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第527回 ライフオーガナイザー OPT LIFE代表 戸井 由貴子さん

Vol.193 ライフオーガナイザー OPT LIFE代表 戸井 由貴子さん

戸井由貴子さん

日本ライフオーガナイザー協会が認定する「マスターライフオーガナイザーR」の資格も持つ戸井由貴子さん。オンライン取材でお話をうかがった。

[本日のフルコース]
心と暮らしを整えるプロがこの本だけは手放さない!
「なーんかうまくいってないモヤモヤを改善する本」フルコース

[2021.9.20]

心と暮らしを整えるプロがこの本だけは手放さない! 「なーんかうまくいってないモヤモヤを改善する本」フルコース

書店ナビ「ライフオーガナイザー」とは「暮らし・人生の最適化支援の専門家」のこと(一般社団法人日本ライフオーガナイザー協会の公式サイトより。日本ライフオーガナイザー協会はアメリカで1980年代に誕生したプロフェッショナル・オーガナイザーの流れを受け、髙原真由美さんが2008年に設立)。

「ああ、片づけや整理収納のアドバイザーね」と思う方も少なくないと思いますが、その活動の最終到達点は「暮らしや人生そのものを整えること」。
部屋の片づけを始める前に「どういう暮らしを送りたいのか」と根底から考えられるよう、サポートしてくれる資格です。

札幌を中心に活動する戸井さんご自身も、子育てや家事に追われて「片づけられない時代」を過ごした経験がおありだったとか。

戸井もともと家事に苦手意識があり、いわゆる”おかあさん業”に大苦戦した時期がありました。これ、謙遜じゃないんです。家の中が本当にすごかったんです(笑)。
「私だけがちゃんと”おかあさん業”ができていないんだ…」と悩んでいた頃に祖父が突然入院し、その一週間後に亡くなりました。

そのときです。もし自分に何かあって一週間後に…となったら、家の中も私の人生も最後を迎える心づもりが全くできていない。
「このままではダメだ!」と思い、ネットで知った日本ライフオーガナイザー協会の講座に通い出したのが始まりです。

書店ナビそこから勉強を続け、ライフオーガナイザー1級を取得後は2014年1月に独立。2019年には株式会社OPT LIFEを設立し、現在は後進を育成するマスターライフオーガナイザーR(協会認定講師)としても活動されています。

実は戸井さんに「本のフルコース」を依頼したのは、戸井さんのブログを見て本の整理について非常に明確な判断基準、すなわち「感銘を受けすぎてもう1度絶対に読みたい本以外は読んだらすぐ手放す」というルールを設けていることを拝読したからなんです。

本の入口と出口ー入手から手放すまでー – 暮らし最適化 IDEA NOTE

kurashi-saitekika.com

書店ナビその判断基準をクリアーして、今、戸井さんの手元に残っている本は一体どんな本なんだろう、と知りたくなり「フルコース」づくりをお願いしました。
楽しい「焼肉」になぞらえてくれた戸井さんのフルコース、早速見てまいりましょう!

[本日のフルコース]
心と暮らしを整えるプロがこの本だけは手放さない!
「なーんかうまくいってないモヤモヤを改善する本」フルコース

クラフトビールをジョッキで! まず「心の片づけ方」を知る

しなやかに生きる心の片づけ

しなやかに生きる心の片づけ
渡辺奈都子  大和書房
カウンセラー歴20年の著者がライフオーガナイズや心理学の知識を交えて「心の荷物の片づけ方」について紹介している本。圧が強い自己啓発書や心の繊細さに向き合うハウツー本ではなく、ニュートラルにいまを大切に生きる状態に持っていくヒントがたくさん掲載されています。

戸井私も所属する日本ライフオーガナイザー協会の認定本部講師である渡辺さんが2015年に出された本です。私の本棚は基本的に仕事の参考書ばかりなんですが、その中でもこの本は、当時まだ駆け出しだった私にガツンと衝撃を与えてくれた特別な一冊。
読めば、この本だけでお腹いっぱいになってしまうくらいの満足度があるので「クラフトビールのジョッキ」にたとえてみました。

