「まちで本とあそぶ9月」をテーマに、今年も1カ月に渡り、北海道各地で本にまつわる楽しいイベントが開催された「北海道ブックフェス2016」。
北海道書店ナビもイベント2カ所を訪ね、現場の盛り上がりを目の当たりにしてきました。
前編のユニークな出版社フェア「旅する灯台」に続いて後編の今週は社会人によるビブリオバトルの模様をご紹介します。
前編の記事「アノニマ・スタジオ「旅する灯台」ブックフェア at zee」はこちら!
チャンピオンではなく「チャンプ本」を決める、本が主役のビブリトバトル。
[2016.10.31]
ブックカフェ「cafeN24」がビブリオバトルの会場に
札幌市円山のセレクトショップ「zee」さんでのブックフェア「旅する灯台」を見に行った3日後の9月29日(木)、私たちは北24条にあるかわいらしいブックカフェ「cafe N24 by kodomosekai」さんに来ていました。
この日、北海道ブックフェス2016の実行委員長、尾崎実帆子さんの仲介により同店でビブリオバトルが開かれるとのこと。
これまで北海道書店ナビでは数度にわたり、知的書評合戦ビブリオバトルを紹介してきましたが、過去の参加者がほぼ全員学生さんだったのに対して今回ははじめて社会人サークルによるビブリオバトルに密着!どんな書評合戦になるのか、楽しみにしてきました。
北海道でビブリオバトルを広める「さっぽろビブル」
社会人が集まりやすい夜6時半の開始時間を前に、「こんにちは!」一番乗りでやってきたのは、主催者の角谷舞子さん。社会人ビブリオバトルサークル「さっぽろビブル」の副代表をお務めです。
さっぽろビブルは今年の12月で4年目を迎える社会人の読書サークル。北海道でのビブリオバトル普及を推進するなど、本に関するイベントの企画・開催をしています。
じきに参加者が集まり出し、バトラー7人が全員集合。3人と4人の2回に分けて行うことになりました。
熱心にメモをとり、質問タイムも白熱!
1回目のバトルに出てきた本は、椎名誠著『全日本食えば食える図鑑』(新潮社)と、永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)、ジョージ・オーウェル著『動物農場』(角川書店)
「”ゲテもの食い”を自分の食文化にないからといって全否定するのではなく、食べるにはなんらかの文化的理由があることを考えるようになる」椎名誠の食エッセイや、「摂食障害の著者が生きづらさと向き合う姿に共感するところもあり、共感できないと思ったところにも読後少し近づけたような気がする」コミックエッセイ、「人間の独裁から豚の独裁へとって変わっていくだけ」のソ連共産主義を痛烈に批判した寓話小説が紹介されました。
ここで気づいたのは、参加者の皆さんがメモを取りながら聞いていること。3分間の質問タイムも次々と質問が飛び出し、学生ビブリオバトルとはひと味ちがった参加姿勢を感じました。
「それでは、チャンプ本だと思う一冊を指さしてください。せーの!」進行役の角谷さんの号令で1回目のチャンプ本が決定(のちほどご紹介します)。あたたかい拍手が送られました。
いまでいうブラック企業本?驚きのバトル本チェンジ?
休憩中、「今度読書バーに行きませんか?」「そこ、行ったことあります」と会話が弾むのも、社会人同士の開かれたコミュニケーションならでは。
続いて後半の4人が2回目のバトルに挑みます。
バトル本は、フランク・ハーバート著『デューン 砂の惑星』(早川書房)、トニー・ロビンソン著『図説「最悪」の仕事の歴史』(原書房)、『メンタリストDaiGoの心を強くする300の言葉』(セブン&アイ出版)、桜庭一樹著『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』(角川グループパブリッシング)。
漫画家石ノ森章太郎が表紙と挿絵を描いた初版本に魅せられて『砂の惑星』にハマったというバトラーさんは、「現在はもう違う装丁になっていますが、図書館でなら石ノ森版を読むことができます」とアピール。思い入れが伝わってきます。
こちらのバトラーさんは冒頭、獅子文六著『コーヒーと恋愛』(筑摩書房)を解説し始めたのでふむふむと聞いていたら、「でも本当は寝食を忘れるほど読んだ本はこちらです!」と、途中からいきなり桜庭一樹本に驚きのチェンジ!
全員「ええええー!」。場をおおいに盛り上げてくれました。
大好きな本について語れる5分間を楽しむ
こうして4人のプレゼンが終わり、1回目とあわせてこの日、2冊のチャンプ本が決定!熱気あふれる社会人ビブリオバトルが幕を下ろしました。
チャンプ本のおふたりを含む参加者のみなさんに改めてビブリオバトルの面白さを聞いたところ、「生涯で自分が読める本は限られていますが、みなさんから概略だけでも知らなかった本を教えてもらえる」といった声や「本を通したスポーツ感覚なので終わったあとに清々しい気持ちになる」との回答が。
さっぽろビブルの角谷さんも「慣れないころは自分でタイマーを設定して練習したこともありますが、大事なのは与えられた5分間を”緊張の時間”と考えないで、楽しむこと。”大好きな本について語れる5分間なんだ”と思えるようになってから本当に面白くなりました」と、楽しむコツを語ってくれました。
私たち取材班が現場に密着してもうひとつ気づいたことは、ビブリオバトルの会場も実は大事な盛り上げ役になってくれるということ。
というのも、この日お店の一画を提供してくれたcafe N24さんの店内には、岩波少年文庫をはじめとする国内外の名作児童文学がずらりと並び、きっと「かつてのこどもたち」も読書意欲をおおいに刺激されたはず。
膝をつきあわせて、というほどよい小空間も、バトラーのみなさんの心の距離を縮めてくれたようでした。
ビブリオバトルは北海道ブックフェス期間に限らず、常時各地で開催されています。社会人はもちろん学生も楽しめるビブリオバトル、あなたも体験してみませんか?
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