おすすめ本を料理のフルコースに見立てて選ぶ「本のフルコース」。
選者のお好きなテーマで「前菜/スープ/魚料理/肉料理/デザート」の5冊をご紹介!

第429回 ビーバーズブックス

ビーバーズブックス

長いひさしでつながっているテナントビルのほぼ真ん中に位置するビーバーズブックス。

[新店舗紹介]
ネット通販・催事出店に続く第三の柱、
ビーバーズブックス実店舗を2019年5月にオープン!

[2019.6.10]

リクエストの声に応えて6年ぶりに実店舗を復活!

真っ白い壁に囲まれた8坪の空間は、すでに所狭しと選りすぐりの古書で埋められ、ところどころに懐かしのレコードやCDも。
「在庫はまだ別の倉庫にあるんですが、小さい店ですから場所が限られて。これから随時品物を入れ替えていろんな商品をご紹介していきたいです」
そう話してくれたのは、古書店「ビーバーズブックス」のご店主、池田一博さん。
ネット通販やチカホブックマルシェ、古本市などのイベント出店に加えて、2019年5月から実店舗オープンに乗り出した。場所は札幌市中央区南17条西8丁目の山鼻エリア。最寄り駅は地下鉄南北線の「幌平橋」駅から徒歩9分、電停「静修学園前」徒歩3分ほどのところにある。

ジャパニーズ・シティポップを推すレコードコーナー。

池田さんが大好きなジャパニーズ・シティポップを推すレコードコーナー。

ビーバーブックス店内写真1

ビーバーブックス店内写真2

時間がとまったかのような古書店のイメージはなく、ぽんと置かれた1冊1冊がいきいきとしている。

大学を卒業後、古書店のアルバイトから正社員になった池田さんは33歳のときに独立開業して早15年。一時、桑園で店を構えた時期もあったが「当時は今ほどトガッていない万民向け」の品揃えで、諸事情が重なり6年前にたたんでいる。

その後ネット通販やイベント出店の二本柱でやってきたが、お客様から「在庫をもっと見たい」「お店はないんですか?」と言われるうちに再び気持ちに火がつき、今の物件とめぐりあったという。

ファン垂涎!『ヴィジョネア』のバックナンバーもずらり

ビーバーズブックスが主に力を入れている分野は写真集やアート、カルチャー、ライフスタイルなど視覚の魅力にうったえるビジュアル本。
「自分の店に写真集を置きたいと思ったきっかけは、エルスケンのドキュメンタリー写真集『セーヌ左岸の恋』を見て。サン・ジェルマン・デ・プレに集う恋人や若者たちを写した1冊ですが、彼らの行き場のない悲哀や時代性を感じさせる傑作です」

「ものとしての本が好き」という池田さん。

「ものとしての本が好き」という池田さん。小さい頃は児童館で「もう帰りなさい」と言われるまで本を読み続けている子どもだった。

買取はオールジャンル。絵画や版画、ポスターなども取り扱う。

買取はオールジャンル。絵画や版画、ポスターなども取り扱う。

さらに奥の壁一面に並んでひときわ目を引いたのは、ニューヨーク発のビジュアル・マガジン『VISONAIRE(ヴィジョネア)』のバックナンバーの一群だ。
ファッションとアートの融合をテーマにする『VISONAIRE』は、ルイ・ヴィトンやエルメスなどのビッグメゾンやトップクリエイターとコラボした内容が話題を呼び、毎号コラボプロダクトを目当てにほぼ予約で完売することも珍しくない。
見る人が見たら買わずにはいられないバックナンバーの実物をここビーバーズブックスでは直に手に取ることができる(※注 商品はネットでも同時販売しているので在庫状況は常に変わります)。

VISONAIRE

『VISONAIRE』はスティーブン・ガンとセシリア・ディーン、ジェームズ・カリアドスの3人が1991年に立ち上げた。最新号は68号。無料DLバージョンと有料のコレクターズバージョンがある。

樹々を集めて生物多様性をつむぐビーバーのダムのように

写真集やアート系に強いと書くとお客を選ぶようだが、池田さんの姿勢は「どなたにでも気軽に入ってきていただきたい」オープンマインド。絵本や児童書もあり、コミックは昭和の名作『サザエさん』が置いてある。
「近所に高校もあるので、学校帰りとかに間違って(笑)立ち寄ってくれたらうれしいですね」

取材にうかがったこの日、店頭にはスーツ姿とカジュアルな服装の男性客が2人、棚をじっくりと読み込んでいた。
新刊書店と異なり「最新刊だから推す」という縛りから解き放たれた古書店は「何をどこに置くか」の全てが店主からお客へのメッセージになる。
厳選されたラインナップを見ていると、「本棚と暮らしを彩るアイテムを届けたい」と願う池田さんからのお便りを読んでいるような気持ちになった。

レジ横のポストカード

レジ横のポストカードもつい手が伸びてしまうセレクトが光る。

CDコーナー

少ないなかにも掘り出しモノあり。取材後、書店ナビ「中の人」たちも真剣にお買い物モードになりました。

店名の「ビーバーズブックス」は、独立開業前に商品となる本の山に囲まれてパソコン作業してる自分の姿が、集めた樹々を積み上げてダムを作るビーバーと重なったことに由来する。
「実はビーバーの作るダムというのは渡り鳥の休憩所になったり水草や水中生物に影響を与えて生物の多様性を生み出している、なんて話も聞きます。自分がこれから作る本屋も誰かの立ち寄る場になったり、誰かの日常に影響を与えたりすることができたら。そんな思いで名付けたわけです」

札幌市中央区の山鼻にできた「ビーバーの本屋さん」。現在出店中の札幌地下歩行空間の「チカホブックマルシェ」は6月11日火曜まで。7月は24日(水)から3日間。
チカホの出店を見て気になった方はぜひ、多様な美とフリーダムが楽しそうに積み重なっている本店にお運びを。

ブラジル人写真家セバスチャン・サルガドの『GENESIS』を持つ池田さん

おすすめの1冊を、とお願いするとマグナムにも所属したブラジル人写真家セバスチャン・サルガドの『GENESIS』をピックアップ。「被写体が地球。写真の力強さに圧倒されます」

ビーバーズブックス

www.bvsbooks.com

住所 北海道札幌市中央区南17条西8丁目1-32サエキビル1F
TEL 011-299-1811
定休日 水曜および一部不定休あり
営業時間 11:00~19:00(日曜18:00まで)

池田一博(いけだ・かずひろ)さん

札幌大学卒業後、古書店のアルバイトから正社員へ。2005年にビーバーズブックスで独立開業。Twitter やInstaでこまめに入荷情報を発信中。

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