「心が片づく」と聞くと、皆さん、「ポジティブな状態」を想像されると思うんですが、一年365日いつもキラキラと輝いていなくてもいいんです(笑)。
むしろそこばかりを目指して無理をすると、自分と他人を必要以上に比較してしまったりして、さらに落ち込んでしまいがちに。
そうではなくて、〈調子が良すぎもなく悪すぎもない、ニュートラルな状態を自覚する〉。そこが大切なポイントです。

これと同じ文脈で考えていくと、部屋が散らかっている方は概して〈過去〉と〈未来〉のもので部屋が埋め尽くされています。過去の栄光や思い出に執着し、同時に「まだ使うかも」「いつか使うかも」という未来への不安にも縛られている。
そうした執着やこだわりを捨てて、目の前の〈いま〉に集中する。その大切さをこの本が教えてくれます。

書店ナビそういう「心の整え方」は教育現場では教わりませんが、生きていくうえですごく大切なことですね。

戸井この本を思春期のお子さんに読ませたり、子どもが独立するときに持たせる同業者も多いです。我が家も小学6先生の時に渡して、中学生になった今も読み直しています。

モヤモヤした気持ちを抱える思春期は何かとネガティブになりがちですが、そこから自力でニュートラルに戻せる方法を知っているだけでも、きっとラクになると思うんです。
何も知らないまま、自分や他人を傷つけるようなことが減ったらいいなという願いを込めて、若い方にもぜひ読んでほしいですね。

牛タン塩 「いい習慣」が身につく自分になろう!

小さな習慣

小さな習慣
スティーヴン・ガイズ  ダイヤモンド社
《ビール》を飲んで気持ちがアガり、次は自分の生活を変えたくなったり新しい何かに取り組みたくなった時は、ぜひこの本を。世の中に習慣本はたくさんありますが、本書は精神論に頼らず科学的なエビデンスに基づいて「小さな習慣」づけをすすめる優しい構成になっています。 

書店ナビ原題は”Mini Habits : Smaller Habits, Bigger Results”。まさにこの通りの内容で、「目標はとにかく小さくていい!小さい善を習慣にしていけばいいんだ!」という著者の主張にめちゃくちゃ励まされました。

戸井片づけも、最初から家の隅々まで片づけようと思うと、どうしても途中で手が出なくなる。それよりも目標を小さくして習慣にしていったほうが、最終的には早くゴールに到達できると著者は説いています。

私のコンサルティングでもよく「自分は三日坊主で…」という声を聞きますが、そういう方ほど「やるからにはこうあらねば!」と高い目標を掲げる完璧主義の方が多いように感じます。
日記だったら一日一行でもいいし、洗面台で使ったドライヤーをもとに戻すだけでもいい。失敗をしない方法を続けたほうが自分にOKを出せますし、継続にもつながります。
私自身、食事の後片づけがすごく苦手だったんですが、まず「お茶碗をシンクに下げる」ところから始めて、現在の「食後すぐに洗える自分」がいます。
まずは完璧主義を抜け出すところから。皆さんも一緒に「小さな習慣」を始めてみませんか?

ホルモン 「時間がない」モヤモヤをクールに解消!

なぜ、仕事が予定通りに終わらないのか?

なぜ、仕事が予定通りに終わらないのか?「時間ない病」の特効薬!タスクシュート時間術
佐々木正悟・大橋悦夫  技術評論社
実は私も時間通りにモノゴトを進められないタイプ。さまざまな関連本を読んできましたが、本書を読んではじめて「そもそものところを見ようとしていなかった!」ことに気づかされました。「ちゃんとやればできるはず!」と思っているあなたに、強力におすすめしたいです。

戸井私がこの本を読んでもっともショックだったのは、人は時間管理の概念の中に、着替えや食事、トイレ、お風呂といった日々生きていくために必要な時間、「現状維持に必要な時間」を全く入れずに考えている、という指摘でした。
そうした現状維持のための時間や休憩時間も含め、この本の著者は「1分以上かかるすべての行動の見積もりを出すタスクシュート式」時間活用術を提案しています。
例えばですね、「プレゼン資料」を作るのに見積もり時間は30分で、実測した結果は16分だったとします。メールチェックは見積もりが15分で、実測は9分。
この「見積もり」と「実測」をセットで記録していくうちに、何に何分かかるのかが目に見えてわかるようになっていくんです。

