな衝動が詰まっていて、何かをつくる時の根っこの気持ちに戻れる気がします。

普段の愛読書

虫と歌 市川春子商品集

虫と歌 市川春子作品集
市川春子  講談社

漫画が好きでよく読みますが、あえてひとつ挙げるならこの本。圧倒的にすごい才能すぎて読むたびに発見や感動があります。

MyBestBook4
切り絵の花に魅せられて、ものづくりと色に開眼

選者/Rikospoppo 吉田絵里子さん

札幌スタイル認証製品/氷滴square / 小さな風景

展示スペースその2

MyBestBook/

花さき山

花さき山
斎藤隆介 滝平二郎  岩崎書店

手に取ったきっかけ

最初に滝平二郎さんの花の切り絵に出会ったのは、小学5年生の学芸会の劇。同じ斎藤隆介作の「ゆき」でその挿絵に触れ、「花咲き山」は中学校の道徳の授業で取り上げられました。

特に好きな場面・セリフ

この 花さき山 いちめんの 花は
みんな こうしてさいたんだ。
つらいのを しんぼうして
じぶんのことより ひとのことを おもって
なみだを いっぱい ためて しんぼうすると、
その やさしさと、 けなげさが、 こうして花になって、 咲きだすのだ。

このページの言葉と絵が一番印象に残っています。
きっとこの本のメインですね。

普段の愛読書

ふくわらい

ふくわらい
西加奈子  朝日新聞出版

最近は甥っ子と一緒に絵本も読みますが、小説を読むことが多いです。西加奈子さんが好きで、一冊あげるのであればこれでしょうか。ハッピーエンドと括ってよいのかわかりませんが、不思議な世界観に引き込まれた一冊でした。 

選書本

またこれらのMyBestBookとあわせて札幌市図書・情報館も<ものづくりに関連した本>をピックアップ。北海道の作家たちが執筆あるいは登場する本も並んでいる。
展示の担当者に「館内にものづくりを応援する棚はありますか?」と聞いたところ、以下の回答もいただいた。
「ものづくりの概念はとても広く、札幌スタイルの認証製品を見ても生活用品から家具、アクセサリー、音楽まで幅広さを実感します。
どの棚がヒントになるかはつくり手のみなさん次第だと思いますので、私たちからはあえて“すべての棚で応援しています!”と言わせてください。
迷われたときは、2階リサーチ・カウンターまで気軽にお越しください。私たち司書がご案内します」

 

展示スペースその3

本から受けとった発見や衝撃が製品に昇華され、手に取る人々の心を動かしていく。作家の読み手としての一面を明かす《「札幌スタイル」つくり手たちのMyBestBook》は現在好評開催中!
札幌から旅立つ、あるいは札幌にやってくる人も多くなるこれからの季節、「札幌スタイルって何?」と知らない人たちにもぜひ足を止めてほしい上質なコラボ企画をどうぞ、お見逃しなく。

「札幌スタイル」つくり手たちのMyBestBook

日時:2020年2月13日(木)~2月25日(火)
平日9:00~21:00 土日・祝日10:00~18:00
会場:札幌市図書・情報館1階 
札幌市中央区北1条西1丁目 札幌市民交流プラザ1階

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