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北海道書店ナビ  第87回 札幌明正堂書店元町店

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心を揺さぶる一冊との出会いは人生の宝物。書店独自のこだわりやオススメ本を参考に、さあ、書店巡りの旅に出かけてみませんか?
『こちらのお店は閉店しました。』

札幌東区の西友元町北二十四条店1階「札幌明正堂書店」は2000年の開店以来、月に一度読み聞かせの「おはなし会」を続けている。7月15日はいま話題の絵本「地獄」と「極楽」の2冊を読むと聞き、興味津々の書店ナビも駆けつけた。【2012.7.30】

[youtube:http://www.youtube.com/watch?v=GGzkn4CO0fY]

7月15日(日)の朝10時、明正堂元町店を訪ねると以前麻生店でも参加無料の「おはなし会」をやっていた小笠原聖子店長が迎えてくれた。聞けば元町店には2000年6月の開店当時から勤務しており、異動や兼任を経て今年6月から再び同店専任になったのだという。

「以前麻生でもやっていた『おはなし会』はこの元町店が出発点。絵本の読み聞かせを親子のふれあいに活かしてもらえたら、と始めて今年で12年。今日で143回目になります」。
幸い、会には子どもたちの心を瞬時にとらえる読み聞かせの名人もいれば、絵心を持ち器用な手先で楽しい紙芝居を作ってくれるスタッフにも恵まれた。開催日時は毎週第三日曜の午前10時半から30分間。このときだけ店の一角を整理してマットを敷き、多いときは30人が座れる場所を用意する。その手間を考えても関係者全員の熱意なしでは実現しえなかった歳月だ。

取材当日に選ばれた絵本はいま評判の「地獄」と「極楽」。前者は漫画家の東村アキコ氏が子育てコミック「ママはテンパリスト」4巻の中で「うちの子はこの本のおかげで悪さをしなくなりました」と紹介してから大ブレイク。「極楽」はその姉妹本にあたる。
通常は前半が絵本の読み聞かせ、後半は手作り紙芝居の二本立てだが、「やはり『地獄』ときたら『極楽』も」と店側が考え、いつもと違う変則バージョンで構成した。

開始時間を迎え、「地獄」の読み手はアルバイトの清水孝俊さんが務めた。約20人の子どもたちを前に「読み聞かせをするのは今日が初めて。ドキドキしているけどがんばって読みます!」といい、ページをめくり始めた。実はこの清水さん、児童向けの演劇経験があり、喜怒哀楽をこめたせりふ回しや声音の使い分けはお手のもの。閻魔大王の裁きの場面ではさっと鬼の面をかぶり、恐ろしいドラ声で子どもたちを釘づけにした。
続いて女性の先輩スタッフが「極楽」を読み始めた。「観音様が出てきました。男の人かな?女の人かな?」と、ときおり子どもたちに問いかけて注意をひきつけるワザはさすがベテラン。出番を終えた清水さんも真剣に聞いていた。

リピーターが多い元町店のおはなし会。「参加後に子どもが座って人の話を聞けるようになった」といううれしい声も寄せられた。



終了後、小学3年生の女の子を連れてきたお母さんに話を聞いた。「仕事が司書なので、職場でも『地獄』の読み聞かせをするかどうか話し合ったことがありました。そのときは子どもたちへの影響が強すぎるのでは、と立ち消えになったので、今日ここで子どもたちが予想以上に熱心に聞いてる姿を見て参考になりました」。女の子にも「どっちが面白かった?」と尋ねると、返事は「じごく」。おはなし会で得たそれぞれの気づきを親子で持ち帰る。

スタッフの手作りで始めた札幌明正堂書店元町店のおはなし会は、きっとこれからも「楽しく温かな30分」を積み重ねていくだろう。まずは12年の歳月を彩ってくれた何組もの親子に、そして日々の雑事に負けずこの会を続けてきたスタッフに大きな拍手を贈りたい。
Store picture

参加者は店のお手製カードにスタンプを押してもらえる。



12年間スタッフが描きためた手作り紙芝居のストック。「うちのお宝です」(小笠原店長)


Basic information
【  住    所  】札幌市東区北24条東20丁目4-1西友元町店内
【 電 話 番 号】011-785-8877
【 営 業 時 間】9:00〜22:00
【 定  休 日  】年中無休

小笠原店長がセレクト!3冊のおすすめ本

1)塩野七生著「ローマから日本が見える」(集英社)
この本は将来日本語教師を目指している清水くんのおすすめです。現代日本の混迷脱却のヒントをローマ史から探る名著「ローマ人の物語」の著者塩野七生さんがおなじみの簡潔かつ軽妙な語り口で綴る一冊。塩野作品は長編が多いですが、これはとにかくコンパクトで読みやすさが魅力。指導者論としてもおすすめできます。
2)久保俊治著「羆撃ち」(小学館)
店頭ではスタッフのツテでいただいた著者のサインも一緒に並べてあります。自然の中で人間が生きるということは、変わりつつある生態系の中で動物たちが生き延びていくということはー。本来は「生きていく」ための行為であった狩猟を職業に選んだ著者の生き様や森の中での孤独感、張りつめた緊張感、それらすべてをかたわらで見守る相棒のアイヌ犬フチの存在がたまらなく愛おしい。読後身が引き締まる思いのノンフィクションです。
魅力的な装丁本)なかやみわ著「そらまめくんとめだかのこ」(福音館書店)
12年前、やりたい気持ちはあってもまったく手探り状態だった「おはなし会」を前に進めてくれた絵本です。読み聞かせにはどんな本がふさわしいのか、探しまくっていたときにこのほんわかとした表紙の「そらまめくんシリーズ」を見つけ、手に取ってみるとお話も絵もかわいらしいうえに物語も温かい。「これしかない!」と記念すべき第一回に登場してもらいました。緑がきれいな今の季節にぴったり。ぜひ親子で読んでいただきたいです。

札幌明正堂書店のフェア情報

サバイバルフェア(朝日新聞社)開催中~2012年8月30日まで
小学中学年~対象 オールカラーの科学漫画。シリーズ32点大人もはまってしまう面白さ!夏休みの自由研究におすすめ!科学の達人になること間違いなし!!

週間売筋ランキング 対象期間 平成24年7月15日~7月21日

文庫
第1位:「彼女は存在しない」 浦賀和宏 著(幻冬社)
第2位:「インビジブルレイン」 誉田哲也 著(光文社)
第3位:「贖罪」 湊かなえ 著(双葉社)
文芸書
第1位:「桃栗三年美女三十年」」 林真理子 著  (マガジンハウス)
第2位:「おやじダイエット部の奇跡」 桐山秀樹 著 (マガジンハウス)
第3位:「禅が教えてくれる美しい人を作る「所作」の基本」 枡野俊明 著(幻冬社)
趣味生活書
第1位:「ココロの盗み方教えます→」 植木理恵 著 (光文社)
第2位:「他人の「裏の顔」が怖いくらいにわかる!悪魔の「誕生日」事典」 真木あかり 著(宝島社)
第3位::「50℃洗い」 (小学館)
児童書
第1位:「かいけつゾロリのメカメカ大さくせん」 原ゆたか 著(ポプラ社)
第2位:「ONE PIECE」 尾田栄一郎 原作 (集英社みらい文庫)
第3位:「ディズニーゴールデンコレクション トイ・ストーリー」 (永岡書店)

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