……おっしゃりたいこと、わかります。1分単位ってちょっと細かすぎて引いちゃいますよね(笑)。でもこうすることで、主観的にとらえがちな時間を物理的に意識するようになり、「やるまでに取りかかる時間」や「何か割り込みがあったときに、そこから元に戻すまでの時間」がどれほど多かったのかも見えてきます。

私もこのタスクシュート式を使って、ライフオーガナイザー講座を開くまでの一連の流れをマニュアル化し、「次は何をするんだっけ?」と思うことなく取りかかれるようになりました。

書店ナビこれから実践される方に、ハードルを下げるためのアドバイスをお願いします。

戸井記録の手段は、手書きよりも入力をおすすめします。有料ですがアプリがありますし、Apple Watchと連動すればさらに入力がラクになります。
そしてトライアルには、まず自分が改善したいと思うコアな時間帯から始めてみてはどうでしょうか。私の場合は、それが朝起きてから家族を送り出すまでの家事の時間でした。
その結果、今は朝トイレに行ったらそのついでにトイレ掃除もして、歯を磨きながら1日のスケジュールを確認する……という流れができ、かつてのバタバタが解消されています。

中学生の娘も、勉強時間だけタスクシュート式を取り入れています。かくいう私も自分に喝を入れたくなったタイミングで一週間くらい実践する短期集中型。
まずは解決したいところから始めてみて、少しずつタスクシュートの時間帯を増やしていくといいかもしれませんね。
「どうしてこんなに時間がないんだろう?」とモヤモヤしている日常が少しずつ変わっていきますよ。

 

オンラインの背景は戸井さん宅のダイニングとキッチンの撮影画像。インスタ・Facebookでも自宅での片づけ実践術をアップしている。

厚切りラム  王道!「人間関係」のモヤモヤ対策に

ニューロダイバーシティの教科書

ニューロダイバーシティの教科書
村中直人  金子書房
人間関係でモヤモヤすると、心理系やコミュニケーションの本を手に取りがちですが、そもそも私たちの脳は受け取る情報もその解釈の仕方も異なるのだから、人によって結果が異なるのは当然である、という視点を得ると人間関係のとらえ方に新しい光がさしこんできます。

書店ナビ著者の村中さんは、特別なニーズを持つ子どもたちや親御さんたちを支援する一般社団法人子ども・青少年育成支援協会の代表理事も務める臨床心理士さん。
ダイバーシティ(diversity)=「多様性」とはここ数年のうちに急速に定着した感がある概念ですが、そこに神経(neuro)を付ける「ニューロダイバーシティ」とははじめて聞く言葉です。

戸井もとは自閉症スぺクトラム障害や発達障害の人たちを「障害」とは異なる視点でとらえ直すための言葉ですが、この村中先生の本では「すべての人の脳や神経の在り方」というより幅広いとらえ方で解説されています。

書店ナビ障害を持たない「定型発達」のひとたちも「ニューロダイバーシティ」の中に含まれる、という考え方ですね。

戸井ええ、私もこういう片づけの仕事をしていて痛切に感じるのは、片づけに向き合う姿勢や「いる・いらない」の概念は人の数だけ異なるということ。
「○○が片づけられない」と紋切り型に考えるのではなく、それがその人のとらえ方であると受け止めることが片づけの第一歩だと実感しています。

この考え方は人間関係にも通じていて、そもそも脳の回路が皆、違うのですから、同じものを見ていても反応が異なるのは当たり前。自分とは異なる意見の人を「なんだ、アイツ!」と煙たがるのではなく、「どうしてそう考えるのか」脳の構造にまで思いを馳せてみる。
こうした考え方や理解が広まれば、世の中が変わっていくのではないか、と村中先生は呼びかけています。
私もそこに深く共感して、この本は今一番おすすめしたい一冊。深く味わってほしい意味も込めて《ラム厚切り》にしました

書店ナビコロナ禍以降、何かと二極化しがちな現代社会にこそ浸透してほしい目線ですね。

しめパフェ 最先端のスイーツは別腹でペロリ!

