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北海道書店ナビ  第125回 アテネ書房駅前支店

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心を揺さぶる一冊との出会いは人生の宝物。書店独自のこだわりやオススメ本を参考に、さあ、書店巡りの旅に出かけてみませんか?


『こちらのお店は閉店しました。』

北海道の書店の足跡を残すという意味においても、この店の閉店は店長の思いごとここに綴っておきたい。そう思って札幌駅前通りに立つアテネ書房を訪ねた。6月30日の閉店まであと約1カ月。店を去るのが名残惜しい回となった。「[2013.5.27]

[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=-sovYyV4S_w]

2011年8月の北海道書店ナビ第40回にもご登場いただいたアテネ書房の中津川操店長。当時も決して楽観視できない経営状況だったが、長年の常連客に支えられての毎日にとうとう決断をしなければならないときがやってきた。
「ネットで本が買える時代になり、コンビニや古書店、大型書店、電子書籍とライバルは増えるばかり。そしてなんといっても決定打は駅前に地下歩行空間ができて地上を人が歩かなくなったこと。この先どうしようと思っていたところに場所の契約などいろんな節目がきたので、今年の6月30日をもって閉店することになりました」。そう決めた半年前から徐々に常連客に伝え始め、たくさんの惜しむ声や思い出話に包まれながら気持ちの整理を続けている。

アテネ書房は1948年創業。すすきの店から始まり、いっとき狸小路にも店を出したがすぐにたたみ、その後にできたのがここ駅前店だった。「うちの先代がどうしても駅前通りに店を出すことにこだわって。車がなくてもお客様が気軽に来れる場所に出したいと話していたようです」

2年前に取材した時点ですでに話題に出ていたのは、個人書店に新刊や話題書が入りづらくなってきた出版業界全体の仕組み。確実に数が出る大手が優先され、それ以外の書店は数えるほど。だが、アテネ書房の常連客たちはあきらめなかった。なんと他店の検索機で調べて出てきたシートをそのまま店に持参し、「“これ、頼んでおいて”って言うんです(笑)。目の前にあるのに買うのはいつもうち、と決めている方や新刊なのに“ずっと待ってるから”と言ってくださる方もいて。本当にいいお客様に恵まれた歳月でした」

勤務27年を振り返ると、「いろんな新刊との出会いも楽しかったですし、お客様と本の話や世間話をするのも楽しかった。やめようと思ったことは一度もありませんでした」と店への愛情を口にする中津川さん。「うちの店が小さすぎるのもありますが、大きい本屋さんに行くとどうしていいかわからなくなる(笑)。お客様が“店の中を二周して何も買わないで出てきた”と話していた気持ちがよくわかります」。だからうちがたたんだあとの常連さんのことを思うと本当に申し訳なくて、と残念そうにつぶやいた。

開業65年の歴史に幕を引こうとするいま、中津川さんは本への思いをあらためてこう語る。「本には自分が体験できないことやいろんな物語が詰まっています。本を通じてはじめて知ることはいくつになってもあるし、他の人はこう考えるんだという驚きも。これからどんな時代がきても書店という空間はなくならない。皆さん、ぜひ書店に足を運んでくださいね」。

最終日は2013年6月30日の日曜日。夕方5時で店を閉める。「晴れるといいなぁ」。
Store picture

「これまでご愛顧いただいた皆様、本当にありがとうございました」(中津川店長)


Basic information

【  住    所  】北海道札幌市中央区北2条西3丁目
【 閉店日時】2013年6月30日17:00

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