バレット博士の脳科学教室7 1/2章

バレット博士の脳科学教室7 1/2章
リサ・フェルドマン・バレット  紀伊國屋書店
ここまででかなりお腹いっぱいかもしれませんが、「あらかたのモヤモヤが晴れて気分爽快!新しい視点をもっと自分に取り込みたい!」という方に。これまで私たちが「人類とは」と理解してきたことを最新の脳科学の知見から覆してくれる本。

書店ナビ著者のバレット博士は、ハーバード大学の法・脳・行動研究センターでCSO(最高科学責任者)を務める研究者。心理学と神経科学の両面から情動を研究する世界的な権威です。最後にすごい《しめパフェ》が運ばれてきました(笑)。

戸井大丈夫、全部食べなくてもいいと思います(笑)。私のおすすめは、レッスン4「脳は(ほぼ)すべての行動を予測する」。
脳は「過去の経験と現在の状況に基づいて、気づかぬうちに次の一連の行動を開始する」、つまり〈予測〉する器官である、という新たな知見です。

……毎日5分間、自分の考えとは異なる観点からその問題を検討してみよう。……(中略)わたしは何も、「自分の考えを変えろ」とか「この課題はやさしい」といいたいのではない。……(中略)「わたしは彼らに同意はできないけど、彼らが何を考えてそのような行動を取るのかなら理解できる」と本心でいえるようになれば、分断のない世界に向けての第一歩を踏み出せるだろう。
……(中略)わたしがいいたいのは、「ものごとに対する責任は、本人の欠陥に由来するのではなく、それを変えられるのは自分しかいないために生じる」ということだ。

戸井こういう視点を持てるようになれば、自分の言動や行動にも責任を持てるようになり、ムダに傷つけ合うこともなくなっていく。その延長で社会がどんどん良くなっていく未来を、私も信じています。

ごちそうさまトーク もう一本のフルコースも「脳推し!」

書店ナビ実は戸井さん、事前にもう一本フルコースを考えてきてくださいました。それは「普段とは違う側面から自分を見つめ直すための本」フルコース。
そのうち2冊は「モヤモヤ改善」フルコースにも入っていましたが、その他の3冊をここでご紹介します。

ビジュアル図解 脳のしくみがわかる本
加藤俊徳監修  メイツ出版 
「脳の本を読むと当たり前のように各部位の名称が出てくるので、このビジュアル図解本があればもう安心!著者の加藤先生は片づけの本も書かれています」

私はすでに死んでいる
アニル・アナンサスワーミー  紀伊國屋書店
「〈自分は死んでいる〉と考えるコタール症候群やドッペルゲンガー体験者へのインタビューやそれらの治療・研究結果を読むと、人間へのまなざしが変わると思います」

<わたし>はどこにあるのか
マイケル・S ガザニガ  紀伊国屋書店
「2014年出版の本ですが、認知神経科学の父とも言われる著者による心理学・脳科学の最近の話題がわかりやすくまとめられています」

ライフオーガナイザーの戸井さんが、ここまで「脳」推しだとは予想外でした。

戸井大学時代に脳科学に近い心理学を専攻していたこともあって、脳の話が大好き。ここまで脳好きなオーガナイザーもそう、いないと思います(笑)。
実際、この仕事をしていると「脳の回路が違うから、こういう部屋になったんだな」と理解するのが自分にとって一番しっくりきますし、アメリカのプロフェッショナル・オーガナイザーに関する講座を受けていても、脳の話は必ず出てくる。避けて通れない話題です。

今回ご紹介した本を通して、「ニューロダイバーシティ」のように「みんな一人一人やりやすさが違うんだよ」という考え方が、もっと広まればいいなって思っています。

書店ナビ考える時間も片づける時間も持てる今こそ届けたかったライフオーガナイザー戸井さんによるボリューム満点の《焼肉》フルコース、ごちそうさまでした!

戸井由貴子(とい・ゆきこ)さん 

札幌出身。慶応義塾大学で心理学を専攻後、外資系製薬会社で精神科領域薬を担当。退職後、「ライフオーガナイズ」を学び、2014年に独立。2019年に株式会社OPT LIFEとして法人化。自宅訪問作業やオンライン講座、PTA・企業向けの講師を通してオーガナイズサービスを行う。マスターライフオーガナイザーR(協会認定講師)、ライフオーガナイズファシリテーターRインストラクター。

札幌市││暮らし整う片付け││ 株式会社OPT LIFE <オプトライフ>

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